コロナ禍の長期化で「痛風」「高尿酸血症」患者が約5割増加傾向に! 日本生活習慣病予防協会

日本生活習慣病予防協会は30日、昨年9月に引き続いて医師を対象として、高尿酸血症と痛風にフォーカスした「心血管疾患と生活習慣病との関連性に関する調査」の結果を公表した。
 調査結果では、コロナ禍の長期化で「痛風」「高尿酸血症」患者が約5割増加傾向にあり、約半数の医師が高尿酸血症・痛風のために新たに受診する患者の増加を実感。加えて、“高尿酸血症”を心血管疾患のリスクマーカーとして重視している実態が明らかになった。
 また、医師が感じている「尿酸値が上がりやすい人の特徴」として、メタボ(かくれメタボも)、運動不足、過食、飲酒量、ストレスが浮かび上がった。
 新型コロナウイルス感染症のパンデミック終息の見通しがまだ立たず、当面は、ステイホームをはじめとする「新しい生活様式」が続くと予想されている。
 人びとの生活様式の変化は、生活習慣病の新規発症リスクやコントロール状態を左右する。特に、運動や食習慣が病態に強い影響を及ぼす心血管疾患のリスクへの影響が大きいと考えられる。
 こうした中、「心血管疾患と生活習慣病との関連性に関する調査」は、医師専用コミュニティサイト「MedPeer」で、7月2日~5日まで実施された。
 回収サンプル数は、362 名(開業医 64名、勤務医 298名)で、勤務地分布43都道府県。年齢は、20代(5名)、30代(50名)、40代(86名)、50代(122名)、60代(85名)、70代(13名)、80代(1名)。所属は、リウマチ内科、整形外科・スポーツ医学、循環器内科、腎臓内科・透析、泌尿器科、一般内科、他。
 同調査で判明した主なポイントは、次の通り。

■約5割の医師が、高尿酸血症・痛風の新患増加を実感。昨秋よりさらに加速(15%増)
 日本生活習慣病予防協会では、昨年9月に『新型コロナウイルス感染症対策としてのステイホームやリモートワークが高尿酸血症や痛風の有病率および受診率に及ぼす影響』として、同様の手法で調査を行い、今回のQ9と同じ、「コロナ禍で、先生の所属されるクリニックや医療施設において、高尿酸血症や痛風の新規患者さんは増えていますか?」という質問を行った。
 今回の回答では、ほぼ半数にあたる49%が「増えている」を占め、そのうち10%は、「とても増えている」と回答した。昨年は、「増えている」が33%、そのうち「とても増えている」は5%であったので、高尿酸血症や痛風の新患の増加が加速していることがうかがえた。

■大半の医師が、高尿酸血症を糖尿病や高血圧、脂質異常症に続く、心血管疾患の「第4のリスクマーカー」として認識

高尿酸血症は、心血管疾患に影響する生活習慣病の第4位

 日本人の死因の第1位ががんであり、第2位は心疾患で脳血管疾患もそれに続くという状態が長年続いている。がんに関してはいまだ明確な予防戦略が確立されていないが、心血管疾患はリスクファクター(危険因子)が明らかになっており、それらを管理することでイベント(心臓発作や脳卒中)発生率を抑制可能である。


 そこで、Q2では「心血管疾患に影響があると思われる生活習慣病として、どのような生活習慣病を注視していますでしょうか?」と質問した。
 その結果、高尿酸血症は第4位であり、糖尿病や高血圧、脂質異常症に続いて、多くの医師が選択していた。臨床医の大半が、高尿酸血症を「第4のリスクマーカー」として認識していると言える。

■8割以上の医師が、心血管死・総死亡リスクと高尿酸血症との関連を実感

 また、Q5「臨床現場での実感として、心血管疾患のコントロールの中で、高尿酸血症も注視していますか?」との質問には、「とても注視している」が29%、「やや注視している」が62%であり、両者で9割以上を占めた。
 さらに、Q6「「高尿酸血症」と「心血管死亡リスク」の関連性は高いと思いますか?」では、高尿酸血症を心血管死との関連で重視するとの回答が85%(とても高いとやや高いの合計、Q6)、総死亡リスクとの関連が高いとの回答が81%(とても高いとやや高いの合計、Q7)に及んだ。

■ 8割以上の医師が、高尿酸血症(尿酸値)を糖尿病・高血圧・脂質異常症に続く、「第4のリスクマーカー」として認識

 心血管疾患と高尿酸血症の関連にかかわる一連の質問の最後に、Q8では「臨床現場にて、高尿酸血症を心血管疾患との関連を見るためのリスク・マーカー(警告因子)の一つとして、どの程度重要視していますでしょうか?」と問いかけた。
 その結果、「とても重要である」が18%、「やや重要である」が66%であり、合計で84%に達した。

医師視点での高尿酸血症とは、「痛風」だけでなく、心血管疾患のリスクが蓄積した状態

 ここまでの質問の回答から、「心血管疾患の第4のリスクマーカー」として高尿酸血症が多くの医師に認識されていることが明らかになったが、高尿酸血症は生活習慣病全体の中でも、医師が注目する疾患として第4位であることがわかった。


 具体的には、Q13「ここ最近で、特に注目度が高い生活習慣病を以下からお選びください」との質問に対し、糖尿病、高血圧症、脂質異常症に続く第4位に高尿酸血症が挙げられ、選択率も慢性腎臓病とともにほぼ同レベルだった。
 一連の結果から、患者側からは痛風との関連でのみ認識されやすい高尿酸血症だが、医師の視点からは心血管疾患のリスクが蓄積した状態、あるいは患者の生活習慣の指標として、重視されている傾向がみてとれた。

市田公美氏(日本生活習慣病予防協会役員、日本痛風・尿酸核酸学会副理事長、東京薬科大学病態生理学教室教授)のコメント
 生活習慣病の高尿酸血症の患者さんの数は1千万人を大きく超え現在でも増加している。高尿酸血症は、以前は痛風の基礎疾患としてのみ位置づけられていたが、尿路結石や腎障害などの促進因子であることも明らかになっている。さらに、現在高尿酸血症と心血管疾患の関係にも注目が集まっている。
 今回のアンケート調査により、現時点での医師の高尿酸血症と心血管疾患の関係についての認識や実情が明らかになってきた。忙しい診療の傍ら、多くの医師が最新の情報を入手し、心血管疾患を意識しつつ診療を行っていることに驚いた。

■医師300人超が実感する“尿酸値が上がりやすい人”の特徴が判明― 40~50代のメタボ(かくれメタボも)で、運動不足、過食、飲酒量が多く、ストレスも高い

●尿酸値が最も上がりやすい年齢層は40~50代男性

 ところで、尿酸値が高くなりやすい人に、何らかの共通点はあるのだろうか。同アンケートでは、医師300人超が実感する尿酸値が高い人の特徴について、調査を行った。
 まず、Q9で高尿酸血症・痛風の新患が「とても増えている」「増えている」と回答した176名に、Q10で「どのような年代の新規患者さんが増えていますでしょうか」と質問したところ、40-50代の男性が最も多く、次いで、60代以上の男性、20-30代との回答が得られた。同回答は、昨年の結果とほぼ同様であった。
 その他、尿酸値が上がりやすい患者について、いくつか質問を行ったところ、次の結果を得た。

●尿酸値が上がりやすい人の体型はメタボ(かくれメタボも)

 Q14「尿酸値が上昇しやすいと感じる患者さんの体型の特徴をすべてお選びください」との質問では、上位3位までは、肥満者に尿酸値が高いという傾向であった。なかでも上位1,2位での内臓脂肪型、肥満とまでは言えないが、お腹がポッコリ出ている(小太り)ような内臓肥満型(かくれ肥満)との回答が多数あり、その理由としては、メタボリックシンドロームとの関係を示すコメントが多く、メタボ体型では、尿酸値が上がりやすいという従来の認識が定着していることを示していた。
 その他、肥満ではない、やせ型、筋肉質やという回答には、「意外と痩せている人に高尿酸血症は潜んでいる」「やせ型でも若い男性患者での関節炎の発症が増えているから」「尿酸値が高い患者さんがジムに通っている人が多いという印象」「筋肉質でアルコールが好きな方に多い」とのコメントがあった。

●医師が感じる尿酸値が上がりやすい人の生活パターンや印象は?

 尿酸値が上昇しやすいと感じる患者さんに見られる生活パターンについて、自由記載で伺ったところ、医師の回答からは、「運動量が少ない」「飲酒の機会が多い」「食生活の乱れ(外食が多い、不規則な食事、プリン体を多く含む食事が多い)」の3つが、圧倒的に尿酸値が上昇しやすいと感じる患者さんに見られる生活パターンとして多かった。
 このような生活パターンは「人づきあいが多くなることで、外食、飲酒機会が多い」経営者、管理職、営業の人によくみられ、「運動量や飲水量が少なく、排尿を我慢する」傾向のある運送業のドライバーなども、尿酸値が上昇しやすいとの回答があった。
 運動習慣は重要で、「運動習慣が少ない人、特に高齢者では尿酸値が上がりやすい」という記述もあった。
 また、尿酸値が上昇しやすいと感じる患者さんの印象は、「健康管理を重視せず、食生活や運動に気をつかわない」、「あまり検査の数値を気にしない」、「自分のことを客観的に見れない」など自分の健康に対する関心が低い方や、「いらいらして、ストレスコントロールがしにくい」など精神的なリスクがある方が多かった。

■尿酸値対策に7割超の医師が「患者に乳製品を勧めたい」と回答

 最後に、乳製品の摂取が痛風リスクを低下させるというエビデンスがあることに関連し、Q23「手軽にできる尿酸値対策として患者さんに乳製品をお勧めしたいと思いますか?」との質問の回答をみると、「はい」が71%を占めた。
 7割超の医師が、高尿酸血症患者の乳製品摂取を肯定的に捉えていることがわかる。
 具体的に推奨したい乳製品の種類としては、「ヨーグルト」が1位であり、2位が「牛乳」であった。ヨーグルトは安全性が高く、副作用が少ないことのエビデンスがあり、高尿酸血症の増悪を抑止できる可能性がある。
 また、手軽であるため、始めやすい尿酸値対策としては、乳製品のなかでも、医師は「もっともお勧め」として挙げている。

適度な運動を取り入れ、食べ過ぎ、飲み過ぎを避け、乳製品と大豆食品をうまく食事に取り入れて、尿酸値が上がらない生活を!

今回のアンケート調査を総括して
 金子希代子氏(日本生活習慣病予防協会役員、日本痛風・尿酸核酸学会 理事長、帝京平成大学薬学部 教授)のコメント
 昨年9月のアンケート調査では高尿酸血症や痛風の患者さんが増加していると回答した方は3分の1であった。
 だが、それから9ヶ月しか経過していないのに、ほぼ半数の医師が高尿酸血症や痛風患者が増えていると回答したことに驚いた。
 新型コロナウイルス感染症の終息が見通せない中、急速に生活習慣の乱れが広がっているのではないかと感じる。
 2019年の国民生活基礎調査で、痛風(痛風関節炎)患者は2016年から3年間で15万人増加し、それまでの10万人(3年間)と比べて1.5倍になっている。その要因は定かではないが、そこに新型コロナウイルス感染症による自粛等のさまざまな制限が追加され、ストレスが増えているのではないかと懸念される。
 アンケート結果の患者さんの生活パターンや印象でも示されているように、尿酸値が高くなる原因として、肥満、飲酒量が多い、過食、運動不足、水分摂取が少ない、ストレスが多い等があり、それらは、高尿酸血症の生活改善の項目にも挙げられている。
 食品と痛風・高尿酸血症のリスクについて、19のコホート研究または横断的研究をメタ解析した報告によると、高尿酸血症のリスクを下げる食品として、乳製品と大豆食品(オッズ比0.50、0.70)が指摘されている。
 生活の中に適度な運動を取り入れ、食べ過ぎ、飲み過ぎを避け、食品では乳製品と大豆食品をうまく食事に取り入れて、尿酸値が上がらないように気をつけて頂きたい。

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