老化した線維芽細胞修復に期待
ロート製薬は25日、再生医療研究で注目の自社独自に発見した幹細胞エクソソームを介して線維芽細胞老化を抑制する成分(グリコーゲン/テトラペプチド-5)を発見し、同成分に線維芽細胞の老化に伴うコラーゲン・エラスチン合成低下を回復させる作用を見出したことを明らかにした。
同社では、「脂肪組織由来間葉系幹細胞(脂肪幹細胞)」を用いた再生医療研究を進めており、その知見を様々な製品分野に応用している。脂肪幹細胞は様々な疾患治療に応用されており、その有効性は主に脂肪幹細胞が分泌するエクソソームによることが明らかになりつつある。
ロート製薬は、エクソソームの生理機能に着目したアンチエイジング研究を推進しており、これまでに幹細胞から線維芽細胞へのエクソソームの伝達を促進する組み合わせ成分(グリコーゲンとテトラペプチド-5)を発見している。
今回、同組み合わせ成分のエイジングケア作用について詳細な検討を進めた結果、幹細胞エクソソームを介して線維芽細胞の老化を抑制し、コラーゲン・エラスチンなどの真皮成分の合成を促進することを発見した。
近年、再生医療分野において脂肪幹細胞は様々な疾患治療に応用されており、その有効性は主に脂肪幹細胞が細胞外に分泌するエクソソームが担っていることが明らかとなりつつある。
エクソソームとは、細胞から分泌されるタンパク質やRNAを内包した細胞外小胞(カプセル)であり、細胞間における情報伝達に重要な役割を担う(図1)。
これまでに、脂肪幹細胞のエクソソームに着目し、その分泌量を増加させるスキンケア素材としてグリコーゲンとテトラペプチド-5の組み合わせを発見した。
さらに、線維芽細胞は幹細胞のエクソソームを受領するものの、その量は線維芽細胞の老化に伴い減少すること、また組み合わせ成分がその回復を可能にすることも判った。
だが、幹細胞に由来するエクソソームのエイジングケアに対する具体的な作用は解明されていない。そこで同研究では、組み合わせ成分添加により得られた脂肪幹細胞由来エクソソームの線維芽細胞の老化症状に対する作用を検証した。
まず、組み合わせ成分の幹細胞由来エクソソームを介した線維芽細胞の細胞老化改善作用について検証した。細胞老化を研究する評価モデルとしては、長期継代培養によって細胞老化を誘導した老化線維芽細胞株を用いた。
組み合わせ成分添加条件で得られた幹細胞エクソソームを老化線維芽細胞株へ添加し、老化度指標としてβガラクトシダーゼ活性を評価した(図2)。
その結果、幹細胞エクソソームにより、βガラクトシダーゼ活性が49.7%に減少し、細胞老化の改善を確認(図3)。従って、組み合わせ成分は、幹細胞エクソソームを介して、線維芽細胞の細胞老化を改善することが明らかになった。
また、線維芽細胞は細胞老化することでコラーゲンやエラスチンの産生能力が低下し、老化によるしわやハリの減少と関係があると考えられている。
今回、組み合わせ成分添加により得られた幹細胞エクソソームは線維芽細胞の細胞老化を改善したことから、コラーゲン及びエラスチンのたんぱく質合成量に対するエクソソームの影響について評価した。
コラーゲン、エラスチン共に、正常な線維芽細胞と比較し、老化誘導細胞では遺伝子発現が大幅に低下していることが確認され、老化現象が再現されていることが確認された。この老化細胞に、組み合わせ成分添加により得られた幹細胞エクソソームを添加したところ、コラーゲンとエラスチンのたんぱく質合成量が有意に上昇し、老化による遺伝子発現低下が回復したことが確認された(図4)。
同研究により、組み合わせ成分によって脂肪幹細胞から分泌されたエクソソームは、線維芽細胞の細胞老化を改善し、老化によるI型コラーゲンとエラスチン産生低下を改善することが明らかとなった。
この結果は、組み合わせ成分が脂肪幹細胞に働きかけ、エクソソームを介した線維芽細胞の活性化を誘導することで、しわやたるみ、ハリといったエイジングケアに有用である可能性が示唆さした。
ロート製薬では、今後もエクソソームの機能解析およびその活用に向けた技術開発を進め、再生医療とヘルスケア技術の発展を通じ、人々のWell-beingの実現に努めていく。