ニューロダイバーシティ人材が活躍できる土壌の未整備が判明 武田薬品が調査結果

 武田薬品は30日、職場環境におけるニューロダイバーシティの現状と課題の把握に18歳から65歳の全国のオフィスワーカー2600人を対象とした調査結果を発表した。同調査は、「日本橋ニューロダイバーシティプロジェクト」の一環として実施されたもの。
 調査結果により、発達障害当事者(発達障害の診断を受けている人)またはグレーゾーン(診断はないものの、発達障害に見られる特性を持つ人)であるニューロダイバーシティ人材と、それらに該当しない周りの人たちとで、発達障害や多様性に対するさまざまな認識にギャップが存在することが判明した。
 同調査は、2023年1月26~1月30日までの期間に、発達障害の診断を受けている人100名、発達障害の診断をうけていない人2500名を対象にインターネット調査で実施された。
 発達障害の診断を受けていないオフィスワーカー2500人の中で三つの発達障害の特性に対して一つでも「よく当てはまる、または頻繁に指摘されたことがある」と回答した人は5%(125人)であった。
 また、同調査において発達障害の診断を受けた当事者の出現率は約0.8%であった。
 大人の発達障害は、ADHDに限っても約2.5%生じるとされており、診断を受けていないグレーゾーンの人がいることが推定される。
 様々な多様性・ダイバーシティに関しての認知度・理解度を尋ねる質問では、発達障害当事者、グレーゾーン、周りの人たちのすべてのグループで、ニューロダイバーシティの認知度・理解度が最も低く、特に周りの人たちは60%以上(60.5%)が知らないと回答した。
 ニューロダイバーシティは過半数が知らない状況であり、ニューロダイバーシティ人材が活躍できる土壌が整っているとは言えない状況が伺われる。
 発達障害の特性により仕事に支障があると回答した割合は、発達障害当事者、グレーゾーン、発達障害の特性・特徴のある方と仕事をしている周りの人たちの間でそれぞれ67.0%、 56.8%、 67.6%であり同程度であった。
 一方、支障が出ないようにするための対応を尋ねる質問では、ニューロダイバーシティ人材は「自分で対処しようとしている」と回答した割合が、当事者で76.1%、グレーゾーンで54.9%となり最も高かったのに対し、一緒に働く周りの人たち(N=192)では「周りの同僚や上司が特性・特徴を理解し、対応している」の回答が46.4%と最も多く、対応方法に対して異なる認識を持っていることが分かった。
 一緒に働く周りの人たちでは「特に何も対応していない」が39.6%となり、発達障害の特性に対して十分な理解がされておらず、このことからもニューロダイバーシティ人材が活躍できる土壌が整っているとは言えない状況が伺われる。
 同調査により、職場において発達障害やそれに類似する特性への対応状況がまだまだ不十分であり、ニューロダイバーシティ人材が活躍できる土壌が整っていないことが示唆された。
 日本橋ニューロダイバーシティプロジェクトでは、発達障害に見られるような特性を単なる障害ではなく、脳や神経の多様性として捉えるニューロダイバーシティを推進していくことを通じて、ニューロダイバーシティ人材以外の周りの人たちも働きやすい環境を作り出していくことを目指す。

タイトルとURLをコピーしました