「Tanamin Digital Health Challenge」の成果発表会開催 三菱ケミカルグループ

患者起点のデジタルヘルス実現

 三菱ケミカルグループは29日、患者とその家族およびパートナーのQOL向上を目的に2022年度にデジタルヘルススタートアップを募集して実施した「Tanamin Digital Health Challenge」の成果発表会を開催。
 「ALS患者とその家族のウェルビーイングを目指して」、「分散型臨床試験のデジタル化推進」、「日本における任意接種ワクチン接種の推進」の3つのテーマに沿って全世界21カ国94社の応募の中から選出されたスタートアップ4社が、4カ月に渡る取り組み成果をプレゼンテーションした。
 「TANAMIN Digital Health Challenge」は、三菱ケミカルグループとPlug and Play Japanが共同で立ち上げたコーポレートパートナーシッププログラムで、既存の視点を超えたビジネスチャンスやオプション創出を目指す。
 全世界から前述の3つのテーマを実践するための最先端技術を有するデジタルヘルススタートアップを募集し、昨年11月に開かれたキックオフミーティングで、「MEDIKTOR」(スペイン)、「COEFONT」、「GATTACO」(米国)、「MINACARE」の4社がスタートアップとして選出された。同チャレンジは、昨年開催された「The KAITEKI Challenge– Reimagining Proteins, Plastics, and Packaging」に続く、コーポレートパートナーシッププログラムの第2弾である。

あいさつする小林氏

 成果発表会では、開会のあいさつで小林義広三菱ケミカルグループファーマ戦略本部本部長が、「田辺三菱製薬では現在の中期経営計画で、‟プレシジョンメディシンとアラウンドビルソリューション”を展開している。医薬品の販売・開発だけでは届かないところをデジタル技術を活用して新たな顧客接点の確立を目指している」と紹介。
 その上で、「デジタル技術はどんどん進んでおり、薬ではない形のヘルスキャストレーションが目の前に見えている。新しい世の中を切り開いていきたい」と抱負を述べた。
 プログラムの採択スタートアップの取り組みでは、①「ALS患者とその家族のウェルビーイングを目指して」のテーマにおいて、「未病段階への患者へのアクセス」についてMEDIKTOR、「薬剤によらない患者への貢献」についてCOEFONTのデジタル技術がプレゼンテーションされた。
 MEDIKTORの技術は、「症状に気づいた一般の人により早くALSの初期症状を提示し、早期の専門医受診をサポートする」ものだ。
 同社のベラ氏はその機能について、「約14の質問を回答して、そこから次に何をすれば良いかアドバイスを貰える。このような疾患かも知れないという提案も行われる」と説明した。
 同システムには10年間のメディカルデータベースが蓄積されており、自然言語処理を用いることで自然なインタラクションを可能とする。現在、16言語をサポートしていて、さらに増やしていく計画だ。
 COEFONTのテクノロジーは、「人のオリジナル声を再現できるテキスト読み上げAI」で、薬剤では解決できなかったALSの進行によって患者の失われる声を再びコミュニケーションの場に届ける。
 ②「分散型臨床試験のデジタル化推進」のテーマでは、患者にとって負担の少ない未来の治験を目指して、自己採血の新規デジタルデバイスを有するGATTACOともに田辺三菱製薬が検体輸送時の安定性を確保する課題に挑戦する。
 同デバイスは、特に訪問診療と検査キットの新規技術の検索にフォーカスされており、患者自ら採血後5分で療機関の遠心分離機と遜色なく「細胞と血漿を分離」し、劣化することなく検体が輸送できる。
 そのため、患者にとって利便性の高い治験(病院訪問減)と従来の臨床試験への参加が困難であった地域の患者の臨床試験への参画を可能にする。
 ①「日本における任意接種ワクチン接種の推進」では、健康見守りアプリ「Health Amulet」を有するMINACAREと供に田辺三菱製薬が帯状疱疹予防ワクチンの接種意欲向上を目指す。
 ワクチンに関する情報取得手段は、「ネット」33.3%、「友人・知人」32.1%で、接種の決め手は医師からの説明より高い(山本雄士ミナケア社長)。
 こうした中、帯状疱疹についての「50歳以上になると発症頻度が上昇する」、「80歳までに3人に1人が発症する」などの的確な情報を接種した人がメッセージとして送る‟ワクチンリレープロジェクト”の展開により、帯状疱疹予防ワクチン接種者を増加していく。

金子氏

 閉会に当たって金子昌司田辺三菱製薬ファーマ戦略本部デジタルトランスフォーメーション部長が、「4つのテーマはいずれも技術的にクオリティが高い。今後もスタートアップとの協業機会を積極的に増やして、患者さん起点のデジタルヘルスを実現したい」と力説した。

マイクスナー氏

 ラリー・マイクスナー三菱ケミカルグループ執行役シニアバイスプレジデントチーフテクノロジーオフィサーも「三菱ケミカルグループとスタートアップの人たちが協力し、お互いの力を活用して患者さんの生活を大きく変えていくデジタルヘルスのシステムが作れないか期待していた」とコメント。
 その上で、「4つのプレゼンテーションは、期待以上の成果が出ていた。スタートアップの皆さんが社会に役立つために持ってきてくれた技術に感謝したい」と訴えかかけた。

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