2022年度第3四半期も成長製品・新製品が売上収益と利益成長を牽引 武田薬品

ウェバー氏

 武田薬品は2日、2022年度第3四半期の業績を公表し、クリストフ・ウェバー代表取締役社長CEOは、「パイプラインの進展と2つのターゲットを絞った取得案件により長期的成長に向けて加速している」と強調した。
 2022年度第3四半期累計は、売上収益3兆0713億円(対前年同期比13.9%増)、営業利益4019億円(同13.1%減)、当期利益2859億円(同18.4%増)、EPS(円)184(同19.6%増)となった。
 営業利益の減少の主な要因は、前年度に1314億円の日本糖尿病ポートフォリオの売却があったためである。また、営業利益率は、「競争力のある13.1%(同4.1pp減)を維持している」(ウェバー氏)。
 同四半期においては、12月にNimbus社とベストインクラスとなる可能性のあるTYK2阻害薬を取得する契約を締結、1月には高い選択性を有する経口チロシンキナーゼ阻害薬に関して独占的ライセンス権をHUTCHMED社より取得した。デング熱ワクチンQDENGAのEUでの承認取得、米国FDAの優先審査に指定された。
 第3四半期累計の財務ベース売上収益は+13.9%成長、Core売上収益は恒常為替レート(CER)ベースで+4.5%成長、財務ベースEPSは+19.6%成長し、継続した勢いを示した。
  2022年度第3四半期終了時点での純有利子負債/調整後EBITDA倍率は、年間配当金の支払い完了後も2.5倍に改善した。
 ウェバーCEOは、「返却は順調に進んでいるが、ドルやユーロに対する円安の影響により、バランスシートの円建ての借入金額自体は増加している」と報告した上で、「ただし円安は、EBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)にプラスに働くため、レバレッジに対する為替変動の影響は軽微である」と説明した。
 強固なキャッシュ・フローと負債プロファイルの改善により、引き続き株主還元に重点を置きながら成長投資が可能になった。
 2022年度第3四半期の主要な5つのビジネス領域に関する業績アップデートは、次の通り。
 2022年度第3四半期累計の主要なビジネス領域の成長は、CERベースで+20%成長し財務ベース売上収益が1兆1996億円となった成長製品・新製品が牽引した。
・消化器系疾患領域の財務ベース売上収益は8575億円(CERベース増減率:+11%)となった。エンタビオ(潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤、CERベース増減率:+17%)および中国において大きく成長したタケキャブ/VOCINTI(酸関連疾患治療剤)が牽引した。

・希少疾患領域の財務ベース売上収益は5536億円(CERベース増減率:+5%)となった。タクザイロ(遺伝性血管性浮腫治療剤)の売上は、予防薬市場の拡大、販売エリアの拡大、および投与患者数の増加継続により、CERベースで対前年同期+25%の成長となった。
 LIVTENCITY(移植後サイトメガロウイルス感染症治療剤)は、全米の移植センターの87%が少なくとも1人の患者に投与を開始しており、2021年12月の米国における上市以来、引き続き高い関心が寄せられ、投与患者数も増加している。

・血漿分画製剤(免疫疾患)領域の財務ベース売上収益は5024億円となり、CERベースで+18%と大幅に成長した。特に、米国においてパンデミックの影響が緩和している中での供給量増加により、免疫グロブリン製剤(原発性免疫不全および多巣性運動ニューロパチー治療剤)の高い売上(CERベース増減率:+19%)が牽引した。
 アルブミン製剤(主に血液量減少症および低アルブミン血症治療剤として使用)の力強い成長(CERベース増減率:+20%)は、米国および中国での強い需要に牽引された。2022年度第3四半期は、計画通り米国に血漿収集拠点を5センター新規開設した。
 今年度累計では21センターの新規開設となり、グローバルの血漿収集拠点は225センターとなった。

・オンコロジー領域の財務ベース売上収益は2022年5月から米国で複数のベルケイド(多発性骨髄腫治療剤)後発品が参入し始めてきた結果、CERベースで13%減少し、3450億円となった。ベルケイドを除いた売上収益は3202億円(CERベース増減率:+7%)となった。欧州、成長新興国市場および中国におけるアルンブリグ(非小細胞肺がん治療剤、CERベース増減率:+39%)に対する需要の増加によって牽引された。
 アドセトリス(悪性リンパ腫治療剤)がフロントライン治療での使用拡大によって牽引され、CERベースで+18%成長した。アイクルシグ(白血病治療剤)は、OPTIC試験で示された良好な結果および添付文書の改訂内容に関する認識の向上が寄与してCERベース+13%成長した。
 2021年9月に米国で初めて上市され、その後他の複数の国で上市されたEXKIVITY(非小細胞肺がん治療剤)も売上収益に貢献した。

・ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域の財務ベース売上収益は、VYVANSE/ELVANSE(国内製品名:「ビバンセ」)の米国、欧州およびカナダにおける成人ADHD市場の拡大が牽引し、4771億円(CERベース増減率:+10%)となった。
 トリンテリックスの売上収益は、米国における大うつ病(MDD)市場回復継続に加え、日本における力強い市場シェアの獲得により、797億円(CERベース増減率:+5%)となった。

 一方、2022年度上期業績公表以降から現在までの主なアップデートは、次の通り。

・全世界(中国本土、香港およびマカオを除く)を対象としたフルキンチニブのさらなる開発および商業化に関する独占的ライセンス契約をHUTCHMED社と締結した。フルキンチニブは、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1/2/3に高い選択性を有する阻害薬である。経口投与され、バイオマーカーの状態にかかわらず、治療抵抗性・転移性の大腸がん(CRC)患者の新たな治療選択肢となる可能性がある。

・Nimbus Therapeutics社より、複数の免疫介在性疾患の治療薬候補として評価が行われている経口の選択的アロステリックTYK2阻害薬のNDI-034858を取得する。NDI-034858は、乾癬を対象としたP3試験が今年開始する予定で、乾癬ならびに乾癬性関節炎、炎症性腸疾患および全身性エリテマトーデスを含む他の免疫介在性疾患においてベストインクラスの有効性および安全性ならびに簡便性を示す可能性を有している。
 今回の取得は、免疫介在性疾患領域における同社の疾患領域戦略および専門性に沿って、拡大する当社の後期開発パイプラインを強化するもの。武田薬品は、Nimbus Therapeutics社に対し、一時金40億米ドルを支払うとともに、NDI-034858プログラムから開発された製品の年間の売上高が40億米ドルと50億米ドルになった場合には、それぞれにつき10億米ドルのマイルストンを支払う。一時金は主に手元資金を充当する予定である。同取引は、2022年度末までに完了する見込み。

・デング熱ワクチンQDENGAが2022年12月に欧州委員会(EC)により4歳以上を接種対象者として承認された。ECの承認により、QDENGAは、過去のデング熱感染歴の有無にかかわらず接種可能な、EUで承認された唯一のデング熱ワクチンとなる。
 また、昨年11月に、米国FDAにより生物学的製剤承認申請の優先審査に指定された。

◆コスタ・サルウコス武田薬品チーフ フィナンシャル オフィサーのコメント
 第3四半期の業績は、成長製品・新製品および堅実な戦略の実行が再び力強い売上収益とCoreベースの利益成長を牽引し、継続して成長の勢いを示している。当社は、欧州および中国において承認を取得するなど、既存のパイプラインを引き続き前進させている。昨年12月にはベストインクラスとなる可能性のあるTYK2阻害薬を後期開発パイプラインに追加するという重要な取得案件について公表し、当社の長期成長戦略を強化した。
 また、強固なキャッシュ・フローと堅牢な財務体質により、成長への投資を進めながらレバレッジの低下も進めることができた。

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