PCR検査の効率的実施と医療体制充実のバランスが重要  関西大学矢田勝俊教授

 関西大学商学部の矢田勝俊教授が代表を務める危機管理分析タスクフォースは20日、新型コロナウイルス感染防止策として、PCR検査を無条件に増やすのではなく、「検査の効率的実施」と「確実な感染者の隔離を実現する医療体制の充実」のバランスが重要であると指摘した。消費者行動モデルを応用し、国内の状況に合わせた新型コロナ感染状況のモデル化を行いその分析結果を公表したもの。
 その結果、「PCR検査の拡充は発生初期に効果を発揮するが、その後の確実な隔離こそが重要」であると判明。PCR検査の効率的な実施と感染者の確実な隔離、医療体制の充実のバランスが重要となることが示された。
 多くのメディアや論者には、未だにPCR検査の拡大が新型コロナウイルスの蔓延を防ぐ特効薬のように主張するものが見られる。こうした中、矢田氏らは、「これらの主張はPCR検査をしただけで感染者は治癒しないし、未感染者への感染も防げないという事実を軽視している」と指摘する。さらに、「感染拡大を食い止めるには、PCR検査を増やすだけでなく、感染者の効果的な隔離こそが重要である」と強調する。
 中国、欧米で用いられている伝染病の伝播を表す従来の感染モデルは、感染者はすべて隔離される前提でその重篤患者になる度合い、または死亡する危険性を推し量ろうとするものである。だが、国内状況を鑑みると、PCR検査を無制限に行い、結果的に膨れ上がる感染者をすべて隔離することは困難と言わざるを得ない。
 そこで同研究チームは、感染者が隔離される状況をモデルの中に明示的に組み込むことで、隔離される感染者の人数の増減、それに伴う医療体制への負荷状況について、貴重な示唆を導出することに成功した。
 このモデルに依拠すれば、隔離の拡大・縮小が疫病の流行にどう影響するかの予測が可能となる。複数のシナリオによるシミュレーションの結果、感染者を隔離する割合、つまり隔離率をあげることが感染拡大を抑制する重要な要因であることが判明した。無条件のPCR検査の拡大は医療体制の負荷を急増させ、結果的に死亡率の上昇を招く可能性もある。
 新型コロナウイルスの感染拡大は未知の疫病であるため、刺激的な意見やコメントに人々の不安が煽られ、正常な判断を奪いかねない。矢田氏は、「データや理論モデルに基づき、科学的なアプローチでこの伝染病に立ち向かうことが必要である」と訴求する。
 今後、同研究チームでは、感染第2波に向けた政策提言をまとめる予定だ。

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