2型糖尿病治療薬のカナグリフロジンは、腎臓の糸球体から尿中排泄されたグルコースを再吸収する近位尿細管にあるSGLT2を阻害し、過剰な糖を尿に排泄して血糖およびHbA1c低下作用を発揮する。
血糖降下作用以外にも、体重減少、HDLコレステロール増加、トリグリセリド減少、インスリン抵抗性改善などの薬理作用が確認されている。
世界初の経口投与剤として創生されたカナグリフロジンは、米国でファーストインクラスで承認されたのを皮切りに、日本、欧州、オーストラリアなど世界70カ国以上で発売され、世界で多くの患者に処方されている。
こうした中、本年4月、オーストラリアで開催された“国際腎臓学会”で、糖尿病性腎症に対する国際共同治験 CREDENCE試験の結果が発表された。
さらに、米国では、ヤンセンが、本年3月、FDAにカナグリフロジン(インヴォカナ)の糖尿病性腎症の効能追加を申請し、9月に承認されている。
「国際腎臓学会」の最新の臨床試験のセッションで発表されたCREDENCE試験結果は、「血清クレアチン値の倍化、末期腎不全への移行、腎臓死または心血管死の複合エンドポイントにおいて、カナグリフロジン投与群は30%リスク低減した」というもの。
SGLT2阻害剤の糖尿病性腎症に対する腎ハードエンドポイントを達成したエビデンスは世界初で、しかも30%もリスク低減する画期的な結果に、学会場内から大きな注目を集めた。
また、11月初めの米国腎臓学会では、 クレデンス試験のサブ解析結果が発表された。全症例中4%を占めるベースライン時eGFR値30以下の集団において、「カナグリフロジン投与群はプラセボ群に比べて投与3週後から最終評価時までの間、eGFR値の低下速度を43%有意に抑制する」効果が示された。
通常、eGFR値が10未満になる頃に重症化して透析に入るが、スーパーバイザーの医師は、「eGFR値30以下の重症患者を対象としたeGFR値が、カナグリフロジン投与群は、ほぼ横ばいか若干低下傾向にある」と解説。
さらに、「まだ、182週のデータしか出ていないが、透析に入る期間をどのくらい引き延ばせるかについての期待が大きい」とコメントしている。
カナグリフロジンの糖尿病性腎症についての効能追加は、米国では「9月に承認を取得」、欧州では「本年7月に申請済み」、国内は「P3試験の実施段階」にある。
国内でカナグリフロジンは、2014年9月、カナグルの販売名で上市されたが、カナグルの糖尿病性腎症についての承認はまだ取れていない。
CREDENCE試験には、日本人患者のデータも含まれているものの、現在、国内で糖尿病性腎症の承認申請を目的にP3試験を実施しており、2023年度には糖尿病性腎症の効能追加を取得する予定にある。