マンジャロの ‟HbA1c7%未満”達成に向けた役割に期待 門脇孝氏(虎の門病院院長)

門脇氏

 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は8日、東京都内で「世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬マンジャロ~2 型糖尿病治療におけるアンメットニーズと展望~」をテーマにメディアラウンドテーブルを開催した。
 その中で、「糖尿病のない人と変わらない寿命とQOL達成のために」について講演した門脇孝氏(虎の門病院院長)は、「様々な糖尿病治療薬が使用されているにも関わらず、合併症予防の目標値である‟HbA1c7%未満”未達成の2型糖尿病のある人は半数に上る」と紹介。
 その上で、「血糖降下作用が強く、低血糖の発現割合が低く、体重減少にも優越性を示すマンジャロは、こうした状況の解消に大きな役割を示すだろう」と期待を寄せた。
 さらに、門脇氏は、糖尿病になれば「会社での昇進に差し支える」、「性格がだらしがない」「自己管理ができない」などの誤った知識や情報の拡散により、患者が精神的、物理的に困難な状況に陥る”スティグマ”にも言及。「糖尿病のある人が人生100年時代をいきいきと過ごすためには糖尿病の正しい理解を通じてスティグマのない世界の実現が不可欠である」と強調し、「糖尿病治療目標である糖尿病のない人と変わらない寿命とQOLを達成するために、マンジャロへの期待が高まっている」と訴えかけた。

今岡氏

 メディアランドテーブルでは、始めに、今岡丈士氏(日本イーライリリー研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部、医師 医学博士)が、マンジャロの特徴や、国内P3試験(SURPASS J-mono)結果、用法・用量について説明した。
 GIPとGLP-1は、食餌摂取に反応して消化管から放出されるインクレチンホルモンで、2型糖尿病のない人において、GIPはインクレチン効果の2/3を担い、インスリン分泌に対する影響はGLP-1よりも大きい。2型糖尿病のない人のインスリン分泌に与える影響は、GIP67%、GLP-133%で、2型糖尿病のある人では、総インクレチン効果が低下する。
 GIPとGLP-1の役割については、GIPは、「エネルギー代謝の制御」、「制吐作用」、「インスリン分泌の増加」、「グルカゴン分泌の増加(健康成人)」を担う。
 一方、GLP-1は、「食事摂取量の減少」、「食嗜好の変化」、「インスリン分泌の増加」、「グルカゴン分泌の減少」、「胃内容排出の遅延」作用を示す。
 マンジャロは、週1回投与の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬(注射剤)で、マンジャロの構造は、天然GIPペプチド配列をベースとした単一分子であるが、GLP-1受容体にも結合するように改変されている。
 GIP受容体及びGLP-1受容体のアゴニストであるマンジャロは、両受容体に結合して活性化することで、グルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進させる。平均半減期 約5~6日で、週1回の投与が可能である。
 マンジャロの日本での承認申請で用いられた国内P3試験(SURPASS J-mono)は、食事療法及び運動療法のみ、又はチアゾリジン薬を除く経口血糖降下薬の単独療法で血糖管理が不十分な日本人2型糖尿病患者636例を対象とする。
 HbA1cのベースラインから投与52週時までの平均変化量を指標として、マンジャロ5 mg/10 mg/15 mgを週1回投与したときのデュラグルチド0.75mg投与に対する優越性を検討したもの。
 その結果、主要評価項目であるHbA1cのベースラインから投与52週時までの変化量(検証的項目)は、マンジャロ5mg群-2.4%、同10mg群-2.6%、同15mg群-2.8%、対照群-1.3%となり、全てのマンジャロ群は対照群に比べて統計学的に有意にHbA1c値の低下を示した。
 副次評価項目の体重のベースラインから投与52週時までの変化量は、マンジャロ5mg群-5.8kg、同10mg群-8.5kg、同15mg群-10.7kg、対照群-0.5kgであった。
 有害事象は、悪心、便秘、食欲減退、下痢、嘔吐、腹部不快感など「消化器系にみられ」、殆どの有害事象は「軽度から中等度で、用量が高いほど発現割合が増加する傾向があった」。
 低血糖は、血糖値70 mg/dL以下となったのは、マンジャロ 0.75 mg群(n=159)1件、同5㎎群(n=159)0件、 10mg群(n=158)3件、15mg群(n=160)8件であった。
 さらに、血糖値54mg/dL未満となったのは15mg群に2件だけで、「重症低血糖はどの群にも認められなかった」。
 マンジャロの開始用量は2.5mgで、4週間継続後に維持用量である5㎎に増量する。患者の状態に応じて適宜増減が可能で、週1回5mgで効果が不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量でき、最高用量は15㎎である。
 マンジャロには、本年4月18日に発売された開始用量(2.5 mg)と維持用量(5mg)に加えて、6月12日に発売された7.5 mg、10 mg、12.5 mg、15 mg高用量規格があり、フルラインナップが出揃った。
 一方、門脇氏は、わが国の糖尿病患者数について、「2019年に1150名と報告されており、その3年前に比べて増加している」と述べ、増加要因として、「食事の欧米化」と「インスリン分泌低下の遺伝因子」を挙げた。日本人・東アジア人は、インスリン分泌低下の体質のため欧米人に比べて小太りで2型糖尿病を発症する。
 1000万以上のスニップを検討した最大の2型糖尿病GWAS(ゲノムワイド相関解析)における日本人と欧米人の比較では、共通領域は8領域だけで20領域が日本人特有の糖尿病遺伝子と判明し、初めて日本人に特徴的な遺伝子が解明された。
 20領域の中には、β細胞の遺伝子発現調節や、インスリン分泌成分に関わるものが多く含まれ、日本人の2型糖尿病の病態に合致していた。
 さらに、GWASでは、日本人にのみGLP-1レセプター領域のスニップと糖尿病との有意な関連が認められた。特に、137番目のアージニンをグルタミンに変えるrs3765467(R131Q)は、GLP-1に対してインスリンの分泌を増強するスニップであると判明した。
 R131Qは、欧米人では1000人に2人しか認められず、日本人では3人に1人がヘテロに有していることが、「日本人は欧米人に比してインクレチン関連薬がより効果的」であるメカニズムの素因になっていると考えられる。
 門脇氏は、「GWASを元にしたPolygenic Risk Score(PRS)により、多因子疾患のリスクを単一遺伝性疾患と同様の正確度で予測することが出来るようになってきた」と紹介。その上で、「今後、PRSは、糖尿病の発症リスクを計算して、リスクの高い人はそれに応じた予防(生活習慣改善など)に活用されていくだろう」との見解を示した。
 合併症予防のための目標値の達成率についても、「新しい血糖降下薬による治療が行われているにもかかわらず、‟目標HbA1c値7%未満”を達成できていない2型糖尿病のある人が半数以上いる」と報告し、「マンジャロは、その解消に大きな役割を果たす位置づけにある」と強調した。
 加えて、「2型糖尿病発症早期にHbA1c高値の患者ほど10年後の合併症リスクが上昇する。従って、より早期での血糖目標達成が将来の合併症リスクの低下をもたらす」と呼びかけた。
 マンジャロの使用法では、「まずは、これまでの治療で血糖管理が不十分な患者に使用されるだろう」と述べた上で、「実臨床の中でマンジャロの血糖降下の強さや安全性の高さが受け入れられるようになれば、もっと早い段階で使われる。特に、肥満のある患者には、第一選択薬となるケースも出てくる」と予測した。
 SGLT-2との違いについても、「SGLT-2は、血糖降下作用に加えて心不全、腎障害の進展抑制効果がある。目標HbA1cの達成率向上には血糖降下作用の強いマンジャロに有用性があり、心保護、腎保護を必要とする患者はSGLT-2を投与する。時には、両剤を併用するケースもあるだろう」との見解を示した。
 

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