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「スタレボ配合錠L50,L100」(抗パーキンソン剤) のエッセンス

効能又は効果;パーキンソン病〔レボドパ・カルビドパ投与において症状の日内変動(wearing-off現象)が認められる場合〕

*製品の詳細は、添付文書・インタビューフォームを確認してください

パーキンソン病は、

・脳内のドパミンが欠乏して運動症状(運動緩慢,静止時振戦,筋強剛,無動,歩行障害など)を生じる。

・多彩な自律神経症状、うつ症状、睡眠障害に伴うさまざまな症状、認知症などを高頻度に合併する。

・パーキンソン病では、消化管の蠕動運動が悪くなっている。

・加齢も発症に寄与しているため、今後さらに患者数が増えると考えられている。

スタレボ配合錠(レボドパ,カルビドパ,エンタカポン)

『レボドパ(L-ドーパ)』

・アミノ酸構造を有するドパミンの前駆体。体内でドパミンに転換されるプロドラッグ。

・アミノ酸輸送系により、消化管から吸収され、さらに血液脳関門(BBB)を通過する(ドパミンはBBBを通過しない)。

・消化管吸収後、末梢で“ドパ脱炭酸酵素”および“カテコール-O-メチル転移酵素”によって大部分が代謝される。

・ドパ脱炭酸酵素阻害剤(DCI)との同時投与が標準的方法。

・長期投与時にwearing-off現象が発生した場合の標準的治療法は、カテコール-O-メチル転移酵素阻害剤(COMT阻害剤)の同時投与。

・モノアミン酸化酵素B阻害剤(MAO-B阻害剤)は、脳内でのドパミン代謝を阻害する。

・薬が効かないと、突進歩行などのパーキンソン病症状発生

・薬が効きすぎるとジスキネジア(舞踏運動などの不随意運動)出現

『カルビドパ』

・末梢性のドパ脱炭酸酵素阻害剤(DCI)。末梢におけるレボドパからドパミンへの代謝(レボドパ代謝の主経路)を抑制する。

・BBBを通過しない。

・ドパミンの必要量が75~80%削減でき、消化器系副作用が激減。

『エンタカポン』

・COMT阻害剤。カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)を選択的に阻害し、末梢でのドパミン代謝を抑制する。

・BBBはほとんど通過しない。初回通過効果を受ける。

・DCIがドパ脱炭酸酵素を阻害することにより、副経路のCOMT系が活性化してレボドパ代謝が更新し、wearing-off現象が発生する。

【特にチェックすべき患者情報と対応】

ジスキネジア症状(ジスキネジア;ドパミン作動性の副作用。自分の意志に関係なく身体が動いてしまう。長期間のレボドパ療法で発生)

⇒服薬コンプライアンスを確認。薬剤の飲み間違いによって服用量が多くなっていないか

⇒肝機能障害(胆汁うっ滞性肝炎など)を確認(エンタカポンの血中濃度が上昇する可能性)

⇒低体重の確認(体重40kg未満の低体重の患者では、エンタカポンを1回200mg投与した場合、ジスキネジアの発現が増加することがある)

⇒併用薬の影響をチェック(NMDA受容体拮抗剤;メマンチンなど 脳内のドパミン遊離促進の可能性、イストラデフィリン;ノウリアスト エンタカポンとの併用時注意)

・食事の影響(いつもより軽い食事)

⇒1回用量の調節、投与間隔・投与回数の変更 を検討

wearing-off現象(次回服用前にレボドパの効果が消失)

⇒服薬コンプライアンスを確認(薬剤の飲み間違いや服用困難によって服用量が少なくなっていないか)

⇒併用薬の影響(フェノチアジン系抗精神病薬;クロルプロマジンなど、ブチロフェノン系抗精神病薬;ハロペリドールなど、テトラベナジン;コレアジン、レセルピン製剤、イソニアジド、パパベリン)

⇒食事の影響(小腸とBBBのアミノ酸輸送系の競合・・・高蛋白質食の摂取、食事から服薬までの間隔が短い、あるいは過食など。パーキンソン患者は消化管の蠕動運動が低下していることにも注意)

悪性症候群(高熱,意識障害,筋硬直,ミオクローヌス,振戦,不随意運動,精神状態変化,ショック状態,自律神経機能異常(頻脈,不安定血圧)など)

⇒パーキンソン病治療薬の急激な減量・中止がトリガーとなる。横紋筋融解症または急性腎不全に至るおそれあり。レボドパ、エンタカポンの増量を検討

横紋筋融解症(筋肉痛,脱力感,CK上昇,血中及び尿中ミオグロビン上昇)

⇒重度のジスキネジアまたは悪性症候群に続発する。急性腎不全の発症に注意

突発的睡眠、傾眠

⇒自動車運転など危険を伴う作業の禁止。本剤の減量,休薬,投与中止を検討

幻覚・幻視・幻聴・錯乱・抑うつ

⇒直前に追加した薬物を減量または中止。中枢性抗コリン効果を示す薬(トリヘキシフェニジル,三環系抗うつ薬、頻尿治療薬,抗ヒスタミン薬,Hブロッカー)の中止を検討

衝動制御障害(病的賭博,病的性欲亢進,強迫性購買,暴食)・重篤な反社会的行動

眼圧上昇(目のかすみ、目の奥の痛み,頭痛,吐き気,眼精疲労)

⇒眼圧検査(注;本剤は、閉塞隅角緑内障・・・禁忌、慢性開放隅角緑内障・・・慎重投与)

溶血性貧血・血小板減少

⇒本剤の減量,休薬を検討

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の悪化

⇒本剤の減量,休薬を検討

【今患者に起きている状態をサイエンスするための情報】

・パーキンソン病患者では、3~8割に嚥下障害があり、重症になるほど嚥下障害の頻度は増加する。

・パーキンソン病では、消化管の蠕動運動が悪くなっている。

・酸性飲料(コーラ、ビタミンC飲料など)でレボドパを服用すると溶解度が増大し、血中濃度が増大する。

・レボドパの消化管吸収では、飲食物中のアミノ酸と競合する。高蛋白食の摂取によりレボドパの作用が減弱する。(ただし、蛋白質の摂取制限はサルコペニアに対する配慮が必要)

反対に、いつもよりアミノ酸(蛋白質)の摂取が極端に少なければ、レボドパの作用が増強し、ジスキネジアが強くなる可能性あり。

・ポリフェノール酸化酵素であるチロシナーゼを多く含む食物(マッシュルームなど)は、レボドパを酸化(失活)する可能性がある。ビタミンCは、この反応を阻害する。

・バナナに含有されるポリフェノール酸化酵素が、レボドパのバイオアベイラビリティを低下させる。

・ビタミンBはレボドパの代謝を促進する。

・レボドパは塩基性で不安定なので、塩基性物質(酸化マグネシウムなど)との相互作用に注意。

・着色尿は5%以上に発生。レボドパの代謝産物(メラニン重合体)の排泄によるもので、赤褐色や黒色等になることがある。

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