ハンマロビクス運動による体幹筋や足部の内・外在筋の筋活動向上を解明 東京医科歯科大学スポーツサイエンス機構

軽量負荷ハンマロビクス運動による腰痛予防・健康増進効果に期待

 東京医科歯科大学スポーツサイエンス機構の室伏広治特命教授、柳下和慶教授、早稲田大学スポーツ科学学術院の金岡恒治教授らの研究グループは7日、ハンマロビクス運動(Hammerobics exercise)中の筋活動を計測し、同運動が足部及び体幹筋群の活動を高めることを解明したと発表した。
 室伏氏が考案したハンマロビクス運動は、等尺性スクワットに比べて、下肢・体幹筋群の活動を亢進。特に、腰痛予防に重要な多裂筋の活動や足部のアーチ形に関与する足部内在筋・外在筋の活動を向上させることが判った。
 今回のハンマロビクス運動では、バーベルや鉄球を用いていることから適応対象者は限られている。
 今後は、より軽量な負荷(ペットボトルなど)で代用した場合の下肢体幹筋群の活動分析により、中高齢者の健康増進や怪我を有している人のリハビリテーションへの応用が期待される。
 この研究成果は、Scientific Reportsに2022年8月4日に掲載された。
 室伏氏は、ハンマー投げ選手時代に、安定した状態で単純なバーベルを使ったスクワット運動だけでは、トレーニング効果を十分に得ることができないと考え、パラメータ励振理論と不安定要素を取り入れたハンマロビクス運動を開発した。
 これまで、トレーニングに不安定要素を取り入れるためウォーターバッグやサンドバッグ等を使用した運動方法が、体幹筋を中心とした筋群の活動を高めることが報告されてきた。
 足部の筋群に関しては、Short foot exerciseやタオルギャザリングのような足趾や足を積極的に動かすトレーニングにより足のアーチを支える筋が活動することが報告されている。
 一方でハンマロビクス運動中の筋活動に関しては、まだ研究がなされていなかった。そこで、今回、ハンマロビクス運動中の足部及び体幹筋群の活動の解明を推進した。
 研究グループは、12名の健常男性を対象に表面筋電図を用いて運動課題中の筋活動量を分析した。運動課題は、通常の姿勢を保持した等尺性スクワット(図1c)と、ループ状にしたワイヤーを介してバーベルに取り付けた両端のハンマーを同じタイミングで前後方向に揺らすハンマロビクス運動(図1b)とした。
 各運動課題中の姿勢はゴニオメータにより、試技ごとに膝関節が90度で一定となる様に規定した。ハンマロビクスを行う器具のセットアップは(図1a)とした。各運動課題中の下肢・体幹筋群(母趾外転筋、前脛骨筋、後脛骨筋、長腓骨筋、大腿直筋、大腿二頭筋、半腱様筋、大殿筋、多裂筋、内腹斜筋)の筋電位データから筋活動量を算出し、運動課題間の比較を行った。
 その結果、等尺性スクワット運動に比べてハンマロビクス運動では、下肢筋群において母趾外転筋、前脛骨筋、後脛骨筋、長腓骨筋、半腱様筋の活動が、体幹筋群において多裂筋の活動が有意に高まることがわかった。

図1 a)重りのセットアップ,b)ハンマロビクス,c)等尺性スクワット


 ハンマロビクス運動では、前後の振り子運動を加えることで、足趾や足関節を意識的に動かさなくても足部内在筋、外在筋含め、足部の筋群が働いていたことは新しい発見であり、関節を動かすことに制限のある人にも応用ができると考えられる。
 腰痛発症予防には多裂筋の活動を向上させる重要性が報告されており、ハンマロビクス運動によりこの多裂筋の活動を高めることが判明した。
 これらの結果から、ハンマロビクス運動は、腰痛発症予防のためのプログラムとして活用できる可能性がある。今回のハンマロビクス運動では、バーベルや鉄球を用いているため適応対象者が限定されるが、今後はより軽量な負荷で代用した場合の下肢体幹筋群の活動分析を推進。中高齢者の健康増進や怪我を有している人のリハビリテーションへの応用の可能性を実証していく。

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