過敏性腸症候群の有病率 日韓よりも中国が低い 早稲田大学等の比較研究で判明

過敏性腸症候群サブタイプは「交替型」が3カ国で高割合

過敏性腸症候群は、脳・腸・腸内細菌が相関

 早稲田大学人間科学学術院の田山淳教授と、九州大学大学院人間環境学研究院の木村拓也教授、長崎大学保健センターの武岡敦之氏らの研究グループは、東アジアの3カ国(日本、中国、韓国)における過敏性腸症候群の有病率を調べた比較研究を実施した。
 その結果、全体13%、日本15%、中国6%、韓国16%となり、全体有病率は世界的な有病率よりもわずかに高く、日本や韓国よりも中国の有病率が低いとことが判明した。
 また、過敏性腸症候群サブタイプは、下痢と便秘を繰り返す「交替型」がいずれの国でも割合が高かった。これらの研究成果は、日常的な過敏性腸症候群診療などの活用が期待される。
 なお、研究結果は、Korean Society of Neurogastroenterology and Motilityが発行する『Journal of Neurogastroenterology and Motility』で、4月30日に掲載された。
過敏性腸症候群は、脳・腸・腸内細菌が相関し、ストレス・病気・行動・食事等の要因に加え、遺伝子変異・感染・腸内フローラ・免疫活性化等の生物学的要因が影響を与えている。
 アジアは、多環境、多民族、多文化であるため、単一の存在として評価することはできない。従って、アジア内で類似した特徴を持つ別々の小地域での過敏性腸症候群の調査が必要と考えられた。そのため、同研究では、東アジア3カ国(日本、韓国、中国)の都市を対象に、性・年齢について割当法を用いたサンプリングにより調整した上で過敏性腸症候群の有病率をインターネットで調査し、3カ国間の過敏性腸症候群の特徴を比較した。
 その結果、過敏性腸症候群の有病率が、全体13%、日本15%、中国6%、韓国16%であった。さらに、全体有病率は世界的な有病率よりもわずかに高く、日本や韓国よりも、中国の有病率が低いことも判った。
 また、過敏性腸症候群サブタイプの交替型がいずれの国でも割合が高く、2番目に多いサブタイプは、日本では下痢型、中国では便秘型、韓国では分類不能型(下痢型、便秘型、交替型のどれにも属さない型)であった。
 性差については、過敏性腸症候群の有病率と過敏性腸症候群-下痢型の有病率は、先行研究とは異なり、「男性」で高いことが示された。加えて、年齢に関しても、先行研究と異なり過敏性腸症候群の有病率は「40歳代」が最も高かった。
 東アジアという文化圏において、多様な食文化及び行動様式の差異が有病率の差異を生じさせている可能性がある。東アジアの過敏性腸症候群有病率が、世界の他のエリアでこれまで多く示されてきた「若年・女性」で高いというエビデンスとは異なり、「壮年・男性」で有病率が高いという結果になっている点は注目に値する。
 このエビデンスは、今後の疫学研究の対象選定等に影響を及ぼす可能性や、日常的な過敏性腸症候群診療などの参考になると考察される。

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