リムパーザ 高リスク早期乳がんの術後薬物療法でCHMPより承認勧告取得 アストラゼネカ

 アストラゼネカは5日、リムパーザについて、高リスク早期乳がんに対する術後薬物療法として、単剤療法または内分泌療法との併用療法で、欧州医薬品評価委員会(CHMP)より承認勧告を取得したと発表した。
 対象は、術前または術後のいずれかに化学療法を受けた生殖細胞系列の BRCA 遺伝子変異陽性(gBRCAm)かつヒト上皮成長因子受容体 2(HER2)陰性の高リスク早期乳がん成人患者。
 欧州医薬品庁のCHMPは、2021年6月にThe New England Journal of Medicine 誌に掲載されたP3相OlympiA 試験の結果に基づき、肯定的な見解を示した。同試験において、リムパーザは、プラセボと比較して無浸潤疾患生存期間(iDFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示した。
 具体的には、浸潤性乳がんの再発、二次がん、または死亡リスクを 42%低下させた(ハザード比[HR]0.58;99.5%信頼区間[CI]0.41-0.82; p 値<0.0001)。
 また、プラセボと比較して全生存期間(OS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示し、死亡リスクを32%低下させた(ハザード比[HR]0.68; 98.5% 信頼区間[CI]0.47-0.97; p 値=0.009)。
 同試験におけるリムパーザの安全性および忍容性プロファイルは、過去の臨床試験のプロファイルと一貫していた。
 乳がんは、世界中で最も多く診断されているがんで、2020年に診断された患者は推定230万人に上る。全乳がん患者の約 90%が早期乳がんと診断される。また、欧州では、最大 10%の患者に BRCA 遺伝子変異が認められる。
 2022年3月、リムパーザは、BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者に対する術後薬物療法に用いる薬剤として、米国で承認された。
 また、P3相OlympiAD試験の結果に基づき、化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳がん患者に対する治療薬として、米国、EU、日本およびその他数多くの国々で承認されている。
 さらに、EUでは、局所進行乳がんも適応に含まれる。
 なお、BRCA遺伝子変異陽性乳がんにおける術後薬物療法に対するリムパーザの適応は、本邦では未承認である。

◆OlympiA 試験運営委員会委員長で、Oncology at The Institute of Cancer Research, London and Kings College London教授のAndrew Tutt 氏のコメント
 高リスク早期乳がん患者さんにとって、再発リスクは依然として非常に高く、患者さんの4人に1人以上の割合で再発する可能性がある。
 今日の勧告は、リムパーザによる治療が適格である患者さんの全生存期間を延長する新たな標準治療薬候補が出てきたことを示し、欧州の患者さんにとって希望となるニュースである。

◆Susan Galbraithアストラゼネカオンコロジー研究開発エグゼクティブバイスプレジデントのコメント
 今回承認勧告を取得した術後薬物療法が承認されれば、欧州でBRCA遺伝子変異陽性を有するHER2陰性の早期乳がん患者さんにとって、リムパーザは新たな分子標的治療薬の選択肢となるだろう。
 治癒を目的とした患者さんにできるだけ早期に治療を行うことで、命にかかわる再発を避け、患者さんが大切な人たちとより多くの時間を過ごせるようになってほしいと考えている。

◆Eliav Barr MSD研究開発本部のグローバルクリニカルディベロップメント責任者兼チーフメディカルオフィサーのコメント
 生殖細胞系列のBRCA 遺伝子変異のない患者さんに比べて、BRCA遺伝子変異を有するHER2陰性の早期乳がん患者さんは若年で発症するケースが多く、人生の最も大切な時期に大きな影響を受ける。
 本日の発表により、こうした患者さんが切に必要とする新たな治療選択肢を提供するというわれわれの目標に近づくことができる。

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