ハンター症候群次世代治療薬の共同開発・事業化でJCRと契約を締結  武田薬品

 武田薬品は30日、ハンター症候群に対する治療薬として開発中の次世代組換え融合タンパク質JR-141(INN: pabinafusp alfa)について、JCRファーマと特定地域における独占的な共同開発およびライセンス契約を締結したと発表した。
 ハンター症候群は、IDSの欠損によって引き起こされる疾患で、様々な病型がある。JR-141は、JCRが有する血液脳関門(BBB)通過技術であるJ-Brain Cargoを用い、治療効果をもつ酵素が血液脳関門(BBB)を通過し、脳内に直接到達して、ハンター症候群の身体症状と、認知機能障害の進行につながる神経障害性症状に働きかけるよう設計された物質である。
 今回の独占的な共同開発およびライセンス契約により、武田薬品は、米国以外のカナダ、欧州およびその他の地域(日本と一部のアジア太平洋諸国を除く)におけるJR-141の事業化を独占的に行う。
 JCRは、米国外のライセンスの契約一時金を受領するほか、開発と事業化の進捗に応じてマイルストーンフィー、ならびに製品化後の売上に応じて段階的に料率が設定されるロイヤルティを受け取る予定。
 両社は、JCRが実施するP3相プログラムの完了後、可能な限り速やかに同治療薬を患者に届けられるよう連携して活動する。
 武田薬品は、同契約とは別に締結したオプション契約に基づき、当該P3相プログラムの完了時に米国におけるJR-141の事業化について独占的ライセンスを得る権利を取得する。
 JR-141は、日本における非盲検P2/3相臨床試験で主要評価項目を達成し、第52週にわたる治療終了後の評価が行えた被験者の全員で神経障害性症状に対する効果を示すバイオマーカーである脳脊髄液中のヘパラン硫酸(HS)の有意の減少が認められた。
 標準的な酸素補充療法から同剤に切り換えた症例では、全身症状のコントロールが維持された。また、試験参加前に標準的な酵素療法剤の治療を受けていなかった症例は、全身症状の改善が認められた。
 さらに、神経認知機能の発達を評価したところ、1年後の評価で25名中21名に年齢相当の機能の維持または改善が認められた。同試験では、試験薬に関連する重篤な有害事象の報告はない。

◆Dan Curran M.D.武田薬品の希少遺伝性・血液疾患領域ユニットヘッドのコメント
 武田薬品は、ハンター症候群の治療に持続的な向上をもたらすべく取り組んでいる。JR-141は、蛋白質が血液脳関門を通過しないという困難な課題を克服し、ハンター症候群の背景にある神経障害性症状を治療することで、患者さんの認知機能の維持や改善に役立てられる新たな薬剤送達方法を用いている。
 私たちはJCRと密接に連携し、酵素補充療法における専門知識を活かして、この医療に変革をもたらす可能性のある治療薬をできるだけ早く患者さんにお届けしたいと考えている。

◆芦田信JCR代表取締役会長兼社長のコメント
 JR-141を最大化させるという共通のゴールをもち、それを実現できるポジションにある武田薬品と共同できる機会を得てとても嬉しく思う。私たちの使命は、ハンター症候群をはじめとする中枢神経系症状があるライソゾーム病の患者さんに、画期的な治療選択肢をできるだけ早く届けることにある。
 JR-141は、血液脳関門を通過するバイオ医薬品として日本で初めて承認された医薬品である。私は、武田薬品とのパートナーシップを通じて世界中のハンター症候群の患者さんに新たな治療選択肢をできるだけ速やかにお届けすることで、この使命を果たせるようになると期待している。

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