誤って理解されがちな糖尿病知識が浮き彫りに 血糖トレンド委員会が調査結果報告

 血糖トレンド委員会は14日、世界糖尿病デーにちなんで実施した糖尿病患者および糖尿病予備群の意識調査結果を発表した。。同調査は、全国に合計2000万人いると推計されるこれらの人の糖尿病管理、血糖コントロールの実態把握を目的としたもの。
 同委員会は、血糖コントロールの重要性、および「血糖トレンド」の概念とその活用方法について、医学的、学術的および患者視点でわかりやすく正確な情報発信を理念としている。
 調査概要は、◆調査名:糖尿病および血糖トレンドに関する意識調査◆調査期間:2019年10月18日~10月20日◆調査方法:インターネット調査◆調査対象:糖尿病患者もしくは糖尿病予備群 413名(内訳:1型糖尿病103名、2型糖尿病155名、予備群155名)
 今回の調査では、一般的な糖尿病に関する用語(食後高血糖、インスリン、糖尿病網膜症、HbA1c)については、9割以上の人が「聞いたことがある」と回答したものの、実際にHbA1cに関する具体的な知識を問う設問では、正答率は50%以下であった。この正解率から、一般的に聞いたことがある用語の知識でも、実際には誤解してしまっている人が多い現状が浮き彫りになった。HbA1cは、過去1~2ヶ月の血糖値の平均を反映し、糖尿病の診断にも使われる検査値である。
 続いて、今回の調査で判明した“誤って理解されがちな糖尿病の知識”の一つに、「健康診断のHbA1cが正常であれば、糖尿病の心配はない」がある。47.7%がそう回答しているが、糖尿病は、HbA1cの値だけでなく、空腹時などの血糖値を用いて診断される。一度の健康診断でHbA1cが正常値であっても、糖尿病の可能性がある。
 「HbA1cが高い人は、一日を通して血糖値が高い」も39.2%が正しいと回答しているが、血糖値は一日のうちで変動を繰り返しており、血糖の変動(血糖トレンド)をみると、HbA1cが高くても、夜間や空腹時などには低血糖になっている場合がある。
 「血糖値は脂質やカロリーと関係するので、かけそばと天ぷらそばなら、具が少ないかけそばのほうが良い」も38.3%が「正しい」と回答した。これも誤った知識で、ヘルシーに思えるかけそばだが、実は具が多い天ぷらそばの方が、糖質の吸収を遅くするため、血糖値の上昇は緩やかになる。
 「低血糖になると必ずめまいや失神などの何らかの自覚症状が出る」は、25.7%が正解としているが、低血糖でも症状のない「無自覚性低血糖」といわれる状態がある。気付かずに低血糖を起こすと大変危険なため、血糖トレンドをみた評価が望ましい。
 一方、糖尿病患者・予備群自身の血糖値に対する意識や対策状況では、「普段から血糖値を気にしているか」と答えた人の割合は患者・予備群とも9割を超え、殆どの人が自分の血糖値を気にしていることが判った。


 血糖値対策の状況では、「現在行っている血糖値のコントロール対策で十分だと思うか」の設問では、「不十分」または「できていない」という人が過半数を占め、特に予備群では4人に3人がそう感じており、「血糖値を気にしつつも、対策は後回しになっている」実態が明らかになった。


 また、調査では、「季節ごとにありがちな血糖コントロールに影響する行動について、あてはまるかどうか」について質問した。回答の多かったものは、「寒くなると部屋にこもりがちで運動不足になる(46.5%)」「年末年始は外食の機会が多く、ついつい食べ過ぎてしまう(35.6%)」などで、これからの冬の時期には特に、血糖コントロールを悪化させるような行動をしがちな状況にあるのが明らかになった。

血糖トレンドの考え方


 正しい対策をとるために重要な、知っておきたい血糖の知識の1つが、「血糖トレンド」である。「血糖トレンド」とは、血糖値を点(ある時点の測定値)ではなく線(連続測定の値)で把握するもので、専用の機器を使って24時間連続測定して、血糖値スパイクなどリスクの高い急激な血糖変動を認識する。
 今年6月に開催された第79回⽶国糖尿病学会学術集会(ADA2019)においては、「血糖トレンド」の観点から規定した血糖管理の新たな目標が発表された。だが、今回の調査では、「血糖トレンド」について、「聞いたことがある」と回答した人は31.9%にとどまり、そのうち「意味も知っている」と回答した人は7.7%のみであった。内訳をみると、1型糖尿病患者では「聞いたことがある」が44.7%と高く、2型糖尿病患者・予備群ではそれぞれ27.8%、27.7%と低かった。
 調査結果から、よりきめ細かな血糖管理が必要になる1型糖尿病患者には知られ始めているものの、その他の人々には、まだ“血糖トレンド”の言葉自体があまり知られていないことが判った。
 「どのような情報をもっと知りたいと思うか」の質問項目では、「糖尿病を予防・治療するための正しい知識」と「血糖コントロールに関する正しい知識・コツ」が6割以上を占め、「正しい情報を取得したい」というニーズが高かった。

西村氏


 今回の調査結果を踏まえて血糖トレンド委員会代表世話人の西村理明氏(東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授)は「多くの糖尿病患者および予備群の方々では、血糖コントロールについて誤った知識を持っている方の割合が少なくな」と指摘する。
 さらに、「その一方で、適切な血糖コントロールをしていきたいという希望をもっておられることも判明した。血糖トレンド委員会では、今後も血糖値や“血糖トレンド”について、理解と適切な対策に役立つ情報を発信していきたい」と抱負を述べる。

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