定期健診・肺がん検診が肺がん早期発見のキーポイント アストラゼネカが肺がん患者調査

毎年、胸部画像撮影受診患者約7割が早期ステージで診断

 アストラゼネカは15日、昨年10月に全国の30歳以上の肺がん患者156名を対象にインターネットで実施したアストラゼネカの肺がん患者調査結果を公表した。
 同調査から、毎年、健康診断または肺がん検診を受け、胸部画像撮影を行っていた患者ほど、早期ステージ(0-Ⅱ期)でがんを発見できていたことが判明し、肺がんの早期発見における健康診断・肺がん検診の受診の重要性が改めて示された。
 同調査は、2023 年10月24日から26日までの3日間、30歳以上の肺がんと診断された人(最初の診断から10年未満)156名を対象に、健康診断および肺がん検診の受診歴、肺がん発見の経緯や肺がんに関する理解度などをインターネット調査で実施したもの。
 肺がんは、初期症状が出にくく、加えて風邪といった他の病気との区別もつきにくいことから早期発見が難しいがんの1だ。そのため、症状が出た時には進行していることが少なくなく、日本人の部位別のがん死亡数がもっとも多いがんとなる。
 また、肺がんのなかでも最も頻度の高い非小細胞肺がんの場合、ステージ別の5年生存率は、ステージⅠが84.1%、ステージⅡが54.4%、ステージⅢが29.9%、ステージⅣが 8.1%となっており、早期発見がいかに肺がんの予後改善に大きく影響するかがうかがえる。調査結果サマリーおよび詳細は、稚児の通り。

【調査結果サマリー】

1、 肺がんの発見経緯として、健康診断時が46%ともっとも多く、次いで他の疾患治療時における胸部画像撮影が36%、咳などの症状をきっかけに医療機関を受診が9%、肺がん検診は5%だった。
 なお、症状をきっかけに医療機関を受診して肺がんが発見された患者の50%が、診断時にはステージⅢ以降の肺がんであった。

2、 健康診断(人間ドックを含む)は、患者の多くが毎年受けていた一方で、肺がん検診を毎年受けていた患者は、半数以下の42%だった。肺がん検診を毎年受けなかった理由としては、「特に気になる症状がなかった」が、61%でもっとも多かった。

3、健康診断または肺がん検診を毎年受けていた患者の約7割が、早期ステージ(0-Ⅱ期)と診断されており、健康診断または肺がん検診を毎年受けていなかった患者と比べて、より早期で肺がんを発見できた患者の割合が高かった。

4、 肺がんと診断される前から肺がんに関する知識や情報を持っていたらどんなことに繋がったと思うか、という問いに対し、進行したステージ(Ⅲ-Ⅳ期)で診断された患者は早期ステージ(0-Ⅱ期)の患者と比較して、「もっと早い健康診断や肺がん検診の受診に繋がったと思う」と回答した割合が高かった。

【調査結果詳細】

① 肺がん発見の経緯は健康診断がもっとも多く、症状が出てから医療機関を受診し、肺がんと診断された患者の50%がステージⅢ以降
 肺がんの発見の経緯として、健康診断が46%ともっとも多く、他の疾患治療時における胸部画像撮影で偶然発見されたものが 36%、咳などの症状をきっかけに医療機関を受診したことが9%、肺がん検診が 5%であった。
 なお、他の疾患治療時に見つかった患者が受診していた診療科としては、循環器科(高血圧、心疾患、脂質異常)が 18%、消化器科(胃十二指腸潰瘍、大腸疾患、肝胆疾患)が 13%、呼吸器科(喘息、COPD、その他呼吸器疾患)が 11%であった。
 また、咳などの症状が出てから医療機関を受診して肺がんが発見された患者の診断ステージを確認したところ、患者の50%がステージⅢ以降の肺がんであった。さらに、診断ステージ別で発見の経緯を比較したところ、診断時にステージⅢ以降であった患者のうち、症状をきっかけに医療機関を受診して肺がんが見つかった患者は19%で、同様の経緯で早期ステージ(0-Ⅱ期)であった患者(6%)の3倍以上であったことから、症状が出た時には病状が進行しているケースが多いとの結果であった。

② 肺がん検診の受診率は低く、受けなかった理由として「特に気になる症状がない」
 健康診断は、患者の多くが毎年受けていた一方で、肺がん検診を毎年受診していたのは42%に留まり、58%の患者が肺がん検診を毎年受けていなかったことが明らかとなった。
 また、毎年受けなかった理由としては、「特に気になる症状がなかった」が、61%でもっとも多く、肺がんの症状は風邪などの他の疾患との区別がつきにくく、初期では自症状が現れにくいことが受診意向に影響していると推測された。

③ 毎年、健康診断または肺がん検診を受けていた患者は、より早期のステージで肺がんを発見
 健康診断および肺がん検診の受診頻度と診断時のステージとの関連性を調査したところ、いずれの検査においても、約7割の患者が早期ステージ(0-Ⅱ期)と診断されており、毎年受けていなかった患者よりも早期発見できた割合が高かった(健康診断:69% vs 63%、肺がん検診:74% vs62%)。 これらの結果から、毎年の健康診断および肺がん検診の受診が肺がんの早期発見に繋がることが示唆された。

④ 肺がんの正しい理解がより定期的な健康診断・肺がん検診につながる
 肺がんと診断される前から肺がんの知識や情報を持っていたらどんなことに繋がったと思うかを質問したところ、早期ステージ(0-Ⅱ期)の患者と比較して、進行ステージ(Ⅲ-Ⅳ期)の患者では「もっと早い健康診断や肺がん検診の受診に繋がったと思う」(早期:28%、進行:38%)と回答した割合が高かった。
 この結果から、肺がんに関する正しい知識や情報の拡充が、健康診断および肺がん検診への意識が高まり、受診行動に繋がる可能性が示唆され、疾患啓発の重要性が確認された。

肺がんを早い段階で見つけるためには、胸部X線検査および喀痰細胞診が有効とされており、40歳以降は1年に1回の肺がん検診が推奨されている。
 従業員に対して会社が負担する健康診断(事業者健診)では35歳以上であれば胸部X線検査が含まれているが、自治体が実施する健康診断には含まれていない場合がある。そのため、自営業者や定年退職者などの人においては、別途肺がん検診を受ける必要がある。

◆森田慎一郎ストラゼネカ執行役員オンコロジー事業本部事業本部長のコメント
 肺がんは初期症状が現れにくく、症状が出たときには進行していることが多いがんである。早期発見には胸部画像によって肺の状態を見ることが不可欠であることから、健康診断または肺がん検診を毎年受けていた患者さんがより早期ステージで発見できたという結果に繋がったと考えられる。
 早期発見のチャンスを逃さないためにも、胸部画像撮影の機会となる健康診断および肺がん検診の重要性をご理解していただきたい。

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