シナプスの可逆性とグリピカンの役割を解明 精神・神経疾患治療への寄与に期待 東京都医学総合研究所 

 東京都医学総合研究所 神経回路形成プロジェクトの神村圭亮主席研究員及び前田信明客員研究員らは18日、経験依存的なシナプスの可塑性に、プロテオグリカン(複合糖質)の一つであるグリピカンが必要であることを明らかにしたと発表した。
 人においてグリピカンが異常になれば自閉症や統合失調症などを発症するため、同研究成果はこのような精神・神経疾患治療に寄与するものと期待される。
 人の脳は、非常に多くの神経細胞で構成されているが、これらの神経細胞はシナプスと呼ばれる特殊なつなぎ目で繋がっている。
 これまで、動物を取り巻く環境が変化し、動物が新しい経験をすると、シナプスの構造や情報伝達の効率が変化し、その結果、動物の行動が適応的に修正される実態は判っているが、そのメカニズムは解明されていない。
 神村氏らは、ショウジョウバエを用いて、経験依存的なシナプスと行動の可塑的変化には、プロテオグリカンの一つであるグリピカンという糖タンパク質が必要であることを明らかにした。
 これまでの研究により、ショウジョウバエ幼虫を飢餓状態におくと、哺乳動物のノルアドレナリンに相当するオクトパミンが分泌され、神経筋接合部におけるシナプス数や、幼虫の移動速度増加が確認されている。
 今回、神村氏らは、グリピカンの機能が低下すると、飢餓状態になってもシナプスの数や移動速度が変化しなくなることを発見した。
 また、グリピカンが異常なハエでは神経伝達物質であるグルタミン酸を受け取る受容体やシナプスの発達を調節するBMPのシグナルが異常になっていた。
 この結果は、グリピカンがグルタミン酸受容体やBMPシグナルを調節することで、経験依存的なシナプス及び行動の可塑性を調節することを示している。
 同研究成果は、17日(米国時間)に米国科学雑誌『Cell Reports』にオンライン掲載されている。
 

タイトルとURLをコピーしました