塩野義製薬は24日、新型コロナワクチンS-268019について、19日付けでアジュバントを変更した新製剤の国内P1/2試験における全被験者60例への初回投与を完了したと発表した。
初回投与3日後までに生じた副反応はいずれも軽度または中等度であり、安全性上の懸念は確認されていない。
同社では、この試験で用量を決定した後、約3000例の日本人を対象とする次相試験に速やかに移行し、安全性、有効性のさらなる検討を行うとともに、最終段階の試験を年内に開始すべく準備を進めていく。
塩野義製薬が開発に取り組むワクチンは、グループ会社のUMNファーマが有する昆虫細胞などを用いたタンパク発現技術(BEVS)を活用した遺伝子組換えタンパクワクチンだ。
BEVSにより発現・精製した抗原タンパクならびに、安全性の観点からTh1/Th2(免疫応答を調整する2種類のヘルパーT細胞)のバランスを重視して選択したアジュバントを用いて、2020年12月よりP1/2相臨床試験を実施してきた。
その後、種々の検討結果や集積された知見を踏まえて、Th1/Th2バランスを維持しつつもより高い中和抗体価の誘導が必要と判断し、アジュバントを変更した新製剤を用いて、本年7月末より国内におけるP1/2相臨床試験を新たに開始した。
開始したP1/2相臨床試験は、旧製剤と同一の抗原タンパクおよび新たに選択したアジュバントの組み合わせからなる日本人成人を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験である。
同ワクチンを3週間間隔で2回接種した際の安全性、忍容性ならびに免疫原性の結果から、抗原タンパク量の低減化を含めて至適な用量を検討するとともに、各指標を接種後1年間追跡評価する(jRCT : 2031210269)。
今回の試験で用量を決定した後、約3000例の日本人を対象とする次相試験に速やかに移行し、最終段階の試験を年内に開始すべく準備を進めてまいく。
なお、これら大規模試験の実施ならびに承認申請に向けては、引き続き厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)等との協議、相談を進めていく予定だ。
新型コロナウイルスが世界的な脅威として引き続き人々の生活に大きな影響をもたらしている中、塩野義製薬ではパンデミックの早期終息による社会の安心・安全の回復に貢献するため、共同研究先や治験実施施設、生産施設、関係省庁ならびにPMDAとの連携を密にし、COVID-19に対する国産ワクチンの早期開発・提供が可能となるよう鋭意取り組んでいく。
また、ワクチンと並んで最優先で進めている治療薬の開発にも引き続き注力しており、塩野義製薬ではその他の取り組みの進捗も含めて状況に変化があり次第公表する意向を示している。