コロナ禍でマスク・食料品備蓄意識上昇も救急箱は手薄 第一三共ヘルスケアが意識調査

 第一三共ヘルスケアは、「防災の日(9月1日)」を前に、20代~50代男女を対象に、コロナ禍の影響による「災害に対する意識変化」の調査結果を発表した。調査概要は、実施時期:7月21日28日、調査手法:インターネット調査、調査対象:全国の20代~50代の男女、有効回答数:795名。調査結果の概要と、それに基づいた家庭での災害対策に詳しい専門家や薬剤師のコメントは次の通り。
 ①「コロナ禍の防災意識と備蓄の実態」に関する調査結果
 約5割の人が災害への不安が増したと感じている一方で、災害対策について約7割がどういう備えが必要かわからないと回答している。また、マスクや日用品、食料品の備蓄意識は高くなっているものの、怪我や病気、からだの不調に対応するための常備薬や救急セットの備蓄意識が高まった人は、わずか約3割に留まった。

■ コロナ禍で、約5割が災害への不安増。だが、対策の備えがわからない人は約7割に

 調査の結果、「災害への不安が新型コロナウイルス感染拡大前よりも増した」と回答した人は、約5割(53.2%)を占める。さらに、「コロナ禍における災害対策として、どういう備えが必要かわからない」と回答した人は、約7割(68.0%)に上る。これらの結果から、コロナ禍で、災害への不安が増しながらも、対策に戸惑う実態が浮き彫りになった。

■ コロナ禍で、約5~7割が「マスク」や「日用品」「食料品」の備蓄意識が上昇。だが、常備薬や救急セットの備蓄は手薄に、約6割が備蓄していない状態のまま

 新型コロナウイルス感染症拡大による、家庭の備蓄の変化について聞いたところ、「マスク」を備蓄するようになった/備蓄する量が増えたと回答した人の割合が最も多く、約7割(68.3%)であった。また、「トイレットペーパー・ティッシュなどの紙製品」(56.0%)や「保存の利く食料品」(50.9%)など、日用品や食料品の備蓄意識は、全般的に高く、約5割~7割となっている。
 だが、災害時に起こりがちな怪我や病気、からだの不調に対応するための「常備薬」の備蓄意識が高まった割合は、わずか31.3%、「絆創膏(ばんそうこう)、包帯などの救急セット」も27.0%にとどまった。一方、「そもそも備蓄していない状態のまま」と回答した人の方が多く、その割合は約6割に上った 。

②ニューノーマル時代こそ、“セルフケア能力を高める備え”を

 今年7月に起きた豪雨災害は、九州を中心に大きな被害をもたらした。近年、日本では、毎年のように大規模な自然災害が発生し、「観測史上初」と呼ばれる自然現象が発生している。

国埼氏

◇災害への向き合い方についての国崎信江氏(危機管理教育研究所)のコメント。
■ 日本は災害の百貨店、日ごろからセルフケアを意識して常備薬の準備を

 日本の自然災害の発生件数は、変動を伴いながら増加傾向にある。大陸プレートの活動の活発化による地震や津波、火山噴火、そして地球温暖化による水害、「令和2年7月豪雨」を引き起こした「線状降水帯(強雨をもたらす線状に延びる降水帯)」も地球温暖化による影響といわれている。
 自然災害が増えているのは、世界的な傾向ではあるが、特に日本は国土が狭いにもかかわらず、あらゆる自然災害が発生し、「災害の百貨店」ともいわれている。
 そんな環境に置かれながら、日本人の防災意識は決して高いとはいえない。こうした要因は、今の大人の世代で災害教育が十分に行われていなかったこと、そして行政依存にあるのではないかと考えられる。
 自分で自分を守る“自助”は防災の起点です。さらにいうなら、健康面では、災害のときだけでなく、人は突然体調不良になるものである。そうしたとき、週末でかかりつけ医が休診のケースも少なくない。災害時においては、医療機関も命に関わる状態の方を優先したり、医師が救護に向かったりしていることもあるため、治療を受けられるとは決して限らない。いかなるときでも、自分で自分のからだを守れるように、防災に限らず常に最悪の事態を想定し、常備薬をきちんと用意し、管理することが重要である。
■ コロナ禍を受けて避難所が不足するケースも、自分のからだを守ることを第一優先に

 災害というと、避難所を思い浮かべる方も多いとは思うが、実際は自宅待機のケースが多い。避難所への移動は、自宅が倒壊あるいはその危険があるときや、ライフラインが断たれ孤立状態になるときなどである。さらに、コロナ禍を背景に、現在は感染を防ぐためにも避難所は最低限の人数にとどめる必要があるため、避難所に入れないケースも起こり得る。
 従って、ニューノーマル時代は、ますます自己防衛、自分自身で健康を守り対処するセルフケア能力を高める備えが必要とされるだろう。避難でいえば、親族や知人の家に“疎開”をする、ホテルなどの宿泊施設を探すのも一つの方法だ。私は、長野でよくお世話になるペンションがあるが、「首都圏で何か起きたらお世話になります」と伝えてある。
 こうした、常日頃からお世話になると思われる人と連絡を取り合いながら、いざというときに備えておくことも重要だ。
 備蓄という点では、コロナ禍でマスクや日用品などが入手しづらくなり、備蓄意識は高まったと思うが、災害になれば、ますます物が調達しづらくなる。防災というと、食料品や懐中電灯などの防災用品に目がいきがちだが、大切なことは、怪我をしない、体調維持なので、ぜひ常備薬についての気配りを忘れないでいただきたい。

高垣氏

③薬は、「常備・避難・携帯」で整理すると安心

 ◇日ごろから家庭でも使うための常備薬、避難時に必要となる薬の整理についての高垣育氏(薬剤師ライター、国際中医専門員)のコメント。
■ 家庭の常備薬は、使いやすく、高めのところに置く 爪切りや綿棒などよく使うものを入れて、中身を点検する機会に

 我が家の救急箱に欠かせないのは、かぜ薬など、定番の薬と消毒薬である。入れておく薬とともに、災害を考慮すれば実は置く場所や保管の仕方も重要となる。特に、水害が起きたときには、低い位置に置いていると水没してしまう危険があるため、家族の手が届きやすい、でも乳幼児の手が届かない高めの位置に置くことを心がけてほしい。我が家では、さらに防水袋に入れて薬を守っている。
 また、常備薬を置いているつもりでも、よく見たら使用期限が切れているという方も多いのではないでしょうか。我が家では、救急箱に爪切りや綿棒、耳かきなど、日ごろからよく使うものを入れておくことで、救急箱を開く機会を増やし、薬の使用期限を意識的に管理できるようにしている。ちょっとした工夫なので、ぜひ試していただきたい。

■ 避難するときは、からだ一つでも移動できるように「防災ベスト」があると安心

 災害に備えて非常持ち出し袋を用意しているという話を耳にするが、実は私が支援活動で入った避難所で、非常持ち出し袋を持ってきた被災者の方に出会ったことは一回もない。非常持ち出し袋は、それなりに場所も取る。普段使わないのでつい、押し入れの奥にしまい、突然の避難に持ってくるのを忘れてしまうのではないかと推測される。
 そこで、私は「防災ベスト」を考案した。防災ベストは着ることで一体感があり、重さを感じない、からだを守る防護服になるなど、たくさんのメリットがある。 背負うよりもからだへの負担がないので、子どもや高齢者の方にとっても便利だ。
 我が家では、一人1着「防災ベスト」を用意しているが、全員に共通している薬類は、消毒薬、鎮痛薬、皮膚の保湿剤である。あとは、個人個人が絶対に手放したくないもの、必要と思うものを考えて入れるようにしている。


■ 日ごろの外出でもセルフケアができるものをカバンに
 セルフケアが必要になるのは災害時とは限らない。外出先でも応急手当てができるものをカバンに常時入れておくことで、いざ外出先から避難というときにも役に立つ。私は、バッグの中に、常に止血パッド、保湿剤、鎮痛薬、消毒薬を入れるようにしている。

【 いざというときに慌てないようにするために防災マニュアルを 】
 災害は突然やってくる。いざというときに慌てないようにするためにも「防災マニュアル」を用意する必要がある。我が家の防災マニュアルには、家族との連絡手段を詳細に記入し、待ち合わせ場所も単に〇〇小学校だけでなく、校内のどこと記入している。また、避難場所へのルートや災害時に取るべき行動などを記している。家族構成、立地条件などにより、災害時に必要な情報は家庭ごとに異なるので、それぞれの家庭に合ったオリジナルの防災マニュアルを作ってみていただきたい。

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