機能性表示食品の北海道産タマネギブランド「さらさらゴールド」を開発 農研機構らの研究グループ

 農研機構、植物育種研究所、北見工業大学、岐阜大学などの研究グループは、タマネギに含まれるケルセチンの健康機能性に着目し、機能性表示食品の北海道産タマネギブランド「さらさらゴールド」を開発した。同品は、8日より植物育種研究所がオンライン販売を開始しており、10月からは全国スーパーでの販売を予定している。
 同機能性食品のJ開発は、高齢化社会において、食生活を介した健康維持に役立つことを目的としたもの。農研機構を代表とする研究グループでは、ケルセチンの多いタマネギの健康機能性の評価を推進したきた。
 同品は、「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」に基づいて実施した研究レビューを科学的根拠に、植物育種研究所より、北海道産のブランド「さらさらゴールドタマネギ」で機能性表示食品として消費者庁に届出を行い、1月19日に生鮮食品の区分で受理された。
 農研機構、植物育種研究所、北見工業大学、岐阜大学などの研究グループは、タマネギに含まれるケルセチンの健康機能性に着目し、ケルセチンを多く含むタマネギの機能性表示を目指して研究を行ってきた。
 代表機関の農研機構では、食事による健康維持増進や野菜摂取量の増加に貢献するため、農産物への機能性表示に活用できる「研究レビュー」を公開しており、タマネギに含まれるケルセチンについても「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」に基づいて「研究レビュー」を実施し、2月8日に公開した(https://www.naro.affrc.go.jp/org/nfri/yakudachi/sys-review/index.html)。
 研究レビューでは、ケルセチンの摂取(50mg/日)が、加齢によって低下しがちな「積極的な気分」を維持するのに役立つことを確認している。また、一般のタマネギよりケルセチン含有量が多いタマネギブランド「さらさらゴールド」の生産物におけるケルセチン含有量の変動を調査して摂取の目安量を決定し、調理による影響がないことも明らかにした。
 これらの根拠に基づいて、植物育種研究所から機能性表示食品として「さらさらゴールド タマネギ」の届出を行い、2023年1月19日に生鮮食品の区分で機能性表示食品として受理され、消費者庁のHPで公表された。
 北海道産のタマネギブランド「さらさらゴールド タマネギ」は、2月8日より植物育種研究所のオンラインショップ(https://www.sarasaragold.com/)において販売が開始されている。
 総務省統計局によると、2022年9月15日現在の推計で日本の総人口に占める65歳以上の割合は29.1%に達している。また、厚生労働省の発表では2020年時点での65歳以上の認知症の人の数は約600万人と推計され、約16%以上に上る。
 中高年や高齢者における認知機能の低下やそれに伴う行動・心理症状の変化は重要な問題となっており、食生活を介して、これらが改善されれば、健康維持に貢献できると考えられる。
 こうした中、同研究グループでは、タマネギの健康機能性の認知度を高め、食生活を介して、加齢によって低下しがちである積極的な気分の維持への効果が期待される、タマネギに含まれる「ケルセチン」に着目。
 健常な中高年において、ケルセチンを含む食品の摂取はプラセボ食品と比較して、加齢によって低下しがちな積極的な気分ややる気を維持するのか?」に基づいて研究レビューを実施した。その結果、「ケルセチン50mg/日の摂取」が、健常な高齢者の加齢によって低下しがちな積極的な気分を維持するのに役立つと考えられた。
 そこで、JAきたみらい管内で2020年度に生産された「さらさらゴールド」の出荷規格M以上からサンプリングし、タマネギのケルセチン分析法を用いて分析した(図1)。

図1 2020年にJAきたみらい管内(18箇所)で生産された「さらさらゴールド」の
   新鮮重100gあたりケルセチン含量の分布(M規格以上、51個)

 農林水産省農林水産技術会議事務局が公開する「農林水産物の機能性表示に向けた技術的対応について」の資料に従い、エクセル計算プログラムを用いて「さらさらゴールド」のケルセチン濃度下限値を「24.9mg/100g新鮮重」と算出した。
 「さらさらゴールド」では、年次間差を考慮し、「可食部150g中に関与成分の効果が期待できる1日摂取目安量の50%に相当する25mgを上回るケルセチンが含まれる。」と表示することにした。
 「さらさらゴールド」の可食部を薄切りにして、5分間沸騰した後に茹で汁を含めて測定した場合においても、5分間炒めたものを測定した場合においても、新鮮重当たりに換算したケルセチン含量は変わらず、これらの調理によってケルセチン含量は大きく減少しないことを確認している(図2)。

図2 調理前後のケルセチン含量(2021年JAきたみらい管内産「さらさらゴールド」) 茹;薄切りにしたタマネギ可食部を水に入れて、5分間沸騰した後、茹で汁を含めて測定。 炒;薄切りにしたタマネギ可食部を少量のオリーブオイルで5分間炒めたものを測定。 ※6回の繰り返し実験の平均値±標準偏差で示した。

 さらに、2021年度にJAきたみらい管内で生産された、出荷規格M以上の「さらさらゴールド」で、前述の規格を満たすことを確認した。
 これらの結果に基づいて、植物育種研究所より、生鮮食品として「さらさらゴールド タマネギ」の機能性表示の届出を行った(図3)。
 同研究では、農研機構が研究レビューを実施し、北海道情報大学及び岐阜大学と連携して、機能性及び安全性情報の収集・評価を行いました。また、農研機構、植物育種研究所、JAきたみらい、北見工業大学、弘前大学が連携して、JAきたみらい管内で生産されたタマネギ「さらさらゴールド」のケルセチン含量を測定し、下限値を決定した。また、植物育種研究所が農研機構及びホクレン農業協同組合連合会と連携して、届出書類を作成した。
 機能性表示食品としての「さらさらゴールド タマネギ」は、オンラインでの受注販売を開始し、本年10月からは全国スーパーにて販売の予定である。同研究の成果によりタマネギ及びその加工食品の機能性表示が普及し、食生活を介した健康維持に役立つことが期待される。また、国産タマネギの付加価値を高め、タマネギの国内生産と輸出も含めた関連産業の活性化への寄与も注目される。

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