MSDは19日、肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬「エアウィン」(一般名:ソタテルセプト、遺伝子組換え)について、P3相ZENITH試験に基づく死亡リスクの高いPAH患者を対象としたエビデンスの追加により、電子添文改訂を行ったと発表した。
ZENITH試験の有効性と安全性の結果から、エアウィン電子添文の「5. 効能又は効果に関連する注意」の「5.4. WHO機能分類クラスⅠ及びⅣにおける有効性及び安全性は確立していない。」の記載から「クラスⅣ」を削除し、「WHO機能分類クラスⅠにおける有効性及び安全性は確立していない。」に変更したもの。
エアウィンは、PAHの本態である肺血管リモデリング(肺血管を構成する細胞が異常に増殖し、血管の壁が厚くなること)を標的とした治療薬である。
細胞増殖を促進するアクチビンシグナル伝達を阻害することでシグナル伝達のバランスを改善し、肺血管平滑筋細胞の増殖を抑制し血行動態を改善する。非臨床モデルでは、これらの細胞に対する作用により、血管壁厚の減少、右室リモデリングの減少、ならびに血行動態の改善が認められた。
エアウィンは、標準的なバックグラウンド療法を受けているPAHの成人患者(WHO機能分類クラスIIおよびIII)を対象とした、海外P3試験(STELLAR試験)および国内P3試験(020試験)等の結果に基づき、肺動脈性肺高血圧症を効能または効果として2025年6月24日に製造販売承認を取得している。
今回の電子添文改訂において「17.臨床成績」の項目に追加されたZENITH試験は、WHO機能分類IIIまたはIVかつREVEAL Lite 2.0リスクスコアが9以上の死亡リスクの高いPAH患者172例を対象とした海外P3相プラセボ対照二重盲検比較試験である。
同剤(初回0.3 mg/kgを投与、2回目以降は0.7mg/kgに増量)またはプラセボを、他のPAH治療薬に上乗せして3週間ごとに皮下投与した。中間解析の結果、主要評価項目である原因を問わない全ての死亡、肺移植またはPAHの悪化による入院(24時間以上)のイベント発現のリスクがプラセボ群と比較して76%低下し、統計学的に有意で臨床的に意味のある改善が認められた(HR: 0.24; 95% CI: 0.13, 0.43; p<0.0001)。
主要評価項目の結果に基づき、中間解析の有効性が良好であったことから同試験は早期終了となり、患者さんは非盲検の長期フォローアップ試験を通して同剤の投与を受ける機会が提供された。
全試験期間において、副作用は本剤を投与した86例中58例(67.4%)に認められた。主な副作用は、鼻出血26例(30.2%)、毛細血管拡張症19例(22.1%)、ヘモグロビン増加9例(10.5%)、血小板減少症7例(8.1%)、歯肉出血7例(8.1%)および頭痛7例(8.1%)であった。このようなZENITH試験の有効性と安全性の結果に基づいてエアウィン電子添文が変更された。
肺高血圧症は、心臓から肺に血液を送る血管である肺動脈の血液の流れが悪くなることで、肺動脈の血圧が高くなる疾患である。
肺動脈の血圧が高くなると、心臓の右心室に負担がかかり、やがて右心不全に至ります。肺高血圧症を治療せずに放置すると、数年以内に命を落としてしまう場合もある。
PAHは肺高血圧症の一種で、肺血管リモデリングなどが生じ、肺血管が狭くなることにより発症する。PAHは厚生労働省の指定難病(難治性呼吸器疾患)であり、認定を受けた患者は4682名(2023年度)で年々増加している。
近年、PAHは治療薬の開発が進み、既存薬の併用療法によって治療成績は改善しているが、PAHの予後にはいまだに課題が残っており、さらなる治療選択肢が求められている。
