iPS細胞由来心筋球移植で心臓再生に成功 慶應義塾大学、Heartseedなどの共同研究グループ

 慶應義塾大学医学部内科学教室(循環器)の遠山周吾講師、福田恵一名誉教授らの共同研究グループは、Heartseedとの共同研究により、ヒトiPS細胞から作製した心筋球移植による心臓再生に成功したと発表した。
 臨床治療用のヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)から心筋球を作製し、心筋梗塞を発症させたカニクイザルの心臓に移植したところ、移植した心筋細胞が長期に渡って生着し、サルの心機能を回復させることに成功したもの。
 また、従来の報告と比較して移植後に発生する心室性不整脈の副作用が格段に少ないことを明らかにした。
 心筋梗塞などが重症化すると数億個もの心筋細胞が失われてしまうが、ヒトを含む哺乳類は失われた心筋細胞を元に戻す自己再生能力を持っていない。
 ヒトiPS細胞は、理論的に体を構成するすべての細胞種へと分化できる多能性を有するため、このような疾患に対し、体外で作製した治療細胞の体内への移入による「再生医療」の実現が期待されている。
 だが、ヒトiPS細胞から分化した心筋細胞を移植後に心室性不整脈が発生することが実現化の大きなハードルになっていた。今回、共同研究グループは、まず臨床用のヒトiPS細胞から臨床グレードの培養液を用いて、高純度の心筋細胞(主に心室筋)を製造し、微小心筋組織塊(心筋球)を作製した。
 心筋梗塞を発症したカニクイザルにその心筋球を移植したところ、移植した心筋細胞が長期に渡って生着し、サルの心機能を回復させることに成功した。
 また、従来の報告と比較して移植後に発生する心室性不整脈の副作用が格段に少ないことを明らかにした。
 この研究成果は、移植後に発生する心室性不整脈という大きな課題を解決し、心臓の再生医療の実現化を大きく加速するものと考えられる。また、同研究成果に基づき、ヒトを対象とした臨床治験(LAPiS試験)が既に開始されている。
 同研究成果は2024年4月26日(米国東部時間)に、米国心臓協会(American Heart Association)の科学雑誌「Circulation(オンライン版)」に掲載された。研究の成果は、次の通り。

ヒト iPS 細胞から作製した心筋球の搬送と移植後の生着
心筋球を細胞生産場所である慶應大から 230km 離れた動物施設まで 4℃下で約 4 時間かけて輸送した
ところ、生存率が保たれていることを確認した。輸送した心筋球を心筋梗塞のカニクイザルの心
臓に移植し、12 週間後に組織学的解析を行うことにより、移植心筋細胞の長期生着および移植後の成
熟化を確認した。

(1)臨床用ヒトiPS細胞と同等のiPS細胞から心筋細胞および心筋球を作製した。
(2)心筋球を心筋梗塞のカニクイザル心臓に移植し、長期生着および成熟化を確認した。
(3)心筋球移植後の不整脈の発生頻度は極めて少なく、傷害心臓の機能を回復させた。

 同研究で用いられた心筋球作製プロトコールは、ヒトへの臨床応用を前提としたものである。同研究成果によって、ヒトiPS細胞由来再生心筋細胞を心臓に直接移植することにより心不全を改善する治療法がより臨床的に現実的なものになったと考えられる。
 同研究成果に基づき、同じ心筋球を用いたヒトへの治験(LAPiS試験)は既に開始され、現在進行中である。同研究では、心筋球の搬送についても検証を行っており、信州大学等の遠方の施設においても、心筋球の移植治療が可能となることを示すものであり、今後の臨床応用が期待されている。

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