ペニシリン生産菌のラマン分光法による解析でMeiji Seikaファルマと共同研究開始 早稲田大学

 早稲田大学の竹山春子理工学術院教授らの研究グループは7日、本年9月よりMeiji Seikaファルマと「ペニシリン生産菌のラマン分光法による解析に関する共同研究」を開始したことを明らかにした。
 抗菌薬は、細菌感染症の治療や手術時の感染予防に使われ、供給が途絶すると国民の生存に直接的かつ重大な影響が生じる。中でも注射用抗菌薬に多く用いられるβラクタム系抗菌薬は、その原材料のほぼ100%を中国からの輸入に依存している。そのため、βラクタム系抗菌薬4剤が経済安全保障推進法に基づき「特定重要物資」として指定され、産官学の連携のもと、国産化の取り組みが進められている。
 Meiji Seikaファルマは、そのうちペニシリン系抗菌薬2剤の国産化に向け、原材料である6アミノペニシラン酸(6-APA)の生産体制構築を目指している。6-APAは、微生物を用いた発酵生産により得られるペニシリンGを変換して得られるため、工業化にはペニシリンGの生産量を高める必要がある。
 Meiji Seika ファルマは1994年までペニシリンを生産しており今なお工業レベルの技術を保有しているが、同共同研究によりさらなる生産性向上を目指していく。
 同研究で用いるラマン分光法とは、ラマン散乱光を用いて物質の評価を行う分光法だ。物質に光を照射して、光が物質と相互作用することで入射光と異なる波長を持つラマン散乱光と呼ばれる光が出る。この光は物質が持つ分子振動のエネルギーにより決まるため、物質固有のラマン散乱光が得られる。
 同研究では、ペニシリン生産菌を対象とし、ラマン分光法によりペニシリン類並びにその中間体の細胞内における局在状況を解析する。従前の発酵解析は培養液を全体で捉え、物理化学的手法や遺伝子分析などで解析していたが、同共同研究の顕微ラマンの手法ではペニシリン生産菌の細胞一つ一つをミクロで捉え、発酵生産の経時変化や細胞内局在性、細胞外への移送機構について解析が可能となる。
 同研究において、Meiji Seika ファルマは様々な条件で培養したペニシリン発酵液を提供し、早稲田大学は理工学術院(竹山春子教授)並びにナノ・ライフ創新研究機構(安藤正浩次席研究員)の保有するラマン分光法によるin situ生体分子解析技術を駆使し、対象物質の細胞内局在の可視化を行う。
 早稲田大学とMeiji Seika ファルマは、同研究によりペニシリン発酵の生産性向上や品質安定化に貢献する要素を抽出し、製造管理法構築における科学的根拠とするとともに、目的物の生成プロセスの解明を目指す。

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