新規シデロフォアセファロスポリン系抗生物質製剤「フェトロージャ」 国内で製造販売承認取得 塩野義製薬

 塩野義製薬は30日、新規シデロフォアセファロスポリン系抗生物質製剤「フェトロージャ」について、同日付で厚労省より製造販売承認を取得したと発表した。
 フェトロージャは、塩野義製薬が創製した新規のシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬で、日本における製造販売承認申請を2022年3月24日に行っていた。
 同薬は、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する薬剤で、セフィデロコルに感性の大腸菌、シトロバクター属、肺炎桿菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア・マルセスセンス、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、緑膿菌、バークホルデリア属、ステノトロホモナス・マルトフィリア、アシネトバクター属のうち、カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す菌株を適応菌種とする各種感染症を適応症として承認された。
 今後、薬剤耐性菌による感染症で苦しむ日本の患者に対する新たな治療選択肢となることが期待される。また、同社では、抗菌薬適正使用推進の一環として、フェトロージャの感受性検査の開発・提供に向け取り組みを進めている。
 薬剤耐性(AMR、Antimicrobial resistance)すなわち抗菌薬に対する細菌の耐性獲得は人類が直面する世界的な公衆衛生上の脅威のひとつであり、緊急に対処が必要な世界規模の重要課題である。これまでの抗菌薬における適正使用の考え方は、新規抗菌薬の使用を限られた事例に絞ることで、新たな耐性菌の出現を抑えることにあった。
 だが、新規抗菌薬の開発には莫大な費用が掛かる一方で、開発に成功してもその使用が制限されることから、新たな抗菌薬の継続的な研究・開発を支える収益体制の維持が困難となり、多くの製薬企業が抗菌薬の開発から撤退もしくは規模の縮小を余儀なくされた。
 こうした状況を踏まえて、AMR対策の一環として新規抗菌薬の開発を促進するために、英国などではサブスクリプション型の償還モデル(国が開発企業に対して抗菌薬の処方量と切り離した固定報酬を支払う代わりに、必要なときに抗菌薬を受け取ることができる制度)が導入され、フェトロージャも2020年12月に採択されている。
 日本においても、抗菌薬の販売を手がける製薬企業の収益の一定額を保証する「抗菌薬確保支援事業」の試行導入が始まっており、2023年11月にフェトロージャが本事業初めての対象薬剤として採択されている。
 なお、同件が2024年3月期連結業績に与える影響は軽微である。

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