ゾコーバとセフィデロコルの良好な臨床試験結果・使用成績をIDWeek 2023で発表 塩野義製薬

ゾコーバ 味覚障害・嗅覚障害を有意に改善

 塩野義製薬は14日、10月11日~15日に開催されている米国感染症学会週間Infectious Disease Week 2023(IDWeek 2023)において、新型コロナ感染症経口治療薬「ゾコーバ」および新規シデロフォアセファロスポリン系抗菌薬「セフィデロコル」(米国・欧州での製品名:Fetcroja)の新たに得られた臨床データ発表を行うと発表した。ゾコーバおよびセフィデロコルの主な発表内容は次の通り。

【ゾコーバに関する主な発表】

◆日常診療下におけるエンシトレルビルの安全性と有効性
Safety and Effectiveness of Ensitrelvir for the Treatment of COVID-19 in Japanese Clinical Practice: A Post-Marketing Surveillance (Interim Analysis)  Poster #537

 同演題では、日本の臨床現場におけるゾコーバの安全性と有効性を評価した新たな臨床データを発表する。現在、日本で実施中の一般使用成績調査では3000例の患者の登録が予定されており、2023年7月20日時点で計1682例の患者が登録された。
 そのうち安全性の解析対象として1589例、有効性の解析対象として1584例が評価された。エンシトレビルの投与後、年齢や重症化リスク因子の有無にかかわらず、解熱までの時間の中央値は約1.5日、COVID-19の全症状の消失までの時間の中央値は約6.5日であった。COVID-19の悪化による死亡症例は確認されなかった。また、エンシトレルビルの安全性や有効性に関する新たな懸念は確認されなかった。

◆ 味覚・嗅覚症状への効果

Ensitrelvir for the Treatment of COVID-19 Infection: Evaluation of Taste Disorder and Smell Disorder in the Phase 3 Part of the Phase 2/3 SCORPIO-SR Randomized Controlled Trial  Poster #549

 オミクロン株による感染者の約13%が味覚障害や嗅覚障害を経験しており、世界中で何百万人もの人々に影響を与えている。QOLの低下に加え、COVID-19による味覚障害や嗅覚障害は何ヵ月も継続する可能性があると言われている。
 同演題では、COVID-19の症状発症から3日以内のゾコーバの投与により、味覚・嗅覚症状が抑制または改善された可能性があることを示す新たな臨床データを発表する。
 日本を中心にアジアで実施したP2/3試験(SCORPIO-SR Study)のPhase 3 partにおいて、エンシトレビル125mg群では、7日目に味覚障害あるいは嗅覚障害が見られた患者の割合はプラセボ群と比較して有意に少なかったことが確認された。

【セフィデロコルに関する主な発表】

セフィデロコル 
入院期間中の全死因死亡率が低くなる可能性示唆

◆ 実臨床でのCOVID-19ではない入院患者におけるグラム陰性菌感染症に対するセフィデロコルの効果

Real-World Use of Cefiderocol Treating Non-COVID Patients with Confirmed Gram-negative Infections in US Hospitals During January 2020 – June 2022  Poster #2753

同演題では、米国における実臨床でのCOVID-19ではない入院患者におけるグラム陰性菌感染症に対するセフィデロコルの治療に関する後ろ向き観察研究のデータ(Premier Healthcare Database、2020年1月~2022年6月)を発表する。同データでは、グラム陰性菌感染が確認された後、3日以上連続してセフィデロコルが投与された患者は275例であり、その患者背景は次に示す通り。

・約半数(53.1%)が集中治療室で治療を受けていた。

・半数以上(56.7%)が他の抗菌薬に耐性がある菌を保持していた。

・主な感染部位は、呼吸器(45.8%)、尿路(19.6%)、創傷(18.2%)、血液(16.4%)であった。

・ 主な併存疾患は、腎疾患(42.9%)、慢性肺疾患(36.7%)、糖尿病(34.9%)、うっ血性心不全(32.7%)であった。

・分離された主な菌は緑膿菌(48.7%)、アシネトバクター・バウマニ(23.6%)、クレブシエラ・ニューモニエ(14.2%)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(13.1%)であり、患者の3分の1以上(34.2%)が2種類以上の菌に感染していた。

・ ほとんどの患者(92%)が、セフィデロコルの投与前に他の抗菌薬が投与されていた。

◆セフィデロコルを投与された患者における入院期間中の死亡に関する結果は次の通り。

・ 入院期間中の全死因死亡率は16.4%であった。

・ 入院期間中の全死因死亡率は、グラム陰性菌を確認した検査から5日以内にセフィデロコルの治療が開始された患者(135例)で10.4%、6~20日以内に治療が開始された患者(108例)で19.4%、20日以上経過後に治療が開始された患者(32例)では31.3%であった。

 これらの結果から、セフィデロコルによる治療がグラム陰性菌感染症の治療に効果的であり、より早期にセフィデロコルによる治療を受けた患者は、入院期間中の全死因死亡率が低くなる可能性が示唆された。

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