人生100年時代 働く人を対象とした「健康とセルフケアの実態調査2023」 第一三共ヘルスケア

20~60代の働く人が「健康でいられると思う年齢」は平均67.7歳

 第一三共ヘルスケアは、働く人を対象に「健康とセルフケアの実態調査2023」を実施した。同調査は、自分自身で健康を守り対処する「セルフケア」という考え方が、人生100年時代の日本に重要なテーマになることを見据え、毎年、働く人を対象に実施しているもの。
 2023年2月3日~6日までの4日間、全国の20〜60代の働く男女1000人を対象にインターネット調査で実施された。
 その結果、セルフケアの実践率は前年より下がったが、本年5月には新型コロナ感染症が5類感染症へ変更されることなどもあり、8割近くが「今後セルフケアの重要性が増す」と回答。また、物価上昇を実感する中で、セルフケアは現状を維持したい支出第1位であった。調査結果の概要と詳細、産業医・鄭理香氏に聞く、「働く人のセルフケアのススメ」は次の通り。

【調査結果の概要】

1、働く人の健康とセルフケアの実態

・セルフケアの認知率は約8割に上るが、「からだとこころ」両方を対象と捉えている人は約6割にとどまる。

・セルフケア実践率は年々低下し、46.9%に。実践できていない最も多い理由は「仕事が忙しい」から。

・セルフケア費用は1カ月当たり5096円。年々高まる。

2、withコロナ生活でのセルフケア

・日常生活はwithコロナへシフト。

・「今後、日本ではセルフケアの重要性が増すと思う」人は約8割にも。

3、人生100年時代の働き方とセルフケア

・人生100年時代、全体の6割以上が「健康が続く限り、年齢に関係なく働きたい」。

・働きたい年齢を平均で見ると、全体では平均63.0歳まで、60代では平均69.4歳まで。

・人生100年時代の働き方、「健康」と「セルフケア」の重要度が高まる。

・健康でいられると思う予想健康寿命は全体平均で67.7歳。

コラム:~4月からの新年度、仕事よりも「セルフケア」~

4、物価上昇とセルフケア

・老若男女、誰もが物価の上昇を痛感。「食料品」「光熱費」が物価上昇を感じる2トップ。

・物価上昇が続く中、「セルフケア」「医療費」など、健康には変わらずお金をかけていく。

【調査結果の詳細】

1、 働く人の健康とセルフケアの実態

◆セルフケアの認知率は約8割に上るが、「からだとこころ」両方を対象と捉えている人は約6割にとどまる。

 20〜60代の働く男女を対象にセルフケア(自分自身で健康を守り対処すること)に関する調査を行った。まず、セルフケアの認知について聞くと、27.2%が「意味、内容まで知っている」、51.3%が「言葉だけは知っている、聞いたことがある」と回答し、全体の約8割(78.5%)がセルフケアという言葉を知っていることが分かった[図1]。

 次に、セルフケアの対象範囲を聞くと、「からだ」が74.6%であるのに対し、「こころ」が88.1%と多くなっている。一方、「からだ」と「こころ」の両方を選択した人を集計すると、全体の約6割(63.6%)にとどまった[図2]。

[図1]セルフケア認知率

[図2]セルフケアの範囲(複数回答)

図2セルフケアの範囲

◆セルフケア実践率は年々低下し、46.9%に。実践できていない最も多い理由は「仕事が忙しい」から。

 次に、「セルフケアとは自分自身で健康を守り対処すること」と提示した上で、セルフケアができているか否かを聞いた。その結果、「セルフケアができている」実践率は年々低下し、今回は46.9%となり、最も低い40代では38.8%であった[図3-1]。

 セルフケアができていない理由としては「仕事が忙しい」(46.0%)が最も多く、セルフケア実践率の最も低い40代では52.6%に上る[図3-2]。

[図3-2]セルフケアができていない理由(複数回答)

◆セルフケア費用は1カ月当たり5096円。年々高まる。

 一方、セルフケアにかける金額は、1カ月当たり平均で5096円となり、昨年の4488円より608円も高く(前年比114%)、全年代で上昇している。
 特に、60代は7399円に上り、最も高い結果となった[図4]。

[図4]セルフケア費用(1カ月当たり)

※図3-1、図4の年代別回答者数

2021年 20代:n=200、30代:n=203、40代:n=220、50代:n=243、60代:n=134

2022年 20代:n=200、30代:n=203、40代:n=221、50代:n=233、60代:n=143

2023年 20代:n=200、30代:n=202、40代:n=224、50代:n=236、60代:n=138

2、 withコロナ生活でのセルフケア

◆日常生活はwithコロナへシフト。

 2020年から続いたコロナ禍、日常生活において緩和に向けた変化が進み、withコロナへのシフトが進んでいる。
 現在の生活に関して聞くと、約4割が「コロナ禍以前に比べ、自分の体調変化に敏感になった」(38.8%)と回答し、3割以上が「旅行や外出などを再開している」(34.1%)、「外食にでかけるようになった」(31.3%)と回答している[図5]。対面での交流が徐々に回復していることが伺えた。

[図5]現在の日常生活(複数回答)

◆「今後、日本ではセルフケアの重要性が増すと思う」人は約8割にも。

 セルフケアに対する考え方を聞くと、「セルフケアは共感できる考え方だ」と8割以上(83.2%)が賛同し、78.9%が「セルフケアは自分のためだけではなく、周囲や社会に良い影響を及ぼす」と回答している。また、77.3%が「今後、日本ではセルフケアの重要性が増すと思う」と回答しており、さらなるセルフケアの広がりが予想される[図6]。

[図6]セルフケアに対する考え方

[図7]セルフケアと市販薬の関係に対する考え方

3、人生100年時代の働き方とセルフケア

◆人生100年時代、全体の6割以上が「健康が続く限り、年齢に関係なく働きたい」。

 人生100年時代を迎える中、望ましい働き方について聞いた。その結果、全体の24.8%が「年齢に関係なく健康が続く限りフルタイムで働きたい」、39.8%が「年齢に関係なく健康が続く限り働きたいが、フルタイムではなく日数や時間を限定して働きたい」と回答し、全体の64.6%が「健康であれば年齢に関係なく働きたい」と回答している。

 この結果を、図3の「セルフケアができている/できていない」に基づき分けて比較すると、「セルフケアができている」人では「健康であれば年齢に関係なく働きたい」と回答した割合が69.7%となり、一層高いことが分かった[図8]。

[図8]望ましい働き方

◆働きたい年齢を平均で見ると、全体では平均63.0歳まで、60代では平均69.4歳まで。

 次に、何歳まで働きたいか聞いたところ、全体では平均63.0歳までとなった。年代別で見ると、年代が上がるほど働きたい年齢も上がっている。
 20代・30代は60歳を前にリタイアしたいと考えるのに対し、定年に直面する60代はさらに長く働きたいと考えている傾向がみられる。国の取り組みとして70歳までの就業機会確保が進められているがが、当事者世代の望む声とほぼ同様になっている。
 なお、セルフケアができている人は平均63.9歳まで働きたいと考え、セルフケアができていない人の平均62.2歳に比べ、高い結果となった[図9]。

[図9]働きたい年齢(勤労希望年齢)

 働くことと健康やセルフケアに関する意識について聞いた。その結果、90.6%が「就労において健康がますます重要になると思う」、86.4%が「高齢でも元気に働けるようセルフケアがますます重要になると思う」と回答している[図10]。

◆健康でいられると思う予想健康寿命は全体平均で67.7歳。

 厚生労働省の調査によると、2019(令和元)年の日本人の平均寿命は、男性が81.41歳、女性が87.45歳である。一方、健康寿命は男性が72.68歳、女性が75.38歳となっている。
 そこで、健康でいられると思う年齢(予想健康寿命)を聞いたところ、実際の上記健康年齢に比べ、男性は約4.1歳短い68.6歳、女性は約8.9歳短い66.5歳となった[図11]。

 年代別で見ると50代、60代の予想健康寿命は70歳を超えているが、若い年代ほど短く見積もっている傾向がみられる。また、セルフケア実践の有無で予想健康寿命を見ると、セルフケアができている人では69.7歳と、セルフケアができていない人の66.0歳より、3.7歳長いことが分かった。

[図11]健康でいられると思う年齢(予想健康寿命)

4、物価上昇とセルフケア

◆老若男女、誰もが物価の上昇を痛感。「食料品」「光熱費」が物価上昇を感じる2トップ。

 天候不良や国際紛争などの要因から、さまざまな商品やサービスにおいて値上げが続いている。そこで、1年前と比べた物価の上昇について聞くと、全体の約9割(94.6%)が「感じる」(感じる+やや感じる)と回答し、性・年代別でも大きな差はない[図12]。
 物価の上昇を感じるものは、「食料品」(94.2%)が最も高く、次いで「光熱費」(83.5%)、「日用品」(59.7%)、「外食費」(54.0%)が上位にあがった[図13]。

[図12]物価の上昇を感じる

◆物価上昇が続く中、「セルフケア」「医療費」など、健康には変わらずお金をかけていく。

 食費や教育費など10のジャンルに対し、「支出を抑えたい」「現状維持」「支出を増やしたい」の3択で回答してもらった。その結果、「支出を抑えたい」を選択した割合は、住宅費、光熱費、水道代、日用品などの「住まい・公共料金」(61.6%)が最も多く、次いで「外食費」(52.2%)、「衣類」(50.5%)、「通信費」(50.4%)があがった。
 一方、現状維持の回答は、健康維持・増進のための「セルフケア」(63.3%)が最も多く、次いで「理・美容」(59.1%)、「教育・学習」(57.4%)、「医療費」(55.0%)があがった[図14]。

 誰もが痛感する物価上昇だが、セルフケアや医療費など、健康にかける支出については維持する様子が見て取れる。
[図14]ジャンル別の支出増減予定

【産業医・鄭理香氏に聞く、「働く人のセルフケアのススメ」】

◆コロナ禍3年を経てセルフケア意識や行動が定着。

 調査結果を見ると、セルフケアの実践率は少しずつ低下している。新型コロナ感染拡大が始まった頃は、感染対策や健康に対する自己管理が強く叫ばれ、セルフケア意識も実践もいや応なく高まったが、3年が経って意識して行っていたセルフケアが当たり前になり、定着したと考えられる。

◆自分の健康管理市販薬をうまく使うことで日常生活がよりスムーズに。

 一方、コロナ禍以前と比べ自分の体調に敏感になった人もいる。コロナ禍で社会全体の健康について考えるようになり、そのためにも自分の健康管理を意識するようになり、結果、自分の体調変化にも気付きやすくなっているのだと思われる。
 意識が高まることで、市販薬もうまく使えるようになると良いだろう。例えば花粉症だと、処方薬と同等の薬効を持っていたり、複数の薬効が組み合わさったりと、近年、進化の著しい目薬やアレルギー薬は有効な選択肢になり得る。
 もちろん、今まで経験したことのない症状では医師の診療を受けることをお勧めするが、そうではない場合は市販薬をうまく使って対処すれば良いだろう。

◆セルフケアは自分のためだけではなく、みんなのためにも。社会全体の健康につながるセルフケア。

 私は産業医なので、職域でセルフケア研修を行うとき、「上司がきちんとセルフケアできていないと部下に影響がありますよ」という話をよくする。
 分かりやすいところでは、上司がいつもイライラしていると部下もイライラして職場全体がピリピリしている、そんな経験があるのではないだろうか。
 これは良いことでも同じで、例えば、上司が健康意識が高いと部署全体で健康イベントへの参加率が高い、というケースがよくある。
 良くも悪くも、自分だけではなく全体に影響することを理解していただきたい。誰かが体調を崩したとき、職場の皆んなで協力的にサポートできる環境をつくることが重要だが、そのためにも一人ひとりが「こころもからだも」調子を整えていくことが重要である。
 今回の調査でも、セルフケアができている人は健康でいられると思う年齢が高くなっていたが、セルフケアができている人は、うまくバランスを整えながら働いている方が多いと感じる。
 自分自身を整えることが、職場や家族といった周りを整え、ひいては社会全体の健康につながる、そういった意識を持つことが重要である。

◆ 主体的な健康管理が求められる新年度、「こころとからだ」のセルフケア習慣を始めよう。

 ここ10年、厚労省がメンタルケアを強化し、企業でもメンタルケア研修が増えていることから、今回の調査でもセルフケアの対象は「こころ」と答えた人が多くなっているが、「こころ」だけではなく「こころもからだも」セルフケアが大切だ。
 「からだ」が不調だと「こころ」も不調になる。両方そろうことが健康なので、セルフケアはどちらも重要であるす。
 物価上昇が続いている中で、健康維持・増進のためのセルフケア、理美容、教育・学習、医療費は現状維持という結果が出ていたが、これらは自分への投資であり、「体が資本」という意識の表れだと考えられる。
 ここでの「体」は「こころとからだ」の両方が含まれるが、元気でないと何もできないということを、コロナ禍を経て誰もが再認識しているのだと考えられる。「健康づくりには惜しみなく」という気持ちが感じられ、とても良い傾向だと思う。
 5月には新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行することから、健康管理に対する主体性がますます求められるようになる。
 4月からの新年度・新生活は何かを始める良い機会である。5月以降を見据え、また、コロナ禍での経験を生かすためにも、「こころとからだ」両方のセルフケアを意識し、習慣化するきっかけとして頂きたい。

セルフケアに役立つ第一三共ヘルスケアの取り組み

①情報提供サイト「くすりと健康の情報局」

 第一三共ヘルスケアでは、長年製薬事業に携わってきた経験と知識を生かし、「くすりと健康の情報局」を運営している。気になる症状があればすぐスマートフォンで検索する時代に合わせ、身近な症状の原因・予防・対策や市販薬の役割などを紹介している。症状が起こったときだけではなく、日頃から症状の特徴や薬に関する知識を深めるコンテンツを用意し、情報を正確かつ分かりやすく伝え、セルフケア実践の一助となるサイトを目指している。

②セルフケア啓発YouTubeチャンネル 「ねこいちさん ~楽しく健康セルフケア~」

「ねこいちさん ~楽しく健康セルフケア~」は、セルフケア情報をより身近に感じ親しんでもらいたいという想いを込め、2022年8月に誕生した。

日常生活で感じる「ちょっとした不調」や放っておくと良くない「気をつけたい症状」、OTC医薬品の正しい使い方や病院を受診する目安、スキンケアやオーラルケアなどの正しい情報を分かりやすく伝えていく。「ねこいちさん」は、アニメーションとしての楽しさとともに、セルフケア情報を生活者に届けるチャンネルとして、セルフケア推進に貢献する。

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