基幹3製品の価値最大化で収益基盤確立目指して 住友ファーマが中期経営計画2027策定

 住友ファーマは28日、東京都内で「中期経営計画2027(2023-2027 年度)」に関する説明会を開催した。会見した野村博社長は、「同中計において北米での基幹製品をしっかり育てつつ、研究開発では将来性のあるパイプラインに資源を投入して新薬のみならず、再生医療、フロンティアなど2030年代をしっかり支える複数のソリューションを創出しいく」決意を表明した。基幹製品は、オルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤、マイフェンブリー(子宮筋腫・子宮内膜症治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)の3製品。
 中計2027は、「もっと、ずっと、健やかに。最先端の技術と英知で、未来を切り拓く企業」をビジョンとする。経営目標は、米国の大型主力品ラツーダ(非定型抗精神病薬)の特許切れでボトムとなる2023年度は、売上収益3620億円、コア営業利益△620億円、営業キャッシュフロー△1300億円、ROIC△8.5%、ROE△21.9%を見込んでいる。
 2023年度の赤字決算を2024年度には、売上4600億円、コア営業利益400億円に黒字転換。中期経営経計画の最終年度となる2027年度には、売上収益2023年を起点としたCAGR(年平均成長率)12%以上(約6000億円程度)、コア営業利益累計1920億円以上(27年単年度で400億円程度)、営業キャッシュ・フロー累計2700億円以上、ROIC累計6.5%以上、ROE 累計8%以上を目指す。
 配当は、コア営業損失を見込む2023年度は無配で、コア営業利益を見込む 2024年度は復配の方針とし、その後は安定配当を目標としている。
 その間、自社起源のイノベーションを事業として結実させるための研究開発に取り組み、事業構造の転換を図る。同時に、米国グループ会社の再編を契機にグループ経営体制を再編し、しなやかで効率的な経営基盤への変革に取り組む。同社では、中計2027における具体的な重点課題として、①事業収益力の強化、②自社イノベーションの結実、③米国でのグループガバナンスの強化④デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速、⑤ 企業文化の浸透と人材戦略ーを掲げている。
 事業収益力の強化では、 北米において基幹3製品の早期価値最大化に最注力するとともに、米国グループ会社7社を1社に再編してシナジーの実現に取り組む。米国の人員体制は、500人削減して7月1日より1800人体制とする。これらの取り組みにより2023年の売上収益16億ドル、2024年度にはコストシナジー効果4億ドルを見込んでいる。
 野村氏は、基幹3製品のプロモーションについて、「ジェムテサは、デジタル(DX)を使ったサポートにより成果が出ている。同様にオルゴビクス、マイフェンブリーにもDXを展開していきたい」と強調した。
 日本では、注力製品および新製品の価値最大化に注力し、事業収益を確保するとともに、再生・細胞医薬事業およびフロンティア事業の強化に取り組む。野村氏は、約1000名を擁する日本のMRにも言及し、「人数を削減することなく、提携等によって力を発揮できる機会を模索していきたい」と述べた。
 中国・アジアでは、製品ラインナップを拡充させるとともに、販売国の拡大等により収益と利益の最大化に取り組む。
 自社イノベーションの結実では、ユーロタロント(抗精神病薬、SEP-363856)、他家iPS 細胞由来ドパミン神経前駆細胞(DSP-1083)等の後期開発品目の開発を加速させ、確実に上市させるべく取り組む。大塚製薬と共同開発しているユーロタロントについては、「適応拡大により、ラツーダを超えるブロックバスターになる可能性が高い」と期待を寄せ、「2027年度には、統合失調症の適応で売上高200億円を超える計画」を明かした。
 一方、初期開発品目については、その中から優先品目を早期に選抜し、自社開発を加速させるとともに、外部提携を含めた適切な手段で保有パイプラインの価値最大化を追求し、適正投資配分を実現する。
 創薬研究においては、トランスレーショナル研究、バイオマーカー研究およびモダリティ技術において独自性の高い創薬基盤をさらに強化するとともに、データ駆動型創薬を推進し、病態の本質を捉えた開発候補品目の継続的創出を目指す。 2028年度から始まる次期中期経営計画期間での収益の柱に育成するべく、再生・細胞医薬事業およびフロンティア事業を本格化させる。さらに、薬剤耐性菌感染症治療薬およびワクチンの研究開発を外部連携により推進し、グローバルヘルスへの貢献に取り組む。
 デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速では、同社のデジタル基盤(DrugOME および Digital Innovation)を最大限に活用し、データドリブンな意思決定のもと、すべての人材が継続的に業務変革と価値創造に取り組み、自律推進する組織に変革する。
 企業文化の浸透と人材戦略では、「どこにどのような人材が居るのかを‟見える化”して、有効活用できる人材配置を目指す」(野村氏)。
 野村氏は、「これまでラツーダの一本足でやってきて、特許切れまでに次の成長パイプラインに繋げることが出来なかった点を大いに反省している」と断言。その上で、「基幹製品も2030年代半ばで特許関係の影響が出てくるが、ラツーダクリフの二の舞を起こさないことが重要である」と指摘し、「今後は、新薬創生、再生医療、フロンティアも含めた様々なソリューションで成長を支えていきたい」と改めて強調した。

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