「ゾコーバ」の緊急承認でアフターコロナへの道筋確立 神農祭市民公開講座で森下竜一阪大教授が強調

森下氏

 神農祭本宮の23日、大阪・道修町の神農祭市民公開講座(無観客、後日YouTube配信)が開催され、森下竜一大阪大学大学院医学系研究科寄附講座教授が、「アフターコロナと2025大阪・関西万博」をテーマに講演した。
 森下氏は、「塩野義製薬の新型コロナ経口治療薬‟ゾコーバ”が昨日(11月22日)緊急承認され、これによりアフターコロナへの道筋が付けられた」と断言。その上で、「やっとコロナ問題が後片付けの段階に入りつつある。そうなれば後は、‟2025年大阪・関西万博”を関西経済復権のためにも成功させることが大変重要なテーマになってくる」と訴えかけた。森下氏の 神農祭市民公開講座の講演内容は、後日、ノーカットでYouTube配信される。 
 ゾコーバは、新型コロナウイルスのプロテアーゼを阻害することで、ウイルスで増殖を抑制する。ウイルスそのものの増殖を抑制するため、オミクロン株のような変異株にも有用性を発揮することが臨床上でも証明されている。
 一方、ラゲブリオ(MSD)もウイルスの増殖を防ぎオミクロン株に効果があるものの、「出荷数量が少なく、実際に納入している医療機関が少ない。重傷者あるいはハイリスクの感染者を中心に投与されるため、処方数は少ない」
 パキロビッド(ファイザー)は、「重症化リスクを90%低下するが、高血圧薬や糖尿病薬など併用禁忌の薬剤が多く、ハイリスクの感染者に投与し難い。このような理由から、新型コロナに感染しても画期的な治療薬が無い状況が続いていた」
 こうした中、緊急承認されたのがゾコーバで、森下氏は同剤の特徴として、「パキロビッドと違って普段薬を飲んでいない若い人などは降圧剤や糖尿病薬などの併用禁忌薬の心配が殆どない」ことを大きなメリットとして指摘する。さらに、「軽症・中等症にも適応を持つので、インフルエンザと同じような治療が可能になり、今後はゾコーバを中心に治療が進んでいく」見通しを強調した。
 また、「今年2月から7月中旬までの期間、12歳から60歳代の軽症から中等症の患者1800人強を対象としたゾコーバの最終段階の治験結果では、同剤の服用でオミクロン株の5つの症状が7日前後で消滅し、24時間短縮された」と紹介した。
 その上で、「この5症状の24時間短縮の意義を指摘する声もあるが、新型コロナと判った時点で投与を開始すれば、ウイルス排出量を90%以上抑制して家庭内感染や職場感染を防止できるメリットは何よりも大きい」と断言。
 「世界で初めての重症化リスクのない患者の軽症・中等症に対する治療薬となる新型コロナ治療薬が日本から創出されたことは意義深く、審議会終了後に即承認されたのは非常にスピーディーな対応であった」と評価した。
 22日の加藤勝信厚労大臣のゾコーバ緊急承認会見内容についても、「国内企業が創出した初の経口薬で、使用対象者は既存の経口薬とは異なり重症化リスク因子を有しない患者を含んでいる。患者対象が広がり、新たな治療選択肢として期待される。国内企業による製造販売は、安定供給の観点からも大きな意義がる」と紹介した。
 加えて、「厚労省は塩野義製薬から100万人分を購入する契約を既に結んでおり、12月初頭には医療現場に使用できるように供給開始する予定」や、「特段の要件を設けず、各都道府県が選定した医療機関での処方や薬局での調剤ができるようにする」厚労省の方針も報告。「ゾコーバの緊急承認は新型コロナ感染者にとって福音となる。同剤の普及により、アフターコロナへのゲームチェンジの局面を迎えた。今後、治療薬も新型コロナの後遺症を改善するアフターコロナに移行し始めた」との見解を示した。
 新型コロナ感染症の後遺症は、デルタ株では「味覚障害」や「嗅覚障害」がある。他方、オミクロン株では、「脱毛」、「精神神経症状」、「記憶障害」、「抑うつ」、「集中力低下」、「倦怠感」、「関節痛」、「不眠」、「頭痛」、「性欲減退」、「射精障害」など多彩な後遺症が報告されている。
 これらの後遺症の殆どは女性に多く、新型コロナの複数感染症例では重症で、「脳梗塞」や「心筋梗塞」の発症頻度が向上する。
 森下氏は、「後遺症の原因は不明であるが、慢性炎症がその背景にあると考えられる」と予測し、「新型コロナ治療薬から後遺症改善薬への創薬ターゲットの移行」を改めて強調した。
     

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