乳がん疾患啓発イベント「わかる乳がん」~わたしにあった治療の見つけ方~開催 アストラゼネカとキャンサーネットジャパン

 アストラゼネカとNPO法人キャンサーネットジャパンは25日、乳がん疾患啓発イベント「わかる乳がん」~わたしにあった治療の見つけ方~を開催した。
 当日は、乳がん患者やその家族をはじめ、乳がんについて学びたい約500名がオンラインで参加。専門医による講演や乳がんサバイバーの話を通じて、乳がんにおけるさまざまな情報を学んだ。
 同イベントは、清水千佳子国立国際医療研究センター病院乳腺・腫瘍内科 診療科長による「乳がんの基礎知識」と題する講演でスタートした。

清水氏


 清水氏は、乳がんの基本情報に触れつつ、「ステージやがんの性質といった自身のがんの予後や治療効果に関わる情報を知ったうえで患者の価値観に合わせて治療を決める」重要性を強調した。
 加えて乳がんの1割程度が遺伝性であり、そのうち最も多い遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)について解説。「家族のがん情報が自分自身のがんに関係する場合や、本人だけでなく、血縁者が将来的に遺伝的な理由によりがんになる可能性がある」と説明した。
 続いて、乳がんサバイバーで認定NPO 法人マギーズ東京代表、元報道記者・キャスターの鈴木美穂氏は、自らの乳がん治療体験に言及した。

鈴木氏


 鈴木氏は、24歳の若さで乳がんの告知を受け、手術や抗がん剤、分子標的薬などの治療を受けた。その過程での治療選択において、24歳の若さゆえに、将来の妊娠の可能性を残せるような納得のいく治療を探してたくさん悩み、「複数の先生とのに相談により、最終的に自分の納得のいく治療ができた」と報告した。

だいた


 芸人のだいたひかるは、自治体が行う乳がん検診で「乳がんの疑いあり」と診断され、「右胸にしこりがあると言われたものの自覚症状が無かった」経験などについてが語った。乳がんと診断されてショックを受けていた時の主人からのサポートについても、「私がネガティブにならずに前向きに治療に専念できるよう支えてくれた」と家族からの支えが如何に大切かを訴求した。
 また、BRCA遺伝学的検査については、「自分のことを知ることにより、次の一手が打てる」とし、遺伝学的検査を受けることが、より最適な治療の選択に繋がる可能性についても言及した。
 トークセッションでは、乳がん患者さんが情報収集時に感じている困りごとや、遺伝学的検査に関して、女性医療ジャーナリストで自身も乳がんサバイバーである増田美加氏をファシリテーターに迎え、登壇者全員でディスカッションが展開された。
 イベントに先立って乳がん患者および要精密検査を受けた人を対象に実施された調査では、情報収集時の困りごととして「知りたい情報にたどり着くまでに時間がかかった」、「探しても見つからない」という回答があり、さらに情報にたどり着いたとしても「信頼できる情報がどれだかわからない」といった困りごとが上位に挙げられ、治療が多岐にわたる乳がんならではの情報収集の悩みが明らかとなった。


 同アンケート結果に対して鈴木氏は、「今は情報が溢れすぎていて、正しい情報と間違った情報の見分けがとても難しくなっており、情報収集の環境はより複雑化していると感じる」と指摘した。
 清水氏も「情報に振り回されて混乱してしまう患者さんは少なくない」と述べ、「安心できる情報として、国立がんセンターのがん情報サービスや、日本乳がん学会の患者さんのための乳癌診療ガイドライン」を紹介した。
 鈴木氏は、さらに、「自身が代表を務める認定 NPO 法人マギーズ東京の患者からも、正しい情報にたどり着くことが困難であるとの声が多くあがっている」と紹介。
 その上で、「正しい情報を得るためのツールに対するニーズは高いと感じます。正しい情報の入手は命の長さに直結するくらい重要である」と明言し、正しい乳がん情報を得られるツールの重要性を訴えかけた。
 ディスカッションでは、乳がんのタイプや性質、遺伝性の乳がん(HBOC)の話題にも触れ、清水氏が「HBOCの最終的な診断においては、BRCA 遺伝子変異の有無を確認する検査が必要だが、遺伝学的検査を受けるかどうか決めるには、そのメリットやデメリット、検査の限界について十分なカウンセリングを受ける必要がある」と強調した。
 その一方で、要精密検査の方と乳がん患者を対象に行った調査では 4 割以上の人がBRCA遺伝学的検査を「知らない」と回答しており、同検査の認知度の低さが示された。加えて「BRCA 遺伝学的検査」を実際に受けたことのある患者の回答では、医者の説明を理解できた人は87%と高い数字であったが、それでも43%の人が「検査を受ける事に不安を感じた」という結果が出ていた。


 BRCA遺伝学的検査について、だいたは、「家族が知ってしまうことになるので、とてもデリケートな話だと思う。だが、検査によりがんの可能性が高いことを知れば、予防をすることもできる」と述べ、ポジティブな気持ちでBRCA遺伝学的検査を受けた経験を話した。
 鈴木氏は、「自分が乳がんになった年齢が若かったということを考えると、娘のためにも今後、遺伝学的検査をしたほうがいいのかなと考えるようになった」と、家族の健康管理のために遺伝学的検査を受けるという考えを披露した。
 遺伝学的検査については、さまざまな考えがあるため、患者が納得のいく決定をするためには情報を理解し、患者自身の価値観で決めていくことの大切さが話し合われた。
 トークセッションの最後に、鈴木氏は「専門医や医療施設が監修した、内容の正しさが保証されている情報があれば安心である。乳がんに関する様々な情報がワンストップで入手できるようになることが理想的」と指摘し、だいたは「乳がんと診断されたとき、専門用語を理解するのが非常に困難であった。よりわかりやすい情報があるとよい」との見解を示した。
 乳がんについての情報があふれる現代社会において、専門医の監修により信頼性が担保され、かつ、わかりやすい情報が必要とされていることがあらためて確認された。

 ピンクリボン月間に開催された「わかる乳がん」~わたしにあった治療の見つけ方~イベントは、患者さんの情報収集や医師とのコミュニケーション、一般の方々の乳がんに対する意識など、乳がんを取り巻くさまざまな課題を登壇者と視聴者で共有することにより、「わかる乳がん」LINEアカウントのような乳がんの正しい情報をワンストップで提供できる情報ツールの重要性を改めて認識するイベントとなった。今後もアストラゼネカは、乳がんの疾患啓発活動を通じて疾患に関する正しい情報の訴求と、患者さんのより前向きな治療をサポートできるよう尽力していく。

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