塩野義製薬は16日、新規シデロフォアセファロスポリン抗菌薬FETCROJAについて、英国の国民保健サービス(NHS England and Improvement:NHSE&I)との契約締結により、サブスクリプション型償還による支払いが開始されたと発表した。
薬剤耐性(AMR)は、グローバルでの重要な課題となっている。AMR領域においては、新規AMR治療薬の使用を薬剤耐性菌感染と確認あるいは強く疑われる症例に絞るなど、抗菌薬適正使用の考え方を浸透させることで、新たな耐性菌発現を極力防止するとともに、広範なサーベイランス試験を実行し当該薬剤に対する耐性菌の発生をモニタリングする必要がある。
結果として新たな抗菌薬を継続して創出するだけでなく、維持するための収益体制の確保すら困難となり、多くの企業が抗菌薬開発から撤退、もしくは規模縮小を余儀なくされた。
そこで、抗菌薬の市場を実効性のある持続可能なものにするには、上市に対する財政的支援などを実施するプル型インセンティブの導入が重要であると考えられている。
今回、英国が開始したサブスクリプション型の償還は、抗菌薬の処方量と切り離して、国が開発企業に対して固定報酬を支払う代わりに、必要なときに抗菌薬を受け取ることができる制度だ。
FETCROJAは2020年12月に本制度に採択されて以降、NICEによる医療技術評価が実施され、今回正式にNHSE&Iとの契約を締結した。
同契約締結により、塩野義製薬は3年間の支払いを受け取るとともに、さらに最大7年延長するオプションが付与される。
同社は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、研究開発、製造、販売に加え、感研究開発支援基金への参加2や新たな保険償還システムの提案等、幅広く感染症に対する取り組みを進めている。
なお、同件が2023年3月期連結業績に与える影響は軽微である。