ヒトマイクロバイオーム研究の信頼性を高める「推奨分析手法」と「ものさし」を確立 製品評価技術基盤機構 

腸内細菌等の微生物を利用した新たな医薬品や食品等の研究開発加速

 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)は、本年1月13日より提供を開始したバイオテクノロジーセンター(NBRC)の「NBRCヒト常在微生物カクテル」が、ヒトの体に生息する微生物の集団「微生物叢」(ヒトマイクロバイオーム)解析により取得した試験データの妥当性を評価するための「ものさし」となる参照用サンプルとして、高精度、高品質であることを実証した。
 この研究成果は、産業技術総合研究所(産総研)など5つの研究機関との共同研究によるもので、医薬品業界、食品業界等でのヒトマイクロバイオームを活用した研究開発の加速に貢献すると同時に、わが国の産業競争力強化に寄与する。研究論文は、2日に国際学術誌「Microbiology Spectrum」にオンライン掲載された。
 近年、ヒトマイクロバイオーム解析を基にした新たな医薬品や食品等の創出が期待される一方で、解析手法や作業者の違いにより、得られたデータの信頼性や相互比較性が乏しいことが課題となっている。


 NITEでは、この課題を解決するため、ヒトマイクロバイオーム解析の標準的な“方法”として「推奨分析手法」(SOP)を、また解析の手順や結果が妥当かどうかを確認するための“ものさし”として参照用サンプル「NBRCヒト常在微生物カクテル」 を開発してきた。
 今回、産総研、日本マイクロバイオームコンソーシアム(JMBC、九州大学など5つの研究機関との共同研究により、「NBRCヒト常在微生物カクテル」が参照用サンプルとして高精度、高品質であることが実証された。
 具体的には、SOPを用いて「NBRCヒト常在微生物カクテル」の特性値が精密に検証されたほか、5機関がそれぞれの試験所で「NBRCヒト常在微生物カクテル」を用いた試験を実施し、“各機関がSOPを正しく実践できているか”、“他の分析手法がSOPと同程度の精度を示す方法であるか”を判別できることが証明された。
 「NBRCヒト常在微生物カクテル」の品質実証により、ヒトマイクロバイオーム解析の信頼性、相互比較性を確保するために必要な“方法”と高品質な“ものさし”が確立された。
 「NBRCヒト常在微生物カクテル」は、日本人のヒトマイクロバイオームを模しており、日本における新たな医薬品開発や食品開発に貢献すると同時に、ヒトマイクロバイオーム解析の基盤技術開発から標準化、実用化に至る一連の研究を加速し、わが国の産業競争力のさらなる強化に寄与する。

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