世界初の原発不明がん治療薬「オプジーボ」登場の意義を強調 近大医学部内科学腫瘍内科部門中川和彦教授

原発不明がん治療研究の世界的契機に

中川氏

 小野薬品は19日、同社東京ビルで「原発不明がんに対する世界初の治療薬登場」をテーマに、メディアセミナーを開催。原発不明がんを対象にオプジーボの医師主導治験(NivoCUP試験)を主導した中川和彦近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門主任教授が、同がんの病態や疫学、治療上の課題と今後の展望、NivoCUP 試験について講演した。
 その中で中川氏は、「昨年12月24日、オプジーボが原発不明がんに対する承認を取得した意義は非常に大きい」と断言。まず、「原発不明がんは、保険承認の対象として国が認めた疾患となった。これまで治療法が確立されていなかった同疾患に対するオプジーボの承認は、患者さんにとって朗報である」と訴求した。
 さらに、「これまで、国内外で原発不明がんに対して薬剤承認を試みる活動は全くされて来なかった。その中で、生物学的特性は何なのか、どの薬剤が有効なのかを科学的に評価し、現実のデータを積み重ねてオプジーボの承認を取得した」と説明。
 その上で、「この承認を通して、原発不明がんが、薬剤開発の研究対象となることを国内外の研究者に伝える良い好機となった」と述べ、今回の承認取得に対する意義を強調した。
 原発不明がんは、「十分な検索にも関わらず原発巣が不明で、組織学的に転移巣と判明している悪性腫瘍」と定義されている。全がん種の1~5%を占め、国内の患者数は7000人程度と推定されているものの実数は明らかではない。
 原発不明がんは、推定される原発巣に準じた特異的な治療の適応となる「予後良好群」(15~20%)と、標準治療が確立されていない「予後不良群」(80~85%)に大別される。
 また、診断時に既に進行・転移している病態であり、複数臓器に転移が認められる患者が全体の半数以上を占め、生存期間の中央値(100人中なら50番目の人が亡くなる時期):約6〜9ヵ月、5年生存率は2~6%と極めて低く、予後の悪い生命に重大な影響のある重篤な疾患である。
 原発性がんか原発不明がんかの判別については、「例えば、肺がんの臨床では、胸部X線写真を見ればすぐに判る。他の部位のがんも同様である」(中川氏)。
 原発不明がんの主な転移臓器は、リンパ節42%、肺26%、骨29%、肝臓33%、胸膜11%、脳6%、副腎6%など。転移臓器数は、1箇所41%、2箇所29%、3箇所18%、4箇所12%。
 病理解剖で同定された原発巣は、肺20%、膵臓17%、肝臓・胆道系6%、腎臓・副腎6%、生殖器5%、腸管5%、胃4%、膀胱・尿管1%、乳腺1%。
 原発巣が特定されない原因は、「原発巣が成長する早い段階で転移を起こし、さらに原発巣が消退(精巣発生の胚細胞腫瘍など)」、「潜在的ながんの発生素地が原発巣以外にも存在」、「検査で検索困難な部位に原発巣が存在(小腸癌、虫垂癌など)」、「診断時に広い範囲に病変が広がり、原発巣を同定することが困難(膵臓癌、胆道癌など)」などが考えられる。
 診断・治療では、「治癒可能な患者群、予後良好な患者群を見落とさない」、「たとえ原発巣がなくても、臨床的にあるがん種からの転移を強く疑えば、そのがん種に基づく治療を行う」、「過剰な検査により治療開始を遅らせない」ーが原則となる。
 中川氏は、「臨床像、病理学的評価から原発不明がん全体の15〜20%を占めるので、治癒可能な患者群、予後良好な患者群を確実に抽出することが重要である」と訴えかける。
 原発巣検索に費やすべき期間は、「1ヵ月以内に原発巣検索を行い、それでも原発巣の同定ができない場合は、原発不明がんとして治療を開始することを推奨する。1〜2週間の初期評価で原発巣が同定できない場合は、早期にがん専門施設への紹介を推奨したい」と話す。
 原発不明がんの治療は、予後良好群(15〜20%)には、「女性+腺がん+腋窩リンパ節転移のみ」、「女性+漿液性腺がん+腹膜転移のみ+CA125上昇」、「男性+腺がん+造骨性骨転移のみ+PSA上昇」、「扁平上皮がん+頸部リンパ節転移のみ」、「扁平上皮がん+鼠径リンパ節転移のみ」、「神経内分泌腫瘍」、「男性(50歳未満)+病変が正中線上に分布+低・未分化がん」の条件があり、ガイドラインで推奨された治療を実施する。
 予後不良群(80〜85%)は、予後良好群の条件に該当しない病態で、化学療法(プラチナ併用化学療法)、臨床試験、BSCを実施するものの標準治療は確立されていない。
 予後不良群に対する治療は薬物療法が主体となるが、これまで原発不明がんに対して国内外で承認された薬剤はなく、標準治療が未だ確立されていないため、薬剤の開発が切望されていた。
 こうした中、中川氏の主導の下、原発不明がんを対象にオプジーボを評価した医師主導治験(NivoCUP試験)が実施された。
 NivoCUP試験(n=56)において、主要評価項目である化学療法既治療例における奏効率(中央判定)は 22.2%(95%信頼区間:11.2-37.1)を示し、信頼区間の下限値が事前に設定した閾値奏効率 5%を超え、同試験の主要評価項目を達成した。
 また、治療歴の有無を問わない全体集団における奏効率(中央判定)は 21.4%(95%信頼区間:11.6-34.4)であり、治療歴を問わずオプジーボの抗腫瘍効果が示された。
 主な副作用(5%以上)は、甲状腺機能低下症 16.1%、発疹16.1%、そう痒症10.7%、下痢 8.9%、AST増加7.1%、好中球減少症5.4%、甲状腺機能亢進症 5.4%、肺臓炎5.4%など。
 中川氏は、原発不明がんのオプジーボ投与について、「できるだけ早い方が良い」とした上で、「効率よく診断するには、腫瘍内科のない中核病院では、どの診療科が原発不明がんを診るのかを決定する必要がある」と提案。さらに、「当該診療科では、原発不明がんの可能性を常に考えて診断を行わねばならない」との考えを示した。
 最後に中川氏は、原発不明がんに対する今回のオプジーボ承認の意義について言及し、「原発不明癌に対して世界で初めて抗悪性腫瘍剤が承認された」、「原発不明癌が薬剤承認の対象疾患となった」、「原発不明癌が開発治験の対象となった」、「世 界 で 唯 一 の 原 発 不 明 癌 に 対 す る 承 認 薬 剤 、オプジーボの誕生」を挙げた。


  

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