米国で入院患者対象に新型コロナ治療薬前期P 2 相試験開始アンジェスとVasomune社

 アンジェスとカナダのバイオ医薬品企業Vasomune社は19日、新型コロナ治療薬「AV-001」について、米国で重度の新型コロナ感染症入院患者を対象に評価のための前期P2 相試験を開始したと発表した。
 アンジェスとVasomune 社が共同開発している AV-001 は、Tie2受容体を標的とする新規ペグ化ペプチドで、血管系を正常な状態にするためのアンジオポエチンおよびTie2のシグナル伝達経路を活性化するように設計されている。
 この前期P2相臨験は、重度のCOVID-19入院患者に対して、二重盲検、標準医療を行うプラセボとの比較対照で、一日の AV-001 実薬投与量を12.5μg/kg、25μg/kg および 56 μg/kg に振り分けて投与し、その結果を評価するもの。
 なお、目標集積症例数は約120例で、実施施設は 15 施設を予定しており、米 国から開始し、続いて南米でも実施する。

◆Vasomune社社長兼CEO のDouglas A. Hamilton氏のコメント
 この臨床試験開始は、罹患された方々および医師に、新規変異株を含む重度のCOVID-19に対する新たな治療方法を提供できる可能性があるという意味で、共同開発者であるアンジェス社および当社にとって重要なステップとなる。
 我々は、Tie2 シグナルの回復によって、内皮の安定性を促進し、防御壁の強化や血管の漏出を阻止することで、重度の COVID-19 罹患者の治療成果を大幅に向上できると期待している。

 AV-001は、トロントのサニーブルック病院内の研究所(Sunnybrook Research Institute)で発見・デザインされたもので、アンジェスとVasomune社の共同開発契約に基づき臨床試験が進められている。AV-001 は、Tie2-アンジオポエチンシグナルを活性化させ、その下流の複数の経路に働きかけることで、血管機能を正常化させ、血管内皮バリアを回復させる。
 新型コロナ感染症やARDS(急性呼吸窮迫症候群)などの患者では、特に高血圧、糖尿病および肥満などの血管合併症を伴う場合、血管機能障害が認められている。
 最近の知見によれば、SARS-CoV-2ウイルスが肺内皮細胞に感染して微小血管透過性が亢進すると、血管バリアの変化、凝固状態の亢進、血管内皮の炎症を誘発することで、新型コロナ感染症患者における呼吸窮迫を引き起こし、次第に増悪させることが示唆されている。
 致死性RNAウイルス感染によるインフルエンザの動物モデルを用いた前臨床試験において、AV-001は内皮細胞のタイトジャンクションを狭め、血管バリア機能を回復させ、血管透過性亢進をブロックして、血管機能を正常化させることが示されている。
 AV-001単剤療法では、未治療の対照群と比較して生存期間と肺機能が有意に改善されるが、抗ウイルス療法との併用により有効性はさらに増強されるという利点が示された点も重要である。こうした研究成果により、AV-001は、重度の新型コロナ感染症およびARDSの治療薬として開発されている。

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