2025年度までの経営方針「Forging the future 未来を拓く」策定 三菱ケミカルホールディングス

田辺三菱製薬の新型コロナVLPワクチンは来春に国内承認申請

ジョンマーク・ギルソン 氏

 三菱ケミカルホールディングスは1日、東京都内で経営方針説明会を開催し、2025年度までの経営方針「Forging the future 未来を拓く」を策定したことを明らかにした。
 説明会で会見したジョンマーク・ギルソン社長は、「効率性を追求した事業運営と事業の成長力を引き出す明確な戦略のもと、全てのステークホルダーにとっての価値の最大化を目指す」と明言。
 田辺三菱製薬の事業運営に関しては、「ファーマビジネスとして今後も継続して運営して行き、世界中で拡大していく」考えを強調した。
 その上で、最も利益貢献の高い新製品として田辺三菱製薬子会社のメディカゴ社が開発する新型コロナVLPワクチン(MT2766)を挙げ、「カナダは12月中旬、 日本は来春に承認申請する 。カナダ日本以外では、ニーズに合わせて、米国やイギリス、EUでの展開(申請)を検討している」と説明した。
 三菱ケミカルホールディングスの2025年度主要財務指標目標は、EBITDAマージン18~20%、コア営業利益率11~13%、EPS(非経常要因除く)125~145円、ROC>7%、Net Debt/Equlty0.5~1.0%
 ギルソン氏は、経営戦略における最重要ポイントとして、「市場の成長性、競争力、サステナビリティにフォーカスしたポートフォリオ」、「分離・再編し、独立化を進める事業」、「グループ全体におけるコスト構造改革」、「戦略遂行のためのスリムな組織」、「戦略的なキャピタル・アロケーション」を列挙した。
 三菱ケミカルホールディングスに600もの法人が存在する現状にも言及し、「コストが非常に大きくなっている。会社全体で共通性をもたらす必要があるため、社名を変更しなけらばならない」と訴えかけた。
 こうした中、田辺三菱製薬については、「ファーマビジネスとして今後も継続して運営していく。世界中で拡大して行きたい」と断言した。
 2025年までのロードマップにおける「成長に向けた基盤の構築」(2023年~2024年)では、その施策の一つとして、「田辺三菱製薬の一層の価値向上施策」を掲げている。ギルソン氏は、そのための具体的な推進力として、北米での4つの主要パイプラインを紹介した。
 同氏が最も期待を寄せるのが、新型コロナVLPワクチンで、「現在、P3試験の分析結果を終えようとしており、大変有望なものになりそうだ。独立データモニタリング委員会は、進行中のP3試験を変更することなく継続するように勧告している」と報告。
 さらに、「カナダでは12月中旬、 日本は来春に承認申請する 。カナダ日本以外では、ニーズに合わせて、米国やイギリス、EUでの展開(申請)を検討している 」とスケジュールを明かし、「ワクチンは、3~4年以上に渡って大きな利益を生み出す」と明言した。
 MT1186は、ALS治療薬ラジカヴァ経口剤で、2022年上市を予定している。紫外線過敏症治療薬のMT7177は、免疫療法のプラットフォームの一部で、2023年上市予定だ。
 ND0612は、イスラエルの子会社が開発したパーキンソン病治療のための医療機器タイプの新製品で、数年での上市を予定する。
 ヘルスケア部門についてギルソン氏は、「三菱ケミカルホールディングスに入って既存のビジネスやパイプラインを理解して、当社の収益性を長期的に高めるための方法についてかなりの時間を費やしてきた」と打ち明ける。
 その上で、「我々のパイプラインは堅実で、日本、イスラエル、米国、カナダの強力な創薬チームによって生み出された」と説明し、2025年度時点での4新製品の売上貢献額として「1300億円以上」を予測した。

 また、子会社のLSII(生命科学インスティテュート)が開発するMuse細胞にも言及した。Muse細胞は、骨髄、末梢血などのあらゆる臓器結合組織に存在する多能性幹細胞で、腫瘍化リスクが非常に低い。LSIIでは、Muse細胞を用いた再生医療(修復医療)として、脳梗塞、心筋梗塞、脊髄損傷、ALS、新型コロナ感染症に伴う急性呼吸窮迫症候群などを対象疾患とした臨床試験に取り組んでいる。
 ギルソン氏は、「日本での限定的な条件および期限付きの承認申請を取りやめる」と断言。その理由を「日本での条件付き申請では二重盲検法を行わないので、米国や英国市場でのポテンシャルが大きく制限される」と説明し、「準備が整った段階で完全なP3試験に向けて取り組んでいく。ただし、10年以内にMuse細胞が当社の収益に貢献することは期待できない」との見通しを示した。


  

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