‟卵巣がんとうまく付き合う”ための疾患啓発オンラインイベント開催  アストラゼネカとキャンサーネットジャパン

左から増田氏、栗原氏、吉田氏、藤原氏

 アストラゼネカとキャンサーネットジャパンは14 日、卵巣がん疾患啓発イベント「わかる卵巣がん ~卵巣がんとうまくつきあうには?~」を共同開催した。当日は、卵巣がん患者やその家族、がんに関心のある一般の人々約 200名がオンラインで参加し、専門医による‟卵巣がんに関する説明”や、‟がんサバイバーの診断”など治療に関する実体験を通じて、卵巣がんにおけるさまざまな情報を学んだ。
 さらに、患者の情報収集や医師とのコミュニケーションにおける困難、一般の卵巣がんに対する意識の低さなど、卵巣がんを取り巻くさまざまな課題を参加者と共有。加えて、「わかる卵巣がん」LINE アカウントのような、卵巣がんの正しい情報をワンストップで提供できる情報ツールの重要性を改めて認識するイベントとなった。

藤原氏


 その中で、大阪医科薬科大学 医学部 産婦人科学教室の藤原聡枝氏による「卵巣がんの基本的な事項に関する講演では、「卵巣がんは自覚症状が出にくく、確立された検診もないことから、進行した状態で発見されることが多い」との説明。
 さらに、卵巣がんの治療やリスク因子についても言及し、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)において、どのように情報を家族と共有するかは遺伝カウンセリングを受けながら相談する必要があるが、遺伝子の特徴を知ることで患者本人だけでなく、家族のリスク対策にも目を向けることができる」と遺伝子検査の意義を訴求した。

吉田氏


がんと働く応援団代表理事の吉田ゆり氏は、自身が卵巣がんと診断された時の心境について発表した。「その際には、がんショックとなり、卵巣がんの患者ブログや医療論文などを見ても、どの情報を信じて良いかもわからず苦労をした」と紹介。
 さらに、「どこに指針を置いて情報を調べて良いか分からなかったし、自身が活動する患者会でも情報収集に困ったという声がとても多い。知識のないゼロベースの人でも理解できるような分かりやすい情報提供のあり方が必要である」と訴えかけた。

栗原氏


 料理家で乳がんサバイバーの栗原友氏は、HBOCの遺伝子検査を受け、乳房と卵巣、卵管の予防切除に至った経験を話した。栗原氏は、トリプルネガティブという種類の乳がんであることが分かり、HBOC 診断のために検査を受けた。検査の結果、遺伝的に乳がんや卵巣がんになりやすいことが分かり、がんが見つかった左胸だけでなく右胸も切除、卵巣がん発症に備えて卵巣と卵管の摘出手術を受けている。
 「検査で自分のことを知り、備えたいと思った。さらに、今後がんになる不安を少しでも取り去りたいという気持ちが予防切除をした大きな理由だった」と振り返る栗原氏。その上で、「検査によって将来的ながんのリスクを知り、自分に合った治療選択をすることの大切さ」を強調した。

増田氏


 トークセッションでは、「卵巣がん患者が情報収集時に感じている困りごと」や、「主治医とのコミュニケーションのあり方」に関して、女性医療ジャーナリストで自身も乳がんサバイバーである増田美加氏をファシリテーターに迎えて、前述の登壇者全員でディスカッションを展開した。

 イベントに先立って実施された卵巣がん患者の意識調査でも、62%の患者が「情報収集において困ったことがあった」と回答しており、具体的には「信頼できる情報がどれかわからなかった」、「いろいろなサイトに見に行かなければならなかった」と挙げている。
 視聴参加者から寄せられた「がんと診断された際に最も欲しかった情報は?」という質問に対して吉田氏は、「がんに対する知識が無い人でも理解ができるような、読みやすい情報が欲しかった」と明言。
 加えて「専門医からこの情報を見ると良いといったお墨付きがあれば、いろいろな情報を探すことなく、理解することに集中できたのではないか」と回答し、「医師の監修がある信頼できる情報が、ワンストップで入手できる情報ツールがいかに必要とされているか」を強調した。


調査では、情報収集の困難に加えて54%の患者が「専門用語が難しく、治療説明がその場ですぐに理解できなかった。担当医師に質問や相談するのを躊躇した」と回答。医師とのコミュニケーションに苦労している多くの卵巣がん患者の存在が明らかになった。
 これに対し栗原氏は、「聞きたいことはメモをして、全てを医師に聞いた。医師だからといって、気持ちを汲み取って何でも教えてくれるわけではないし、自分の病気のことは自分で責任を持って把握する必要がある」と断言。「医師と良い関係を構築しながら、積極的に質問をして疑問を解決した」経験を披露した。
 また、藤原氏も「患者さんが治療と向き合うためには、自身の治療方針に納得することが求められる。従って、患者さんには納得するまで遠慮なく医師に相談してもらいたいし、医師側も患者さんが十分理解できるよう、分かりやすい説明を心掛ける必要がある」との考えを示した。
また、同イベントに参加した‟卵巣がん治療経験者”からのアドバイスも紹介。多く寄せられたメッセージとしては、「何か異変があったら躊躇せず婦人科を受診することが大事」、「卵巣がんは検診での発見が難しい。従って、いつもと違う婦人科の症状があったらすぐに医療機関を受診して欲しい」などがあった。
 トークセッションの最後に増田氏は、「2人に1人ががんになると言われている現在、がんを自分ゴトとして捉え、女性であれば卵巣がんリスクにも意識が向くようになればと思う」と総括した。

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