経口投与の新型コロナ治療薬の国内P2/3相臨床試験開始  塩野義製薬

 塩野義製薬は28日、経口投与の新型コロナ感染症治療薬として開発中のS-217622について、国内P2/3相臨床試験を27日より開始したと発表した。
 S-217622は、北海道大学と塩野義製薬との共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬である。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有しており、S-217622は3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制する。
 SARS-CoV-2感染動物を用いた非臨床試験において、ウイルス量を速やかかつ有意に低下させることが確認されている。
 同治療薬は、2021年7月より国内P1相臨床試験を開始し、現時点で、安全性上の大きな問題は認められておらず、薬物動態についても、目標とする血中薬物濃度を上回る良好な結果が確認されている。
 同臨床試験では、軽症の新型コロナ感染症患者または無症候の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者を対象に、プラセボ投与群を対照として、同治療薬を1日1回、5日間経口投与した際の有効性および安全性を評価する。
 昨今の医療体制下においては、軽症の新型コロナ感染症患者または無症候の感染者は、自宅療養または宿泊療養が中心となっているため、同臨床試験では、治験実施医療機関の協力のもと、医療機関での実施に加えて、医師や看護師の派遣による宿泊療養者なども対象とした治験を実施する。
 新型コロナ感染症は、感染初期に軽症や無症候であっても、後に急速に症状が進行することが報告されています。また、同臨床試験ではプラセボ投与群も設けられているが、通常の臨床試験と同様に被験者に対しては、試験期間中、医師や看護師による十分な医療サポート下で診察や検査が行われる。
 現在、国内では軽症の新型コロナ感染症患者の治療法として、抗体医薬が承認されているが、現状は、重症化リスク因子を有している患者が対象であり、点滴と患者の観察に一定の医療リソースが必要となることから、広く使用される状況には至っていない。
 医療体制が逼迫している状況下では、現在の治療法だけでは医療側の負担も大きいため、感染の初期段階から体内のウイルス量を低下させ、かつ簡便に使用できる経口投与の抗ウイルス薬が必要とされている。
 S-217622は、経口薬であり、その利便性の高さから患者さまの早期治療ならびに医療体制の維持および安定化への貢献が期待される。
 塩野義製薬では、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めている。
 新型コロナ感染症が世界的な脅威として人々の生活に大きな影響を与える中、同社はパンデミックの早期終息による社会の安心・安全の回復に貢献するために、同治療薬の開発に引き続き注力していく。
 なお、同件が2022年3月期の連結業績予想に与える影響に関しては、今後、状況に応じて精査する。

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