第54回日本薬剤師会学術大会(福岡) 多様性を可能性に 未来に広がる薬剤師

 今回の大会は、全てウェブ開催となりました。プログラム集の日程表から2日間の予定を確認し、マイスケジュールを組みました。いつも配慮する動線は気にせず、興味を持つ演題を選び、開会式から分科会まで10時間のプログラムを視聴しました。
 その中で分科会2薬剤師の臨床研究~着想から発表~についてまとめてみようと思います。

W2-1 エビデンスに基づく薬剤師業務 現状と目指す姿(日本薬剤師会副会長)宮﨑長一郎氏
 
 薬剤師の臨床研究と聞くと現場の薬剤師とは縁遠いものと感じられるが、「目の前に悩む患者の中に明日の医学の教科書の中身がある」と述べられているように「明日の薬学の教科書の中身は、目の前の患者さんとのやりとりの中にある」はずと、印象的な説得力ある言葉で講演が進みました。
 薬局薬剤師の臨床の入り口は「自分の薬局に来ている患者さんの腎機能の程度、HbA1cの数値はどれぐらいだろう」と考えることであり、観察を数値化することがまずは大事なことです。
 薬局関連の過去の研究誌から、医薬分業、在宅医療、疑義照会などの報告が確認されており、また複数医療機関受診患者の一元管理、検査値の収集や活用、がん薬物療法のフォローアップに関する報告、薬剤師介入の効果を示した報告などもあります。これらから見るとエビデンスがないわけではなく、エビデンスを把握し、活用することが十分ではないことがわかります。
 薬局薬剤師が研究雑誌を読む程度が足りなく、そのため広がりや研究が足りない現状です。それらの改善が薬剤師業務のレベル向上を目指す方策と考えます。

W2-2 薬剤師に必要な研究倫理について(日本薬剤師会臨床・疫学研究推進委員会委員長)山本康次郎氏

 倫理とは社会慣習として成立している行為規範で「人が行動する際の規範となるものであり、日常生活の倫理はすべて幼稚園の砂場で学んでいる(ロバート・フルガム)」とあり、薬剤師としての倫理は薬学教育とその後の薬剤師としての生活の中で身につけるものです。
 研究に関与しなければ、研究倫理の必要性を感じないかもしれませんが、薬剤師には研究活動が必要であり、研究者社会の慣習として成立している行為規範の必要性を認識していただきたいと考えます。
 また、薬剤師が関わる研究は人を対象とする生命科学・医学系研究に該当する場合があり、より限定された規範も求められます。日本学術会議は「科学は合理と実証を旨として営々と築かれる知識の体系であり人類が共有するかけがえのない資産」と述べており、研究者はその資産価値を保証するための倫理的配慮が求められています。
 過去に報道された存在しないデータをでっちあげる(捏造)、他人のアイデアをまねする(剽窃)盗む(盗用)など、科学の成果や研究者の行動に対する信頼性を失わせる行為があってはなりません。
 また、利益相反を管理することが求められています。営利団体から経済的支援を受けることは禁止されてはいませんが、研究成果に疑いが持たれてはいけません。人を対象とする生命科学・医学系研究においては研究成果が医療に応用されることによって、生命に関わってくること、研究成果が経済的利益につながる可能性があることから、「ヘルシンキ宣言」を基本とし厳格に管理されています。
 医学医療は常に新しい知識・技術が求められ、研究活動が必須であり、研究者の倫理を理解し、新しい研究をしていく必要があります。

W2-3 研究テーマの設定と研究計画の立案(東京理科大学薬学部教授)鹿村恵明氏

 薬局薬剤師の臨床研究は「薬局の日常業務のなかで疑問を抱いたものや、この理由はこれが原因ではないかと思ったことについて仮説を立て、それを検証することであると言える。研究は、ウェット研究とドライ研究に分けられる。
 ウェットは動物や細胞等を使用して行い、ドライはアンケート等の調査を実施する研究である。薬局日常業務の中の疑問が直接ドライ研究につながる。これらの結果がエビデンスとなりうる」
 実際の研究は、まず薬局の現場で生じた疑問クリニカルクエスチョンから研究テーマを決めます。次にクリニカルクエスチョンをリサーチクエスチョンに変換し、現場の疑問を調査できる形に整理します。そして研究テーマに関する論文を検索します。
 現在そのテーマがどこまで研究されているかを知る必要があります。研究する意義や新規性を考えることが重要で、最後に研究デザインをします。研究の立案後は研究倫理審査を受け、研究実施、発表となります。

W2-4では研究倫理審査について、W2-5では成果発表についての講演がありました。

 これまで研究グループに入れていただいたことがありましたが、自分がイニシアチブを取る経験はありませんでした。先生方の熱いご講演を聴き、これからの仕事に研究という項目を作り上げ、研究に取り組む意欲のある薬剤師を育てる必要性を感じました。
 来年は現地参加して他県の薬剤師の熱意にも触れたく思います。

薬剤師 宮奥善恵

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