コロナ第一波では定期通院患者の38%で受診頻度減少  東京医科大学公衆衛生学分野が調査結果

「医療機関での感染恐怖」払拭が治療中断や病状悪化予防に重要

 東京医科大学公衆衛生学分野の小田切優子講師ら研究チームは18日、昨年5月に日本人男女2400人を対象にインターネット調査を実施した新型コロナウイルス流行下での受療行動の変化について調査結果を公表した。


 調査結果によると、「受診頻度が減少した」と回答した人の割合は37.8%で、「医療機関で感染することが恐い」という考えが受診頻度の抑制と有意に関連していた。
 一方、「定期内服ができなくなった」人、「持病が悪化した」人はそれぞれ6.8%、5.6%に留まった。「持病が悪化した」人は、「受診頻度が減少した」人に多く、受診抑制が病気の悪化につながっていた可能性が示唆された。
 同研究は、第一波流行中の受療行動を観察したものだが、その後、受療行動がどう変化しているのか注視すると共に、必要以上の受療抑制が起こらないような対策が必要と考えられる。
 これらの研究成果は、本年3月16日にプライマリケア学会の英文雑誌であるJournal of General and Family Medicineで発表された。
 同研究の詳細は、次の通り。
【研究の背景】
 新型コロナウイルス感染症の第一波流行中で、緊急事態宣言の解除が検討され始めた昨年5月、関東地方在住の20~79歳の男女2400人を対象に、医療機関の受療状況に関するインターネット調査を行った。 対象者に「受診頻度の減少」、「定期内服切れ」、「持病の悪化」、「電話・オンライン診療の活用」、そのほか受診に関する要因について回答して貰った。調査対象者のうち新型コロナウイルス感染症の流行前に外来を定期受診しており、内科慢性疾患で通院中の659人について解析を行った。

【同究で得られた結果・知見】
 「受診頻度が減少した」人の割合は37.8%で、「医療機関での感染が怖い」ことや、「東京在住」、「女性」などが受診頻度の低下と有意に関連していた。
 一方で、「定期内服ができなくなった」人の割合は6.8%、「持病が悪化した」人の割合は5.6%であった。また、電話・オンライン診療を活用した人の割合は9.1%。受診頻度が減少した人の割合に比べて、定期内服ができなくなった人の割合が少なかったため、長期処方等で対応が行われていた可能性があある。
 受診に関する要因のうち「医療機関での感染恐怖」は「受診頻度の減少」や「定期内服切れ」と有意な関連を認めていた。さらに、要因間の分析を行ったところ、「受診頻度の減少」した人に、「定期内服切れ」や「持病の悪化」が多かった。

【今後の研究展開および波及効果】
 同研究により、新型コロナウイルス流行下での受療行動の変化が明らかとなった。通院の中断や病状悪化を防ぐためには、受療行動が変化しやすい集団への配慮や、特に「医療機関での感染への恐怖」の払拭・低減に努め、新型コロナウイルス感染症の流行下でも受診を継続しやすい環境を整備することが重要である。

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