長崎県で離島へのドローンによる処方箋医薬品配送実証実験を実施 武田薬品、ANA、長崎大ら

 武田薬品は10日、ANAホールディングス(ANAHD)、長崎大学、五島市などと、長崎県五島市福江島港エリアから久賀島の内陸に位置する久賀診療所へ、Wingcopter社製固定翼VTOL型ドローンにより約10分で処方箋医薬品を配送する実証実験を22日から26日まで実施すると発表した。
 同実証は、NTTドコモ、SkyLink Japan、インテグリティ・ヘルスケア、東七、藤村薬品とともに実施するもので、通常定期船と陸路で45分程度かかる行程を、ドローンにより約10分で配送を完了する。
 今回の取組みにより、離島に住む患者さんが有する通院へのハードル(通院困難等)の地域医療課題解決を目指す。なお、同実証実験は、国土交通省・環境省連携事業「社会変革と物流脱炭素化を同時実現する先進技術導入促進事業(過疎地域等における無人航空機を活用した物流実用化事業)」に採択されている。

 同実証実験のシナリオ構成および概要、各社の主な役割は次の通り。

◆シナリオ構成
シナリオ 1:オンライン診療モデル
 患者が自宅でオンライン診療・オンライン服薬指導を受けた後に処方箋医薬品の自宅配送を実施
シナリオ 2:緊急配送モデル
 医薬品卸から医療機関への緊急配送を想定したドローン配送を実施

ドローン配送航路 福江港(左)→久賀島(右)

◆実証実験概要
(1)実証実験期間 : 2021 年 3 月 22 日〜26 日
(2)飛行区間:長崎県五島市福江島港〜久賀島 片道 約 16km (直線距離:約 12km)
(3)運搬物:処方箋医薬品(医薬品)
(4)対象者:住民等
(5)実証内容:インテグリティ・ヘルスケア社が提供するオンライン診療システムである YaDocQuick を用い、オンライン診療およびオンライン服薬指導を実施する。服薬指導に基づく処方箋医薬品のドローン配送の実施(シナリオ 1)および医薬品卸による医薬品のドローン配送(シナリオ 2)について実証を行う。
(6)久賀島について:久賀島は、人口185世帯305人(令和2年11月末時点、五島市住民台帳より)が暮らす、島全体が世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産となっているU字型の島で、U 字型に続く山間の地形を避けるように、島内に 14 の集落が点在。福江島の対岸に定期船が発着する田ノ浦港があり、福江島から日に 5 便定期船が通う。港から山を越えた島の中心に小中学校、郵便局、診療所、商店などが位置し、医薬品等の配送等の際には、診療所の職員が港まで荷物を取りに行く。島内には 14 の集落が点在しており、それぞれ診療所等へ通う際の島内の陸路移動が高齢化(久賀島の高齢化率 58.4%、同住民台帳より)とともに課題となってきている。

◆各社の主な役割実証実験実施者:
ANAHD:ドローンの遠隔運航管理、配送通知を含む配送管理システム、実証総括
武田薬品:ドローンを活用した処方箋医薬品および医薬品流通シナリオの策定、医薬品卸の調整
長崎大学:久賀診療所、長崎県五島中央病院、ニック調剤薬局でのオンライン診療・服薬指導とドローンによる薬剤・検体輸送に従事する医師・看護師・薬剤師の合意形成・意見調整。
五島市:市営診療所医師および職員の協力、現地官公庁および船舶事業者等の調整実証実験協力者
NTT ドコモ: ドローンの上空飛行に係る LTE ネットワークの提供、および docomo skyによる、上空の電波状況を考慮した運航計画の策定支援
SkyLink Japan:機体及びシステム提供、パイロット訓練、運航サポート、飛行申請サポート
インテグリティ・ヘルスケア:オンライン診療/オンライン服薬指導システム「YaDocQuick」の提供
東七:医薬品及び処方箋医薬品の運搬
藤村薬品:医薬品及び処方箋医薬品の運搬

 なお、ANAHDでは。航空機の安全運航に関する知見を活かし、ドローンオペレーターとして、五島市や福岡市にて無人地帯での補助者なし目視外飛行(レベル 3)による実証実験を行う等、2022 年度のレベル 4 解禁を目処としたドローン配送サービスの事業化にむけて、継続して検証を実施している。
 今回の実証では、ANAHDとして初めて固定翼型 VTOLの運航を行うため、SkyLink Japan 協力の元、プロジェクトメンバーが訓練を受け、固定翼型VTOL の運航を行う。

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