固形がんへのT細胞誘導療法進展等目的にMaverick 社買収  武田薬品

 武田薬品は10日、非上場のバイオテクノロジー企業の米国Maverick社を買収するオプション権を行使したと発表した。同買収は、固形がんに対するT細胞誘導療法のさらなる進展、および新規のがん免疫療法のポートフォリオ拡大を目的としたもの。
 将来の買収オプション権を含めた複数年の「build to buy」の提携において、一定の調整をすることを前提に一時金およびマイルストン支払いを含め最大5億2500万米ドルでMaverick 社を買収するオプション権を武田薬品が行使する。
 Maverick 社は、一定の条件下で活性化される二重特異性T細胞誘導療法を開発している。
 同契約に基づき、武田薬品は、Maverick社のT細胞誘導抗体の基盤技術であるCOBRAと、Maverick社の主力開発候補薬であるTAK-186(MVC-101)およびTAK-280(MVC-280)などの広範なポートフォリオを取得する。
 TAK-186(MVC-101)は、現在、上皮増殖因子受容体(EGFR)が発現している固形がん患者を対象としたP1/2相試験を実施中であり、TAK-280(MVC-280)は B7-H3 タンパク質が発現している固形がん患者の治療薬として、2021年度後半に臨床試験を開始する予定だ。同買収の完了後、Maverick社は武田薬品の研究開発組織の一部として存続し、Maverick社の従業員はそこに所属する。
 Maverick社の基盤技術であるCOBRAは、高い特異性と強力な活性により、正常な組織には限定的な毒性にとどめつつ、広範な固形がんを安全に標的とするようデザインされている。
 投与後に全身で活性化される標準的なT細胞誘導療法とは異なり、COBRA で改変されたタンパク質をベースとした治療法では、腫瘍微小環境を活用し、患者さんの正常な組織を傷つけることなく腫瘍部位のみでT細胞性の殺細胞効果を発揮するようデザインされている。
 基盤技術であるCOBRA は、免疫細胞をリダイレクトしてがんを標的とする武田薬品のアプローチを補完するものであり、固形がんにおける有効性を切り開く可能性がある。
 今回の買収は、一定の条件下で活性化されるT細胞誘導療法の開発のために2017年にMaverick社と武田薬品が締結した複数年の提携契約に続くものであり、同該契約において、武田薬品は、株式および5年間の提携後にMaverick 社を買収する独占的オプション権を取得した。
 武田薬品は、同社の現在の株式保有比率や Maverick 社の負債などを含む調整を前提として、事前交渉により定められた契約一時金、および開発、申請、承認などのマイルストン支払いを含め合計最大5億2500万米ドルでMaverick社を買収するオプション権を行使した。
 同買収は、2021 年度第1四半期の完了を予定していますが、米国の1976年ハート・スコット・ロディノ反トラスト改正法を含む独占禁止法に基づく審査完了時期による。
 Christopher Arendt武田薬品のOncology Therapeutic Area Unit  Headは、「当社の研究開発戦略やがん治療の新たなアプローチの追求において、パートナーシップは最重要課題である」と指摘する。
 さらに、「科学の新たな領域に取り組んでいるMaverick 社のような先駆者を支援することで、当社は専門知識、リソースやリスクを共有でき、患者さんに革新的な新薬をより早くお届けすることができる」と明言。
 その上で「Maverick社の最先端の基盤技術である COBRAが当社のがんポートフォリオに加わることは素晴らしいことであり、生物学的製剤を一定の条件化で活性化するように改変する新たなアプローチは固 形がんに対する免疫リダイレクト療法の進展に寄与する」とコメントしている。

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