経口標的治療薬mobocertinib非小細胞肺がんP1/2試験で好結果  武田薬品

 武田薬品は29日、経口標的治療薬mobocertinibについて、転移性非小細胞肺がんを対象としたP1/2試験で臨床的に意義のある奏効や顕著な奏効期間が得られたと発表した。臨床試験の対象疾患は、プラチナ製剤ベースの化学療法歴を有する EGFR エクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がん。
 mobocertinib は、治験責任医師の判定で奏効率35%、独立判定委員会(IRC)による判定で28%が確認され、臨床的に意義のある奏効を示された。また、IRC による判定で奏効期間の中間値で17.5カ月と持続的奏効を示し、承認された標的治療が存在しない患者にとって、更なる治療の進歩が期待できる結果となった。
 同試験結果は、29日(シンガポール時間)に開催される国際肺癌学会の 2020 年度世界肺癌学会議で実施される最新演題オーラルセッションで報告される。
 プラチナ製剤による治療歴を有する患者の解析には、P1/2相試験からプラチナ製剤による前治療を受けたEGFR エクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がん患者を組み入れた。
 すべての患者に対して 160mgを1日1回経口投与しており、得られた主な知見の各パラメータとプラチナ製剤による治療歴を有する患者における結果 (N=114)は次の通り。
 ◆治験責任医師に判定された奏効率(ORR)=35% (40/114; 95% 信頼区間 26-45)、◆独立判定委員会(IRC)に判定されたORR=28% (32/114; 95% 信頼区間 20-37)、◆IRCによる奏効期間 (DoR) の中央値=17.5ヶ月(95% 信頼区間 7.4-20.3)、◆IRCによる無増悪生存期間(PFS)の中央値=7.3ヶ月(95% 信頼区間5.5-9.2)、◆IRCによる病勢コントロール率(DCR)=78% (89/114;95% CI 69-85)
 安全性プロファイルは管理可能であった。5月のデータカットオフ時からのプラチナ製剤による治療歴を有する患者において発現したmobocertinibとの因果関係を否定できない主な有害事象(治療に関連する有害事象(TRAE)20%以上)は、下痢(90%)、発疹(45%)、爪囲炎(34%)、悪心(32%)、食欲不振(32%)、皮膚乾燥(30%)および嘔吐(30%)であった。
 グレード3以上のTRAE(5%以上)は、下痢(21%)であった。投与中止に至った有害事象は19 例(17%)に認められ、主なものは下痢(4%)および悪心(4%)であった。11月のデータカットオフ時からの安全性プロファイルは、5月のデータカットオフ時のものと一致していた。
 Christopher Arendt武田薬品Oncology Therapeutic Area Unit Headは、「EGFRエクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がんは、複雑かつ重篤な疾患でありながらも承認された標的治療がなく、既存の治療法では効果が限定され、患者の生存率が好ましくないため、本疾患への研究を前進させていくことが何よりも重要である」と強調。
 さらに、「今回、本疾患を選択的に標的とするように設計された初の経口治療薬であるmobocertinibでこのような良好な結果が得られたのは非常に喜ばしく、FDAやその他の規制当局に対してプラチナ製剤による治療歴を有する患者の解析データの提出を心待ちにしている」とコメントしている。
 現時点でmobocertinibは、EGFRエクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がんに対して承認されていない。

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