PCRが新型コロナの診断ツールとなっている問題点 杉並区 柿田医院院長 柿田豊 

 PCRが病原微生物の検出法として優れたものであると言うことに異論はありませんが、世界的に新型コロナウイルスの診断ツールとしてファーストチョイスになっていることには疑問を感じます。この疑問は専門の先生にいくらPCRの正しさ・素晴らしさを説かれても消えるものではありません。
 私の理解では、これまでPCRの活躍の場は、肝炎やHIVなどの主に血液・体液を介して伝播するウイルス感染症の診療現場で、血中抗体スクリーニングでピックアップされた陽性者に対しての確定診断や、病勢・治療効果の判定に必要とされる真打ち・ラスボス的な検査であったはずです。
 かつて、これほどまでに呼吸器系感染症の病初期や無症状者の掘り起こしのために、前座やザコキャラの如く多数のPCRが行われた前例はなく、スクリーニングとしての評価法も確立していないはずで、陽性者数の動向に一喜一憂し、新型コロナは過去の風邪系ウィルスより無症状者が多い怖い病気であると結論付ける根拠にはなりません。
 呼吸器系のウイルスが気道粘膜レベルで排除されてしまうと血中抗体産生が起こらないそうで、スクリーニングとして血中抗体検査が使えなかったのがコロナのPCR騒動の原因だと思います。
 せめてインフルエンザと同じように有症状者に限定した迅速抗原定性検査が主流であったら、こんな混乱はなかったのではないでしょうか?
 PCRによる無症状者の掘り起こしは自ら藪をつついて蛇を出しているようなもので、しかも出てくるのはほとんど悪さをしない無害な子蛇なのに、人間が勝手に大騒ぎしているという状況に思えてなりません。

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