巡ってきた63回目の誕生日に~新型コロナと向き合う2年間を顧みて~ 新宿区 さこむら内科院長 迫村泰成

 昨年2月から始まった新型コロナウィルスと関わって以来、早2年を迎えようとしています。
 新宿区は23区内でも早くから感染者が発生した地域であり、4月には医師会、病院、行政が協働して、新宿区PCRスポットを国際医療研究センター駐車場に設置、検査・医療提供体制が敷かれました。これは新宿モデルとして報道されました。
 同じころ、欧米での介護施設で多くの高齢者がコロナ感染の犠牲になっていました。5月に私の診療している在宅高齢者2名も陽性となり入院しました。新宿区医師会では危機感を持ち、「在宅高齢者を新型コロナ感染から守る」という課題を設定し、私が所属する在宅ケア介護保険委員会で討議してまいりました。
 昨年9月から毎月1回、医療介護福祉関係者と行政が同じプラットホーム(新型コロナ対策医療介護福祉ネットワーク会議)でともに話合い、情報共有を図ってきました。
 そして、今年8月第5波の極期には、新宿区ではついに最大1日500件の発生届が出され、2000人を越える全世代にわたる自宅待機者、さらに中等症以上でも入院困難となる方が続出しました。
 酸素濃縮器が不足し、医療介護崩壊が現実のものとなりました。医師となって37年、災害医療に近い現場に立ち会ったのは初めてといってよいかもしれません。オール新宿の力を結集し、困難な8月をなんとか乗り切ると、驚くほど急速にウィルスは姿を消しました。
 冬が訪れる前に多くの生き物が生き抜く準備をするように、各地で新型コロナ対策が進んでいます。第6波に備え、有限である医療介護資源を用いて、それぞれの場所に合ったやり方を作ることが大切です。「高齢者をコロナ津波から守ろう」という一点を目的として集まったネットワーク会議は、ここにきて大きな展開をみせました。
 新宿区における医療介護体制の整備に向けて、現場からの声を発信し政策に反映されたことは、地域包括ケアシステムの強化として、たいへん大きな意義があると思います。
 11月19日に吉住区長による定例記者会見が開かれ、第6波に備えた環境整備について述べられました。現場の声を聴いて下さった吉住区長を始め行政の方々に深く感謝いたします。
https://www.city.shinjuku.lg.jp/kucho/message/20211119.html

 一方で、欧米やお隣の韓国では、再び感染者の増加が叫ばれています。イギリスではオミクロン株が拡大し、2回のワクチン接種では不十分であることもわかってきました。ウィルスは入り込みやすい人間を土台(宿主)として次々と飛び石のように拡がります。
 オミクロン株の感染力の高さは、抵抗力の弱い人間を見逃さず狙い撃ちしていく可能性を示唆します。まだまだ予断は許しません。


 私は、63才となりましたが、この地域の片隅で、コロナやそれ以外のさまざまな課題と向き合う日々が続きます。幸い、心身ともにまだ動きますので、町医者としてそうした課題に取り組めるシアワセも感じております。
 最後に、9月に3回目の脳梗塞で言葉を失い要介護5となった母が、言語療法士の方の熱心なリハビリのおかげで、今週書いた言葉をお送りします。心に沁みました。

「みんなすき かぞく」

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