働くうつ病患者の53%が受診に抵抗・WMHDにちなんだ武田薬品とルンドベック・ジャパンの調査で判明

 武田薬品とルンドベック・ジャパンは18日、世界精神保健連盟(World Federation for Mental Health)が定める『世界メンタルヘルスデー(WMHD)』(10月10日)に合わせて実施した全国のうつ病患者を対象とするインターネット調査結果を発表した。同調査は、雇用形態別のうつ病患者の就労における現状と課題およびコロナ禍での影響の把握を目的としたもので、働くうつ病患者の53%が受診に抵抗を持っていることなどが判った。
 調査の対象者は、過去5年以内の就労期間中に精神科、心療内科、メンタルクリニックで初めてうつ病と診断された19歳から64歳の全国の患者464人(正社員200人、契約社員または嘱託社員 116人、派遣社員46人、アルバイト・パートタイム 102人)。
 同調査結果からは、雇用形態に関わらず、仕事の継続やキャリアへの影響についての不安を主な理由として、働くうつ病患者の53%が精神科・心療内科・メンタルクリニック受診への抵抗を感じていることが判った。
 受診に抵抗を感じた理由では、「このまま仕事を続けられないかもしれない」(59%)、「うつ病と診断されることで仕事から外されるかもしれない」(36%)、「将来のキャリアに不利になるかもしれない」(29%)といった仕事の継続やキャリアへの不安が上位に挙がった。
 うつ病患者が診断時に仕事をするうえで支障になった症状では、「集中力が保てない(保てなかった)」(44%)が最も多かった。うつ病を発症する前と同じようなパフォーマンスを発揮できないことが、仕事への継続・将来へのキャリアへの不安にも繋がっていると考えられる。
 また、うつ病を上司に伝えた理由では、正社員、契約・嘱託社員は「診断書が出たため」(55%・55%)、「会社の制度を利用するため」(42%・48%)、「仕事面で配慮を求めるため」(43%・41%)が上位の理由になっている。
 一方、派遣社員、パートタイム・アルバイトは、「診断書が出たため」(29%・28%)、「会社の制 度を利用するため」(29%・29%)、「仕事面で配慮を求めるため」(25%・34%)となっており、派遣社員では「周囲に病気であることを知らせるため」(33%)、パートタイム・アルバイトでは「退職するため」(36%)が最多であった。
 その一方で、上司に伝えてよかったと思う点は、「仕事面(業務内容や異動など)で配慮してもらえた」(45%)、「会社の制度が利用できた」(37%)に続いて、「気持ちが楽になった」(37%)が挙がっている。 同僚に伝えてよかったと思う上位の理由でも「気持ちが楽になった」(48%)、「周囲に病気であることを知ってもらえた」(42%)と、職場で上司や同僚と病状について話すことで、仕事面への配慮だけではなく患者の安心感に繋がっている傾向がみられた。
 さらに、上司に診断結果を伝えているかについては、84%の正社員は会社の制度の利用や仕事への配慮を 求めて上司に診断結果を伝えている。一方で、派遣社員、パートタイム・アルバイトといった非正規雇用の人ではその割合が低く(52%・57%)、会社の人事制度などを利用することが難しく、退職することによってさらに就労の継続が難しくなっている可能性がある。
 コロナ禍では、就労しているうつ病患者さんは、「経済的な不安のため」(59%)、「感染に対する不安のため」(50%)、「外出を自粛しなくてはならなかったため」(48%)を主な理由として58%の人が心身のストレスの増加を感じている。
 反面7%の人は「ストレスが減った」と答えている。その理由は、「外出する必要がなくなった」(66%)、「人と会う機会が減った」(66%)、「一人でいられる時間が増えた」(56%)、「通勤がない、または通勤することが少なくなった」(53%)、「対面のコミュニケーションが減った」(50%)と続き、人とのコミュニケーションの減少がストレスの減少理由の上位を占めている。
 同調査により、働くうつ病患者のニーズは、「うつ病の治療後も就労の継続」であり、雇用形態にかかわらず、仕事を継続するための企業内のサポート、包括的な社会の構築が重要であることが示唆された。
 長年にわたりうつ病の研究と治療に携わり、同調査の監修者である三村將氏(慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室教授、日本うつ病学会理事長)は、「今回の調査で明らかとなった就業しているうつ病患者の持つ不安や課題は、臨床現場で患者から把握している内容と同様の傾向にあった」と報告し、「うつ病という疾患へのサポートを検討していくうえで意義あるものだ」と強調する。
 さらに「特に、うつ病と 診断されることによる就労の継続への不安や就労に支障がでる症状があるという実態は、広く理解されているとは言い難い状況にある」と指摘。その上で、「国内の労働人口が減少傾向にある中、就労意欲のあるうつ病患者が成果を出しながら継続して働き続けられるよう、制度の構築だけではなく、患者を取り巻く上司や周囲の同僚の人々が疾患への正しい理解に基づいてサポートすることが重要である」とコメントしている。
 世界精神保健連盟(World Federation for Mental Health)は、毎年10月10 日を『世界メンタルヘルスデー(WMHD)』と定め、世界各国でテーマに沿ったメンタルヘルスに関わる啓発活動が行われている。本年のテーマは、「Mental Health for All: Greater Investment – Greater Access(すべての人のためのメンタルヘルス(精神的健康)-さらなる投資とアクセスの向上を)」を実現するために、必要な投資を行い、だれもが適切な治療へアクセスできる社会を目指すという内容になっている。武田薬品とルンドベックは、グローバルでこの活動にコミットしている。
 調査の概要と主な調査結果のまとめは次の通り。
【調査概要】
調査名:勤務形態別うつ患者定量調査
調査時期:2020年9月24日~10月1 日
調査地域:日本全国
調査方法:楽天インサイトパネル登録患者へのインターネット調査(調査委託先:インテージヘルスケア)
調査対象:過去5年以内の就労中に精神科・心療内科・メンタルクリニックで初めてうつ病と診断され、うつ病の治療として1か月以上の通院を行った19~64 歳の成人
サンプル数:合計464 (正社員200、契約社員・嘱託社員116、派遣社員46、アルバイト・パートタイム102)
【主な調査結果】
1.うつ病の症状を感じて受診する際には、「このまま仕事を続けられないかもしれない」など仕事への影響に不安を感じる人が 59%、仕事への支障としては「集中力が保てない」が最多


<受診のきっ掛け>
自ら受診する人が最も多く、次いで家族・友人のすすめ


Q. 初めてうつ病で精神科・心療内科・メンタルクリニックを受診すること になったきっかけと、そのうち最も大きかったきっかけをお答えください。
(n=464) *Base:All

<受診への抵抗感>
自ら受診する人が多いものの、雇用形態に関わらず、半数以上(53%)が受診への抵抗を感じている


Q. 精神科・心療内科・メンタルクリニックを受診する時、気持ちの上で抵抗はありましたか。全く抵抗はなかったを5、とても抵抗があったを1として、5段階でお答えください。
(n=464) *Base:All

<受診への抵抗感があった理由>
受診への抵抗の理由としては、「仕事を続けられないかもしれない」(59%)、「診断されたことで仕事から外されるかもしれない」(36 %)、「将来のキャリアに不利になるかもしれない」(29%)と、将来の仕事の継続に対する不安が上位に上がっており、キャリアへの不安については、特に正社員にその傾向が強い。

Q. 先ほど、「精神科・心療内科・メンタルクリニックを受診する時、気持ちの上で少しでも抵抗があった方」 にうかがいます。気持ちの上で抵抗があった理由として、あてはまるものをすべてお答えください。
(n=247)
*Base:受診への抵抗があった人

<仕事をする上で支障となった症状>
うつ病診断時、仕事をする上で最も支障となったこととしては「集中力が保てない」が 44%と最も多かった。また、
「イライラする」(30%)、「同僚との会話を避ける」(27%)、「ささいなミスをする」(26%)、「物事を決断できない」
(24%)が続いている

Q. あなたが過去 5 年以内で初めて精神科・心療内科・メンタルクリニ ックでうつ病と診断された時、身体的・精神的症状により、仕事をする上で最も支障になったことを3つまでお答えください。
(n=464) *Base:All

<仕事においての不安>
うつ病診断時に感じた不安としては、「このまま仕事を続けることができるか」(60%)、次いで「このまま仕事を続けることでさらに悪化するのではないか」(48%)、「仕事がこなせなくなるのではないか」(40%)の順だった。上記設問とあわせ、発症前と同じようなパフォーマンスを発揮できないことが、仕事への継続・将来のキャリアへの不安にも繋がっていると考えられる。

Q. あなたが過去 5 年以内で初めて精神科・心療内科・メンタルクリニ ックでうつ病と診断された時、仕 事においてどのような不安がありましたか。あてはまるものをすべてお答えください。
(n=464) *Base:All

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