発症する前に今知っておきたい花粉症の原因と対策  石原新菜医師が解説

i石原氏

 ユーグレナは、2021年11月に花粉症対策として実行している事柄調査を実施し、その結果を発表した。同調査は、「花粉症と診断された、または診断されていないが自身が花粉症であると思っている20代~60代の男女200人」を対象としたもの。また、免疫バランスや栄養に詳しい石原新菜医師が、花粉症の原因と対策を解説した。
 調査結果によると、花粉防備策としては、圧倒的に多いのが「マスクの使用」(78%)であった。次いで、「サングラス・眼鏡をする」(22%)、「部屋で空気清浄機・エアコンの花粉対策機能を使う」(20%)となった。
 予防のための習慣は、「手洗い・うがい」(54.5%)が最も多くなった。次いで「自宅に入る前に衣服をはたく」(22%)、「よく眠る」(18.5%)となりました。また、「顔を洗う」(15.5%)に次いで「シャワーを浴びる」(11.5%)と「鼻うがい」(11.5%)が並立となった。
 治療・薬などの使用に関しては、「花粉症の薬を服用する」(61%)、「目薬をさす」(55.5%)、「病院へ行く」(28%)、「鼻クリームを塗る」(6.2%)の順となった。
 食事での対策としては、「ヨーグルト・乳酸菌飲料などをとる」(33.5%)、「緑茶を飲む(カテキン)」(12.5%)、「キムチ・味噌などの発酵食品をとる」(11%)が上位を占めた。

2022年は2月上旬より花粉が飛散し、東海から北海道では昨年より多量

 2021年12月に日本気象協会が発表した「2022年春の花粉飛散予測 第2報」によると、花粉の飛び始めは早いところでは2月上旬から始まり、飛散量は東海から北海道では前シーズン(2021年春)に比べて多くなると予測している。年が明け、少し経てばもう花粉症が辛い季節が到来する。
 いざ、本格シーズンインしてから対策するという方、実はそれでは遅い。花粉症は、免疫バランスや自律神経バランスを整えておくことで、発症を遅らせたり、症状の軽減を可能とする。


◆石原新菜医師が解説する「花粉症の原因と対策」

 花粉症の症状をなるべく和らげるには、粘膜に付着する花粉の量をいかに減らすかが重要。アレルギー反応が起こるマスト細胞が皮膚や粘膜に多く分布しているため、花粉症の症状は目や鼻、気道、皮膚に出やすいです。アレルギー症状を防ぐには、マスクや衣服、メガネなどを活用してなるべく皮膚や粘膜に花粉を付着させないこと、付着した花粉をすぐに洗い流すこと、目薬をするようにしよう。
 近年、話題にのぼる鼻うがいや鼻に塗って花粉が粘膜につかないようにする市販のものを使うのも良い。
 からだを温めるか冷やすかは、基礎免疫力を維持するためにはからだを冷やさないようにすべきだが、あまりに痒みがあるときなどは長時間湯船につからず、シャワーで済ませるのがよい。
 乳酸菌やカテキンなどのメジャーな食品以外にも、青魚に含まれるEPAやユーグレナに含まれる食物繊維パラミロンなど、アレルギーに効果が見込める成分が多数見つかっている。
 それらの情報をアップデートして、より高度なアレルギー対策に取り組んでいってほしいと思う。免疫バランス強化には少なくとも3か月以上はかかるといわれるので、今から花粉症に備えた食生活を送っておこう。
 花粉症は、鼻腔内や目の粘膜に付着したスギなどの植物の花粉に対する免疫反応によって、鼻水が出る、涙が出るなどのアレルギー症状が引き起こされる。
 体内に入ってきた異物に対抗するための「抗体」が過剰に反応することによって、粘膜の炎症からくしゃみや鼻水、目のかゆみや充血が引き起こされ、皮膚にはかゆみや赤みなどを発症する。
 本来は、花粉やダニなどは人体に無害であることも多いが、身体がこれらに過敏に反応し、必要以上に攻撃してしまうことによって、くしゃみや鼻水、かゆみといった症状が出る。


 この「抗体」をコントロールしてくれるのが、“免疫バランス”である。病原菌やアレルゲンが体に入ると、第一関門になってくれる免疫細胞の「マクロファージ」がそれを貪食し(ここまでの仕組みを「自然免疫」という)、その異物の情報をキャッチ。抗体を作る司令塔であるリンパ球の一種である免疫細胞「ヘルパーT細胞」にその情報を伝える。
 侵入者に関する情報を受け取った「ヘルパーT細胞(Th細胞)」は、それが『菌やウィルスなどの病原体』の場合は「Th1細胞」に、『ダニ・カビ・花粉などのアレルゲン』の場合は「Th2細胞」に変化する。
 「Th1細胞」と「Th2細胞」は、いずれも、「B細胞」に「抗体を作れ」という指令を出し、抗体が作られる。「Th1細胞」は、「B細胞」に対して“菌やウィルスといった病原体向け”の抗体を作るよう指令し、「Th2細胞」は“ダニ・カビ・花粉などのアレルゲン向け”の抗体(これが花粉症の原因の「IgE抗体」)を作るよう指令する。B細胞はそれぞれに指令された抗体を作る。
 こうして作られた抗体が、侵入した異物にくっついて無力化することで、病気などに感染しないようになるのが免疫機能である。

◆花粉症を起こすのは「Th2細胞」が過剰に反応するとき

「Th2細胞」が過剰に反応してしまうと、「IgE抗体」が必要以上に放出され、これが花粉症の原因になる。余分な「IgE抗体」が「マスト細胞」という細胞に結合してしまい、マスト細胞が「ヒスタミン」や「セロトニン」など、炎症の原因物質を放出する。これがくしゃみや鼻水、かゆみなどを引き起こす。
 Th1細胞とTh2細胞は、互いに「情報伝達物質(=「サイトカイン」である。どんな抗体を作るのか指示する物質)」をバランスよく放出することによってお互いが暴走しないように抑制しあっているというのが定説だ。
 Th1細胞とTh2細胞の活動バランスが崩れる原因はまだ解明されていないが、近年の雑菌やウィルスにさらされない生活環境が影響している可能性がある。
 菌やウィルスに対抗するための「Th1細胞」がはたらく機会が減っていることから、「Th2細胞」が過剰に働きがちになるという説がある。
 この2年はコロナ禍で積極的にウィルス殺菌などをしてきたことから、もしかしたらより「Th1細胞」の出番が少なく、「Th2細胞」が過剰に活発化してしまう可能性もある。

◆加齢とともに花粉症を発症しやすくなる理由

人間の細胞の能力は、20歳をピークに年齢とともに低下するといわれる。免疫細胞の機能や免疫バランスを維持する力は年齢とともに低下していくため、大人になってから花粉症になる人が多い。
 加齢のほかにも、バランスの悪い食生活、ストレス、環境汚染、抗生物質などの常用などによって花粉症リスクが高まるおそれがある。
 では、「花粉症の症状をやわらげる食生活」や「身体自体をアレルギーに対抗できる状態に整えるための食生活のポイント」は何か。
 ①皮膚や粘膜を丈夫にする、②腸内環境を整える、③免疫バランスを整えるーが挙げられ、この3点を意識することだ。

①皮膚や粘膜を丈夫にするには…
・ たんぱく質を摂る(大豆・肉・魚・卵)
 免疫細胞自体を元気にしたり、皮膚や粘膜を丈夫にするために欠かせないのがたんぱく質。納豆、豆腐といった大豆製品を毎日の食事に取り入れたり、肉や魚、卵などをおかずにして、必ず毎食たんぱく質を取り入れる工夫をしよう。
 大豆製品には粘膜を強くするビタミンB群、腸内環境を整える食物繊維も豊富。肉類には免疫力維持におすすめの亜鉛も豊富だ。魚に含まれるEPA、DHAという不飽和脂肪酸(オメガ3)は血流を促進し、免疫バランスを整える。
 卵の卵黄には皮膚や粘膜を丈夫にしてくれるビタミンA(レチノール)、ビタミンEも多く含まれる。

②腸内環境を整えるには…
・ 乳酸菌をとる
 免疫細胞の約7割が腸に集まっているので、腸内環境を整え、免疫細胞を活性化することは重要である。ぬか漬け、キムチ、納豆、味噌、切り干し大根などから植物性乳酸菌の摂取により腸内環境が整う。
 ぬか漬けのぬか自体も洗ってしまわず、軽くふく程度で野菜と一緒に食べよう。米ぬかを乾燥した米ぬかパウダーをお味噌汁やごはん、おかずなどにかけるなどで習慣化するのもお薦めである。
 食べる点滴ともいわれる甘酒の麹菌も、腸内環境をよくすることにつながる。乳酸菌と皮膚や粘膜を丈夫にするビタミンAやビタミンB群を含むヨーグルトも良い。

・食物繊維をとる
 食物繊維が豊富な食品としては、麦や雑穀などの穀類、さつまいもやこんにゃくなどのいも類、豆やおからなどの豆類、ごぼうなどの野菜類、アボカド、きんかん、ドライフルーツなどの果物類、きのこ類、わかめひじきなどの藻類がある。
 きのこ類はとくにおすすめで、食物繊維の中でもきのこ類に含まれる「β-グルカン」には免疫細胞を活性化する作用があるといわれている。他にも、皮膚や粘膜を保護する効果、精神を落ち着かせてくれる効果のあるビタミンB1やB6、ナイアシンも含まれている。自分の好きなきのこでいいので、積極的に摂るようにしよう。

③免疫バランスを整えるには…

・Th1細胞とTh2細胞のバランスを調える「パラミロン」
 パウダー状のものやドリンク状の製品で売っている、「藻類(も)」の一種ユーグレナだけが持っている「パラミロン」という食物繊維に、Th1細胞とTh2細胞の働きのバランスを整える作用があることがわかっている。
 「パラミロン」には“トゲ”のように突起した箇所があり、これが病原体が持つ“トゲ”の部分(糖鎖)に似た形状をしている。そのため、「パラミロン」を身体に取り込むことで異物として認識され、普段は活性化していない「Th1細胞」が活性化し、Th1細胞とTh2細胞の活性のバランスが整うというメカニズムだ。
 また、「パラミロン」には、自律神経を整え、睡眠の質を向上させたり、疲労を回復させる効果があるともいわれるので、集中力が下がりストレスのたまる花粉症シーズンにはその側面でもおすすめ。

・マクロファージを活性化するといわれる「LPS(リポポリサッカライド)」

 水の中や土の中にいる細菌由来成分のLPS(リポポリサッカライド)は、体内に入ったアレルゲンを食べてくれるマクロファージを活性化するといわれており、めかぶ、わかめ、れんこんなどに多く含まれている。
 また、漢方の「葛根湯」の原料である「葛根(クズの根)」 にも多く含まれている成分で、アレルギー予防にはくず湯を飲んだり、お味噌汁にくず湯を混ぜて習慣化するのもおすすめだ。

・身体を温める食材を選ぶようにする
 体温が下がると免疫機能も低下するといわれています。免疫細胞が最も活発に働くのは体温が36.5度のときだといわれるので、36.5度以上をキープすることを目指そう。
 身体を温める食材は「陽性食品」といわれ、北方産、濃い色、堅い、土の中のもの、精製していないものといった特徴を持つものが多く、次のものが該当する。
 チーズ/玄米・黒パン・そば/根菜(玉ねぎ・にんじんなど)/赤身の肉、魚介類
 りんご・さくらんぼ・ぶどう/納豆・あずき・黒豆
 紅茶・ココア・ウーロン茶/塩・みそ・醤油/黒ごま・黒砂糖・和菓子

・チョコレートなどのポリフェノール

 ポリフェノールは、もともと、植物が有害なものから自身を守るために作り出す成分「ファイトケミカル」の一種。赤ワインのポリフェノールやチョコレートに含まれるカカオポリフェノールには免疫バランスを整える効果があるのは有名。コーヒーに含まれるポリフェノールの一種「クロロゲン酸」も抗酸化作用が高く、免疫バランスを整えるのに役立つといわれる。

◆花粉症をやわらげる入浴テクニック

 夜、入浴せずにそのまま就寝してしまうと、身体に付着した花粉(アレルゲン)を眠っている間にも触れていることになり症状が悪化してしまうおそれもあるので、必ずシャワーだけでもお風呂には入ろう。
 シャワーやお風呂のお湯を42℃を超える高温にしてしまうと、アレルギー症状を悪化させるヒスタミンが分泌されやすくなってしまうので注意しよう。
 また、お風呂で湯気を吸い込むことで、鼻の内側に湿り気が出て、粘膜に付着している花粉を排出しやすくなったり、一時的に鼻腔の充血を改善して鼻づまりを改善してくれる効果もある。

タイトルとURLをコピーしました