薬剤師の地位向上と職能拡大を目指して 尾島博司大阪府薬剤師連盟会長に聞く

尾島氏

 薬剤師の誰もが、地位向上や職能拡大に、「薬機法改正」、「調剤報酬改定」、「病院薬剤師の配置・報酬」の影響が大きいと実感している。だが、これらの結果を大きく左右する“政治力の重要性”については忘れられがちだ。こうした中、大阪では、本年6月より、これまでの社団法人大阪府薬剤師会と大阪府薬剤師連盟の会長兼任を取りやめ、それぞれの会長に乾英夫氏、尾島博司氏が就任した。そこで、大阪初の試みとして会長を分離した狙いと、“薬剤師の政治力”が地位向上と職能拡大に及ぼす影響の強さ、今後の抱負を尾島博司大阪府薬剤師連盟会長に聞いた。
 尾島氏は、大阪府薬と大阪府薬連盟の会長を兼務していた中西光景氏、藤垣哲彦氏の下、13年間、大阪府薬連盟の幹事長として活躍してきた。その経験から「薬剤師の政治活動の重要性さは痛いほど実感している」と話す。
 さらに、「分業率の上昇や薬機法の改正などに伴い、大阪府薬としての事業が超過密になってきた昨今、社団法人の会長を中心に執行部が責任を持って事業を推進する必要がある」と指摘する。その上で、「大阪府薬の事業推進には、社団法人とは別に政治活動してサポートする人が不可欠であると常々考えていた。その時ちょうど、藤垣前会長から大阪府薬連盟会長の推薦を頂き、5月23日に開かれた大阪府薬連盟評議員会の承認を得て現ポストに就任した」とこれまでの経緯を説明する。
 尾島氏は、13年間大阪府薬連盟幹事長を務める傍ら、最後の6年間は日本薬剤師連盟副会長としても手腕を発揮。東京に居る時は、衆参両議員会館に足蹴く通い、自民、公明、厚生労働委員会などの国会議員とのパイプを構築してきた。
 それに加えて、大阪でも、堺市を含めた各地域の府会議員、市会議員との連携にも勤しんだ。「薬剤師の地位向上・職能を拡大のための要望は、大阪府薬は行政に、連盟は議員に行うという形を明確にして、同じ目標に向かって前進していきたい。乾会長とも連携を密にしながらやっていく」考えを強調する。
 その具体例として、「大阪府薬が毎年8月に大阪府・大阪市に対して行っている予算要望」を挙げ、「大阪府薬が行政に要望し、府・市会議員にその要望を説明してアシストするのが連盟の役割である」との認識を示す。これまで、「行政への予算要望にのみ重きを置いていた」傾向があったが、今後は「大阪府薬連盟が議員の力を借りて達成できる形を構築する」
 尾島氏は、国の“新型コロナ医療従事者への慰労金支給”についても、「薬局がはずされた。それに対し、慰労金を大阪府、大阪市、堺市などの地方交付税で賄う活動を8月から展開している」と話す。同要望は、自民・公明だけでなく、大阪府・大阪市の与党である維新の議員にも要望している。尾島氏の地元の堺市では、議員を通じて薬剤師へのマスクの支給を要望し、「4月28日にいち早く配布された」実績を持つ。
 だが、その一方で、薬剤師職能が議員に理解されていなかった一例として、「学校薬剤師活動」を紹介する。「堺のある議員に学校薬剤師活動のアシストをお願いしたところ、『校医は知っていますが、学校薬剤師って何ですか』と逆に質問され、こちらの要望が相手に理解してもらえなかった」と明かす。
 その要因を「今まで、ロビー活動を展開してこなかったため」と分析し、「社団法人としての事業が増大する中、大阪府薬の会長がロビー活動をするのは困難な状況下にある。連盟会長が機会あるごとに議員にお会いし、薬剤職能を説明する場を作ってロビー活動を充実させていきたい」と力を籠める。
 薬剤師の地位向上と職能拡大を実現するために敷かれていたこれまでの1本のレールを、行政、議員を対象とする2本のレールにして、「より確実に同じ目的地を目指す」ことが、今回の大阪府薬と大阪府薬連盟の会長を分けた大きな狙いだ。
 議員へのロビー活動をより有効に展開するには、大阪府下のそれぞれの地域での大阪府薬連盟の組織強化が不可欠となるのは言うまでもない。現在、大阪府薬連盟では、府下11ブロックで連盟活動に熱心な会員に声がけして組織運営委員会を立ち上げ、組織強化のための施策を議論している。
 その重要議題の一つが、大阪府薬連盟評議員会の開催日の設定だ。通常、連盟評議員会は、大阪府薬の地域職域薬剤師会会長会(以前の支部長会)後に開かれていたが、「地域職域薬剤師会会長会終了後に帰宅する人も少なくなく、地域会長会のついでに連盟評議員会に出席するという感が否めず、連盟活動に対する意識は気薄であった」
 尾島氏は、「連盟活動の重要さを理解してもらうには、地域会長会とは別の日に連盟評議員会の日にちを設定する必要がある」と訴えかける。
 また、日薬連盟副会長時の6年間を通じて、「日薬連盟は、薬剤師の参議院議員を創出するのが目的ではない。それは一つの手段であって、本当の目的は薬剤師議員や政治力を活用して薬剤師の地位向上・職能拡大を図っていくことにある」と訴求し続けてきた。
 その理由を、「薬剤師参議院議員の創出」と、「衆参両議員会館でのロビー活動」が日薬連盟の2本柱であるところを、「前者のみが日薬連盟の役割といった間違った理解をしている人達が多かったから」と明かす。
 従って、大阪府薬連盟会長として、「会員各位に2本柱の重要性を理解してもらうことを目指すとともに、色々な場面で薬剤師職能に理解ある国会議員や府・市議会議員の応援をしていく」方針を強調。「ロビー活動の充実なくして、薬剤師の地位向上・職能拡大はあり得ない」と言い切る。
 ロビー活動の一環として、7月10日、大阪府薬との連名で自民党大阪府連所属の国会議員に対し、「新型コロナウイルス感染症が薬局に及ぼす影響に関する要望」を実施した。
 当日は、大阪府薬会館を訪ねた左藤章衆議院議員、渡嘉敷奈緒美衆議院議員、大西宏幸衆議院議員、松川るい参議院議員らに、「新型コロナウイルス感染拡大に伴う薬局経営に対する財政支援」、「コロナ禍における医薬品供給の安定的な確保と薬価改定の延期」、「かかりつけ薬剤師・薬局機能の充実・強化」に関する要望書が手渡された。
 気になる尾島氏の副会長退任後の日薬連盟については、「大阪府薬連盟の会長を受けたので、機会は少なくなるものの日薬連盟総務会で意見を言える。日薬連盟の総務を務めている大阪府薬連盟の山岡信也幹事長を通じても発言できる。東京に行けば、これまで通りに衆参両議員会館でロビー活動を展開したい」と話す。


 2年後に控える参議院選挙にも言及し、「現職の藤井もとゆき氏の後任として、組織内統一候補の神谷まさゆき氏が立候補するが、本年8月の段階でもコロナ禍で全国を回れていない。本田あきこ参議院の時は、2年前の3月から地方行脚していた」と懸念する。
 神谷氏は、平成15年3月、福山大学薬学部卒業後、大手医薬品メーカーのMRとして大阪での勤務経験もあり、道修町にも造詣が深い。その後、家業のドラッグストアー・カミヤを継いで現在に至る。41歳。キャッチフレーズは、「かがやく、みらいの、やくぎょうかい」で、「かみや」の頭文字で構成している。
 尾島氏は、「真面目かつ前向きな性格で、話も分かりやすく説得力もある」と人柄を分析し、「どのようにすれば、薬剤師がより良い医療が提供でき、国民がより良い医療を受けられるかについて、真剣に取り組むことのできる好青年である。是非、国会に送り出したい」と力を意気込む。コロナ禍が終息して、神谷候補が全国行脚で大阪に来れば、「大阪府薬連盟総動員で、関係各位を回る」
 また、本年5月に予定されていたがコロナ禍で中止になった「大阪府薬未来を担う薬剤師フォーラム」についても、「このフォーラムは、若い薬剤師に、国会で薬剤師の主張を伝えて必要な政策を実現していくための“政治力の重要性”を知ってもらうことを目的としている」と説明。さらに、「神谷候補を紹介する絶好の機会にもなるので、コロナが終息すれば、是非、開催したい」と強調する。
 最後に尾島氏は、「大阪府薬の会員の全てに連盟会員になって頂いて、我々は薬剤師の地位向上・職能拡大・環境改善を目指したい。それに向かって連盟活動を展開していく」と抱負を述べた。

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