欧州委員会がSHP647の売却義務を解除     武田薬品

 武田薬品は29日、欧州委員会(EC)が現地時間の28日にシャイアー社買収に関する競争法上のクリアランス取得の条件であった炎症性腸疾患領域パイプラインのSHP647および関連する権利の売却に関する同社の義務の解除を決定したと発表した。
 今回の決定を受けて武田薬品は、現在実施中の SHP647臨床試験プログラムを中止するが、試験参加者の中で適格であると判断された人すべてに対し、臨床試験後アクセス(PTA)試験への参加を通じて SHP647による治療継続の機会を提供する。
 さらに、試験参加者の同意と法制上ならびに倫理上の条件の充足を前提として、Crohn’s & Colitis Foundation を通じ、SHP647の臨床試験データおよび生体サンプルを科学界が利用できるように提供する。
 武田薬品は、欧州時間2018年11月20日、シャイアー社買収の申出についてECから承認を得たことを公表した。ECによる承認は、クリアランス取得に際し同社がECに提出した誓約事項の遵守を条件とするものであった。
 具体的には、武田薬品が販売するEntyvioとシャイアー社のパイプラインSHP647 が、将来的に炎症性腸疾患領域において重複を来たす可能性に鑑み、同社はSHP647を売却することを誓約していた。だが、SHP647の売却は、同件買収完了の条件ではなく、買収は昨年1月8日に完了している。
 シャイアー社買収完了後、SHP647臨床試験プログラムは状況の変化による影響を大きく受け、EC は、SHP647について想定されていた競合上の懸念は発生しないと結論づけた。そのため、ECは、同社が負うSHP 647 売却の義務は妥当性を欠くとして、当該義務の解除を決定した。
 武田薬品は、SHP647の売却先選定のために、14 ヵ月間にわたり2つの正式かつ厳正な手続きに従事した。最初の売却プロセスは同社が主導し、次に同社のECへの誓約に対する標準的な手続きとして任命された第三者機関である Divestiture Trusteeが主導した。
 同社およびDivestiture Trustee は、それぞれ60以上の売却候補先を検討したが、いずれも決定には至りらなかった。
 武田薬品は、今後、潰瘍性大腸炎やクローン病をはじめとする炎症性腸疾患の適応症について、SHP647 の開発を実施することはない。SHP647臨床試験プログラムは、今後数ヵ月かけて所定の手続きに従って終了する。臨床試験への新規患者登録は、新型コロナウイルスパンデミックのリスクに鑑み本年 3月下旬に中止しており、今後臨床試験は盲検解除され、再開はしない。
 SHP647の臨床試験に参加し、治療が奏効している全ての適格な患者には、PTA 試験においてSHP647 の投与を継続的に受けることができる機会が提供される。
 同PTA試験の指標は、SHP647臨床試験プログラム運営委員会および関連規制当局との協力のもと決定され、その後、各国・地域の規制および倫理規定に従い当該指標が用いられる。試験に参加中の患者には、同社試験チームのメンバーからのガイダンスが発出され、試験実施機関から連絡を受けるまで、現在参加している試験のプロトコルに従うように要望している。 同PTA試験に登録された患者は、個別の治療ニーズを満たすために治療を継続することが可能である。
 また、武田薬品は、各国・地域の規制や倫理規定に従い、Crohn’s & Colitis Foundation を通じて、初めての研究情報交換プラットフォームで、様々な研究のデータおよび生体サンプルを集約するバイオバンクのIBD Plexusプラットフォームを用いてSHP647の臨床試験データおよび生体サンプルを科学界に提供する。
 Crohn’s & Colitis Foundation は、匿名化された SHP 647 の臨床試験データや生体サンプルへのアクセスを求める研究者および医師からの要請を審査し、データ共有に関する最終判断を行う独立機関としての役割を果たす。
 武田薬品は、患者のプライバシーを守るとともに研究の公正性を保ちながら、患者の利益となり科学的発見を促進する臨床試験データおよび生体サンプルを共有していく。
 SHP647に関連する資産および負債は、同社の連結財政状態計算書において、これまで売却目的で保有する資産・負債として分類していたが、今回のECの決定により、売却目的保有への分類が中止される。同社は、これまで見積もっていた当該負債を取り崩すと共に、臨床試験プログラムの中止コストなど将来発生が見込まれるSHP647の関連費用を見積計上するが、この結果、2020年度第1四半期の営業利益に対してはネットで増益影響となる見込み。具体的な影響額については、精査が完了次第、公表される。

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