首都圏では、7月中旬からすでに第5波といえる新型コロナ感染爆発が起こっている。今までと異なるのは、入院する主体の年代がワクチン未接種の40代、50代へと変化していることだ。
昨年の12月からイスラエルを始め欧米ですでにコロナワクチン接種が始まった。日本で高齢者への接種が始まったのがようやく4月末、供給量は充分とはいえず、東京五輪が始まる7月末までに高齢者だけ間に合ったというのが現状である。頼みのワクチンは、仕事に余裕ができ、子どもたちが夏休みとなる7、8月、絶好の時期に入荷の見通しが立たない。
60代以下の世代は(乳児小児も含め)新型コロナウィルスへの免疫を持たないため、条件が整えば必ず感染が成立することになる。秋からの新学期が心配である。
そこで、よく言われるのは、若年者は罹患しても単なる風邪であるという論調である。何もせず普通に暮らし、かかればそのとき辛抱すれば良いと考えるかもしれない。
末端開業医として第5波の診療にあたっていると、家族内感染が増えてきたなと思わざるを得ない。実際、10歳未満の感染者が明らかに増加傾向にある。小中学生だけでなく、今までなかった3才児のコロナPCR陽性例などに出会う。彼らは学校や保育園で感染したわけではなく、家庭で親から伝播したと思われる。不幸中の幸いであるが、新型コロナウィルスはこの世代には牙をむくことは少ない(一部に川崎病様の症候を呈する事例もある)。
感染した家族は、どうなるのだろう?若年世代で重症化しないから安心?
新型コロナに感染すると、普通のインフルエンザに罹患したとき以上に、発熱や倦怠感が生じる人は多い。また、若年世代でも酸素吸入が必要な中等症に進行することもある。しかも病床は埋まっているため、連絡してもすぐに病院には入れず自宅待機となるケースが続出している。何とか在宅療養者への医療支援ができるよう、私たちも対応を急いでいる。
さらに、医学的な問題以外の訴えも外来で良く聞く。陽性となれば10日間、濃厚接触者でも14日間の自宅待機を余儀なくされる。子供は罹患しても元気で騒ぎ、発熱でしんどいはずのお母さんがそれを何とか、やっとの思いで世話している。父親は対面の自営業で罹患すれば商売が継続できず、自宅には戻らないで2週間、お店で寝泊りしている。
当然、祖父母の支援は受けられない。そしてそこには何の公的支援も差し伸べられない。こうした問題は感染すると必ず降りかかってくる。感染者がこの調子で多くなれば、社会が止まってしまうのではと心配になる。
3世代が同居している場合も複雑である。若年世代が持ち込むと、それが50代くらいの祖父母世代に家庭内感染を及ぼし、重症化するリスクがある。家族全員で「おじいちゃん、おばあちゃんを守る」気持ちが必要である。
また、最近、デルタ株となり妊婦への感染性や重症化が増加しているという報告もある。妊娠している方はたいへん不安であろう。若年世代でも、もう自分のすぐ近くにウィルスが迫っているという危機意識を持ち、充分な注意が必要である。自身の感染を防ぎ、家族内のお互いの感染を防ぐ手段としては、やはりワクチン接種以上のものはない。
ワクチン接種に伴う副反応や将来的な影響への不安はあるかもしれない。悩んだら、町医者が相談に乗ります。そのリスクを踏まえたうえで、自分自身や家族、引いては社会に対して自分がワクチンを受けることにどのような意味があるのか、良く考えて行動する夏にしていただきたい。