アストラゼネカは8日、ニルセビマブについて、P2/3試験(MEDLEY試験)においてRSウイルス感染の高リスク乳児で良好な安全性および忍容性プロファイルを示したと発表した。
P2/3相MEDLEY 試験では、呼吸器合胞体ウイルス(RS ウイルス)の流行シーズンを初めて迎えたRS ウイルス感染における高リスクの乳児を対象に、シナジス(パリビズマブ)に対する、ニルセビマブの安全性と忍容性を評価した。
同試験では、慢性肺疾患 (CLD)に罹患した乳児、先天性心疾患(CHD)に罹患した乳児、早産児のいずれか1つ以上に該当する乳児に対してニルセビマブの安全性を評価した。
試験治療下で発現した有害事象(TEAEs)もしくは試験治療下で発現した重篤な有害事象(TESAEs)の発現率は両治療群間で同様であった。
ニルセビマブは、アストラゼネカとサノフィにより開発中のアストラゼネカ独自の半減期延長(YTE)技術を用いた長時間作用型抗体。乳幼児に直接免疫を与え、単回投与で流行シーズン全体を通して、RS ウイルスに対する感染予防効果を発揮させる可能性を有している。
MEDLEY 試験の結果の全容は、今後の医学学会の学術集会で発表される。同試験はさらなる安全性データを収集すべく現在も実施中である。
また、ニルセビマブは、RSウイルスの流行シーズンを初めて迎えた健康な後期早産児および正期産児において、プラセボと比較し、RSウイルスに起因する診療を要した下気道感染症 (LRTI)の発症頻度の統計学的有意な低下を達成したP3相MELODY 試験においても評価中である。
MEDLEY 試験ならびに MELODY 試験と第2b相試験は、薬事承認申請の基本的な根拠データとなる。ニルセビマブは、世界的に主要な3つの規制当局により画期的治療薬の指定を受けている。
中国の国家食品医薬品監督管理局医薬品審査評価センターによる画期的治療薬指定、米国食品医薬品局による画期的治療薬指定、ならびに欧州医薬品庁の PRIority MEdicines (PRIME)スキームへのアクセスの付与を含む。なお、現在、ニルセビマブが承認されている国はない。
◆米国ニューヨーク州シラキュースのニューヨーク州立大学アップステートメディカルセンター小児科教授・微生物学・免疫学教授で、MEDLEY 試験主任治験担当医師のJoseph Domachowske氏のコメント
ニルセビマブに関するこれらのデータは重要なデータで、早産児および疾患を有する乳児のRSウイルスに起因する下気道感染症に対し、既存の感染予防の唯一の選択肢に匹敵する安全性および忍容性プロファイルを示すものである。
通常、RSウイルスの流行シーズンは、米国では5 カ月近く継続するため、単回投与によりシーズン全体を通じてすべての乳幼児を防御する感染予防の選択肢を提供するという潜在的な利点が示唆されている。
◆アストラゼネカバイオ医薬品研究開発部門エグゼクティブバイスプレジデントのMene Pangalos氏のコメント
RSウイルスは、乳幼児における入院の最大の要因である。これらの結果は、P3相MELODY試験およびP2I 相試験で発表された良好な安全性の結果と共に、単回投与ですべての乳幼児おいてRSウイルスへの感染を予防するニルセビマブの可能性を実証する一連の根拠に寄与するものである。この結果を規制当局と共有することを楽しみにしている。
◆サノフィパスツールグローバル研究開発部門責任者のJean-François Toussaint氏のコメント
RSウイルス感染症は、すべての乳児に使用可能な予防法がいまだに存在しない感染症のなかでも、特に多い疾患である。
我々は、ニルセビマブが、早期産児、正期産児、健常児、および健康に問題のある乳児も含めた、すべての乳児に対する定期的な予防接種のスケジュールに、重要な要素として新たに加わる可能性があると信じている。