塩野義製薬は26日、BioAge社(米国)と、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)の重症化抑制を対象としたプロスタグランジンD2 DP1受容体拮抗薬(S-555739)導出に関する契約を締結したと発表した。
同化合物は、塩野義製薬が創製したDP1受容体拮抗薬で、アレルギー性鼻炎に対する適応取得を目指して開発を進めてきたもの。これまで同社が実施してきた複数の非臨床および2400例以上を対象とした臨床試験で、DP1受容体への高い親和性および選択性に加え、良好な忍容性、安全性が確認されている。
加齢による免疫機能の低下は、感染症に対する罹患率ならびに死亡率を高める大きなリスク因子となる。そのため免疫機能を亢進させることで、COVID-19を含む種々の感染症の重症化抑制に繋がる可能性が示唆されている。
今回、BioAge社が実施した独自のAIオミクス解析から、加齢に伴う免疫機能低下を改善する創薬ターゲットとしてDP1受容体が同定されている。また、アイオワ大学で実施されたSARSコロナウイルス(SARS-CoV)を感染させた加齢マウスモデルに、既存のDP1受容体拮抗薬を投与した試験では、マウスの死亡率の改善とともに、肺内のウイルス量の有意な低下が報告されている。
これらを踏まえて、同化合物のドラッグリポジショニングによる高齢者の免疫亢進薬としての開発期待から、同契約締結に至った。
今回の契約締結により、BioAge社は同化合物のCOVID-19の重症化抑制に関する米国、欧州での独占的開発・販売権を獲得する。さらに、他の疾患への適応追加に対する独占的交渉権が付与される。塩野義製薬は、同契約締結に伴う一時金、今後の開発進展に応じたマイルストン、ならびに製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーをBioAge社から受領する。
BioAge社は、2021年上期に、COVID-19患者を対象としたP2相臨床試験の開始を計画している。