東京医科歯科大学、金沢工業大学、リコーは24日、ハードウェア・ソフトウェア・評価手法の開発により、脊髄磁界計測システム「脊磁計」を用いた頚部、腰部および、手掌部・腕神経叢部など末梢神経の非侵襲神経磁界計測に成功したと発表した。
脊髄をはじめとする神経疾患では、MRIによる画像診断に加えて、電気生理学的機能診断を必要とする症例が多い。だが、脊髄をはじめ骨や軟部組織に囲まれた神経の電気活動を体表から測定することが難しく、障害部位の特定が困難であった。
こうした中、東京医科歯科大学、金沢工業大学、リコーは、共同で脊髄の神経活動によって生じるわずかな磁界を計測し、非侵襲で脊髄の神経活動を可視化するシステム「脊磁計」を開発し、実用化に向けて取り組んできた。
脊髄の活動により生じる磁界の強さは地磁気の10億分の1と非常に小さい。加えて神経活動の伝播は最大秒速80m程度と非常に速いため、神経活動の測定には高性能な磁気シールドと高帯域で高感度な磁気センサー、高度な信号処理技術が必要となる。
金沢工業大学は、非常に高感度かつ高時間分解能のSQUID(超伝導量子干渉素子)センサーを開発し、微弱な信号を数十マイクロ秒単位で計測可能とした。
リコーは、センシングされた信号を処理し、脊髄の活動の情報と形態画像とを重ね合わせて表示するシステムを構築。東京医科歯科大学は、この「脊磁計」を用いた脊髄神経機能診断法の確立に向けた研究を推進した。
これらの共同研究の結果、頚部に加えてこれまで計測が困難とされてきた腰部についての神経磁界計測に成功に至った。
「脊磁計」を使った腰部神経磁界計測に関する研究は、国際臨床神経生理学会連合(IFCN)の機関誌「クリニカル・ニューロフィジオロジー」に掲載され、表紙にも選ばれた。
今回の研究成果によって、脊磁計の臨床における応用先の広がりや実用化が期待される。